●ポリティカル・インサイド小説「私はコレで国葬を決めました」
党内融和の公平さを示すため、派閥の領袖はソーリ在任中にはふつう派閥を離れるのだが、キシダは自信のなさと用心深さが重なり、万が一短命内閣で終わっても、戻れる派閥をしっかり握っていたかったので、狡知会会長のまま総理総裁となった。
都内の某高級料亭。狡知会の小さな会合が開かれていた。集まっているのはソーリに非常に近いキシダ派の議員たち。腹蔵なく本音が言える間柄だ。無礼講でソーリではなく友人として今日は飲もうと宣言していた。
ヨイショ議員が徳利を持って近づいてきて、酒豪のキシダに酒を注ぎながら訊いた。
「国葬にせずトーイツ教会とジミン党の合同葬にしろと余計な声が上がっている。ミスター検討中と言われてきたキシダさんが、今回は珍しく即断即決でしたね」
「決断と実行、今回の参院選の公約フレーズだからね」少し嫌味のある問いかけだったが、キシダは余裕で返した。
「国民の声を聞く力はどこに行ったと言った声もある」酒の勢いを借りて悪酔いした相手は意地悪な笑みを浮かべながら、キシダの変節の理由を聞きたがった。
(「私 岸田文雄の特技は人の話をよく聞くということであります」岸田総理大臣の初記者会見で。9カ月しか続かなかった岸田の特技。ニュースウォッチ9 2021.10.4)
キシダは酒を飲みながら笑って答えない。ヨイショ議員はキシダから返杯された酒を飲みながらさらに突っ込んだ。
「国葬は撤回しない?」
「もちろんしない。既に記者会見で公表しているからね」キシダは余裕に溢れていた。
どこからこの自信と余裕が来るのか?ヨイショ議員はますますキシダの本音が知りたかった。
「でも根拠法もない、国会の審議も通さず全額国費にすると決めた。野党や世論の反発を心配しない?」
「しない」
うーんといって匙を投げた。なぜだ?勝算があるのか?わからん!酒をまた飲んだ。
<キシダの変節のわけ>
キシダは相手の困惑を見て腹で笑った。私の深い読みを教えてやろう。
「私はね、××ちゃん」××ちゃんはヨイショ議員のあだ名。キシダは柔和で優しい外面を装っているが、内面は鬱屈したものを宿していた。アベ、アソー、スガといった能無しの連中から長年バカにされ冷遇されてきたが、自分はお前らより上だという優越感をいつか見せつけたいという欲望が潜んでいた。国葬を自分の一存で決めたのも、この優越感を解き放してもいい頃だと判断したからだ。
「アベさんが撃たれた日の夜のニュース、翌日、参院選投開票日のニュースをよく観察したよ」
キシダの説明にヨイショ議員は耳を傾けた。
(献花の長蛇の列。TVに映りたいだけなのか、被害者が長きにわたり国にどれだけの被害を及ぼしたのか自覚していない付和雷同の国民。ニュースウォッチ9 2022.7.8、サンデーモーニング2022.7.10)
「事件当日もその翌日も投票日も事件現場の献花の列が続いていた。また世界のメディアが緊急速報で事件を大々的に報じていた。トランプ氏、プーチン氏、各国首脳、G20出席の各国要人らが哀悼の意を表していた」
「僕もみていたよ」ヨイショ議員が相槌を打った。だからなんだ?
「4月頃、アソーさんが「キシダにやらせてみたらそこそこやるじゃねーか」と言ったのを私は忘れていない」キシダの顔が険しくなった。「あの時は僕も腹が立ったよ」とヨイショ議員は本気でキシダに同情した。人を人と思わない、いつも他人を見下したアソーの物言いは党内でも反感を買っている。だけどだからなに?
(やらせたら岸田もそこそこやるじゃねーか。麻生にとって岸田は番頭扱い。FRIDAYデジタル 2022.4.21)
「2019年7月の参院選、広島選挙区。改選数2。我が狡知会のミゾテさんが野党と1議席づつを分け合って守ってきた選挙区だった」そうそうあれね、ヨイショ議員もキシダの言いたいことが分かった。
「それを官邸が勝手に2議席独占を掲げてカワイ候補も立候補させてきた」思い起こすとまた怒りが沸き起って来たのかキシダはさらに険しい表情になった。
「おかげでミゾテさんは落選。しかもカワイ陣営の選挙資金はミゾテさんの10倍の1億5千万だったことが後でわかった。勝負は初めから決まっていたね」とヨイショ議員。
「私もミゾテさんもこの仕打ちを忘れていない」キシダのメガネの奥の目がギラリと光った。
「そらそうだ」と酒をあおったヨイショ議員。でもこの話どこにいくのか?キシダさんは一体なにが言いたいのか、サッパリわからない。国葬とどう関係するのか。
(安倍・菅の独断に煮え湯を飲まされた岸田・宏池会。報道ステーション 2019.10.31)
「私はね、××ちゃん」はいはい。目と顔が普段のキシダに戻っていた。
「いつかソーリになったら、このアベ、スガが破壊した負の遺産を、党内基盤を固めながらうまく処理し一掃したいと思っていた」
「スガ、コーノ、タカイチ、ノダで争われたジミン党の総裁選挙の時に「私は今や我が国の民主主義の危機にある」と何度も主張していたよね。覚えているよ」だけど国葬を、内閣独断で決定したのは民主主義の破壊、危機だと思うけど、とヨイショ議員は思ったが、口には出さなかった。
(安倍政治が民主主義を破壊したと自覚していたハズだが・・? 報道ステーション 2021.10.11)
「でもね、××ちゃん」はいはい。なんだよ、何が言いたい?
