もしも、みなさんの中で本作品『りとるさんた / 永遠のきずな』をご覧になって、ひとつぶの涙を流したり一度の感動も受けなかったという方がいましたら、ぜひ私の方へご連絡ください。それだけ、本作品は一人のハルという五歳の女の子の人生を通して、「親子の愛」「家族の愛」「人間の愛」について真剣に問いかけ、その答えを導き出した作品です。それだけに、すべての読者のみなさんに本物の“愛”と“感動”を必ず届けてくれると思います。
企画 / 下家 猪誠
著作 / 猪 寿
子どもの一番の夢ってなんだろう
子どもの一番の愛ってなんだろう
子どもの一番の幸福ってなんだろう
それは・・・いつも手を伸ばすと・・・
真実の優しさや温もりがすぐ届くところにある
心のやすらぐ生活の場所があることかもしれない
「もうすぐクリスマスね。」
「うん。」
「今年はサンタさん、何をプレゼントしてくれるかねぇ。」
「ハルは、ウォルドルフ人形かテディベアのぬいぐるみがいいな~。」
「お前はとってもいい子だから、きっとサンタさんもお前の願い事を聞いてくれると思うよ。」
「ほんと!おばあさん。」
「・・・・・」
「うっ、うっ、うっう、うう・・・」
――ガッチャン・・・――
「???・・・」
キッチンテーブルでぬり絵をして遊んでいたハルが、おばあさんの呻き声と食器を落とす音に驚いて、振り向いた瞬間、再び彼女を悲しい出来事が襲いました。
さっきまで、普段と変わらない様子で台所で洗い物をしているおばあさんが、いきなり苦しそうな表情を浮かべて、床の上に倒れ込んでしまったのです。
「おばあさん!おばあさん!大丈夫?」
「ハァ、ハァ、ハァ・・・」
ハルがどんなに躰を揺すったり叩いたりして呼びかけても、おばあさんは床の上に苦しそうに這い蹲ったまま、まったく返事をしてくれませんでした。
いくら彼女が、両親を失くしてから自立心が強くなったといっても、まだわずか八歳たらずの女の子。
やがて、おばあさんの身動きひとつしないで、ずっと這い蹲ったまま苦しんでいる姿を見ているうちに、どうしていいのか途方に暮れてしまい、とうとう彼女はおばあさんの傍らでへたり込んでしまい泣き出してしまいました。
運良く、たまたまおばあさんと仲のいい近所のおばさんが、買い物に出掛ける途中に家の前を通りかかった際、ハルの異常な泣き声に気が付いてくれて、台所で蹲っている二人の姿を見つけてくれました。
そして近所のおばさんは、おばあさんをハルと一緒に抱きかかえてソファに寝かせると、大急ぎで救急車を呼んでくれました。
―ピーポー、ピーポー、ピーポー・・・―
ただ悲しいことに、おばあさんの病状はとても悪く、すぐに隣町の大きな病院に入院することになりました。
独りぼっちで家に取り残されたハルは、おばあさんが入院したその日から、「もしも、このままおばあさんが帰って来なかったら・・・」という、不安な気持ちでいっぱいになり、その重圧から何日も眠れない日が続きました。
だけど、子供の彼女にはどんなに心配しても、おばあさんが早く元気になって、家に帰って来るのを、ただ神様に祈ることしかありませんでした。
毎日、ハルは天の国のパパとママに、おばあさんの病気が早く良くなるよう祈りました。
その度に、彼女の青く澄んだまん丸い大きな瞳は、涙でいっぱいになっていました。
そんな彼女の姿を、煙突の上から見ていたチッチが、ひと言つぶやきました。
「ハルちゃん、がんばって・・・」
(四)
おばあさんが病院を退院して家に帰って来たのは、ハルが一人で留守番をするようになってから、二回目のクリスマスを迎えるひと月ほど前のことでした。
その日のハルは、あまりの嬉しさからおばあさんの傍を、かたときも離れようとしませんでした。
その思いは、おばあさんにとっても同じでした。
ハルのそんな無邪気な行動を、ひとつひとつ愛しそうに眺めている、おばあさんの目にはいつしか大粒の涙が光っていました。
ただ、そんな喜びもそう長く続くことはありませんでした。
それは、おばあさんの病気が下半身の麻痺した、一人では歩くことが出来ない重い病気だったからです。
そのせいで、家に帰って来てからのおばあさんは、ずっと車椅子を使う生活でした。
「おばあさん、無理しないでね。ハルがおばあさんの分も頑張るから大丈夫だからね・・・」
「ありがとう・・・」
ハルはおばあさんが病気になってからは、ずっと以前にも増して自から進んで、洗い物や掃除をしたり買い物に行ったりなどして、いっぱいおばあさんの代わりに手伝いをするようになりました。
また、病気のおばあさんによけいな心配を掛けたくなかったので、学校でどんなに悲しいことや辛いことがあっても、いつでもおばあさんの前では明るく振舞いました。
でも、おばあさんにはそんなハルの健気な姿を見ていて、かえって彼女の思いとは逆に自分の病気のせいで、彼女に苦労を掛けているという思いが募るようになり、とても辛くなりました。
そして、いつしかおばあさんの心の中は、自分がハルの世話をかつてのようにしてあげられないという焦りと重圧感で、いっぱいの不安に襲われるようになりました。
当然のごとく、その焦りと重圧感は日に日に増していき、やがてだんだんとおばあさんの大きな心の負担になるようになりました。
「こんな不自由な体では、もうハルの面倒をみるのは無理なのでは・・・」
ハルの将来を心配したおばあさんが、来る日も来る日も思い悩んだあげく、とうとう彼女を児童養護施設にあずけることを決心したのは、彼女が通う小学校が冬休みに入ったばかりの初雪の夜でした。
みなさん、次回のりとるさんた~世界でいちばんの贈り物~は、エミリーちゃんの願いごと(ペルシャ猫の子猫を飼いたい)を叶えてあげるための、クリスマスイブまであと1日と迫った時間の中で、チッチは“りとるさんた”が持っているどんな超能力を使って、彼女に世界でいちばんのクリスマスプレゼントを贈るとおもいますか?アッ!と驚くような予想もしないストリー展開に、みなさん自身もこれまで一度も体験したことがない超ファンタヂックの世界を、今年のクリスマスはこの作品で初めて童心に返って体感することができ、その幸せな気分を思う存分に楽しめることになると思いますので、ぜひご覧になってくださいね。
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