「大勢の人がアベさんの献花の列に並んで、中には涙を流してアベさんを惜しむ姿を見て思ったよ」
「なんて?」
<国民はバカ>
「この国の国民はバカなんだと分かった」
はあ?おいおい、そんなこと言っていいのか。
「国民はモリトモもカケも、税金・警察・司法・官僚の私物化・私兵化も、公文書改ざんも、サクラを見る会も、不正統計操作も、ジャパンライフの広告塔のことも、関係ないんだ。つい数年前のことだよ。知らないはずがない。興味がないんだ。目の前の「凶弾に倒れた可哀想なTVによく出ていたアベさん」という思いだけなんだ。だから献花をしたり涙を流したり惜しんだりできるんだ」
確かに間違いではないのかもしれない。
「長期政権を目指すなら衆愚政治しかないと気づいたんだ。アベさんの残した負の遺産を糾弾したり、否定したりしたら、献花に訪れた人たちを敵に回すことになる。それならアベさんを国葬にして褒めたたえ、その遺志をつぐと言った方が彼らを取り込める。それに安倍さんの支持層の保守派も取り込める。無理に負の遺産を清算しようとすれば、党内からも古傷に触るなと牙をむいてくる連中が出てくることも明らかだと思った」
ヨイショ議員にもキシダの変節の理由がようやく理解できた。
民主主義の危機にも目をつぶり、アベさんの負の遺産の整理も止めて、長期政権を目指すということか。安定低空飛行もやめて、アベと同じ危険な高空飛行をやるつもりだ。
<参院選大勝を受けてすぐ決断>
「参院選の開票が進むにつれ与党の大勝が確実になった。すぐコンドー君(内閣法制局長官)を呼びつけてアベさんの国葬をやるから法的根拠を考えてくれと命じたんだ。すると開口一番、法的根拠はないという。私が怒って「法的解釈もできないのか!それほど君は無能なのか!」と怒鳴りつけたんだ。びっくりしたコンドー君はすぐ検討してみますと言い捨てて飛んで帰っていったよ。フフフ」痛快だった場面を思い出しているのか、気持ちよさそうな笑みを浮かべて酒をあおった。
キシダは変わったな、とヨイショ議員は確信した。猫かぶりを脱ぎ捨てた。アベが憑依したのかもしれない。
<弔問外交:人寄せパンダのトランプは欠かせない>
ヨイショ議員にはもう一つ聞きたいことがあった。
「国葬の葬儀委員長をやるのでしょう。大事なのは弔問外交ですよね。外国の招待客に対しては何か妙案を持っているの?」
「もちろんだ。むしろそちらの方がメインだよ。予算もそちらに重点を置くつもりだ」
「僕の見立てだが、プーチンは暗殺を警戒してロシヤから出ないだろう、習近平はアベさんをよく思っていない。肝心のアメリカだけど、アベさんと仲良しのトランプを呼べばバイデンはこないと思う。ヨーロッパはそこそこの首脳が来るかもしれない。大物が来ない小粒の弔問外交になるのでは?そこのところはどうするの?」
「トランプ氏さえくれば弔問外交は成功だよ。彼が来れば内外へのインパクトは大きい。イベントとして最高の盛り上がりになる。中ロやヨーロッパは正直どうでもいい。国内、海外にトランプ氏とともに私がニュースとして放送されれば成功だと計算している」
「彼は確実に来るの?」
「彼はトーイツ教会にもメッセージを寄せている。高額の謝礼金を提示すれば必ず来るよ。一応バイデンさんにも打診するけど、11月の中間選挙が迫っているのでそれどころではなく、たぶん来ないだろう」
キシダの頭の中は国葬、弔問外交をどう利用すれば長期政権に資するかどうかだけが占めていた。
憲法違反、法的根拠なしなどの批判の声など無視すればいい。
アベと同じ無法を進む最高権力者になることを決めていた。
党内融和の公平さを示すため、派閥の領袖はソーリ在任中にはふつう派閥を離れるのだが、キシダは自信のなさと用心深さが重なり、万が一短命内閣で終わっても、戻れる派閥をしっかり握っていたかったので、狡知会会長のまま総理総裁となった。
都内の某高級料亭。狡知会の小さな会合が開かれていた。集まっているのはソーリに非常に近いキシダ派の議員たち。腹蔵なく本音が言える間柄だ。無礼講でソーリではなく友人として今日は飲もうと宣言していた。
ヨイショ議員が徳利を持って近づいてきて、酒豪のキシダに酒を注ぎながら訊いた。
「国葬にせずトーイツ教会とジミン党の合同葬にしろと余計な声が上がっている。ミスター検討中と言われてきたキシダさんが、今回は珍しく即断即決でしたね」
「決断と実行、今回の参院選の公約フレーズだからね」少し嫌味のある問いかけだったが、キシダは余裕で返した。
「国民の声を聞く力はどこに行ったと言った声もある」酒の勢いを借りて悪酔いした相手は意地悪な笑みを浮かべながら、キシダの変節の理由を聞きたがった。
(「私 岸田文雄の特技は人の話をよく聞くということであります」岸田総理大臣の初記者会見で。9カ月しか続かなかった岸田の特技。ニュースウォッチ9 2021.10.4)
キシダは酒を飲みながら笑って答えない。ヨイショ議員はキシダから返杯された酒を飲みながらさらに突っ込んだ。
「国葬は撤回しない?」
「もちろんしない。既に記者会見で公表しているからね」キシダは余裕に溢れていた。
どこからこの自信と余裕が来るのか?ヨイショ議員はますますキシダの本音が知りたかった。
「でも根拠法もない、国会の審議も通さず全額国費にすると決めた。野党や世論の反発を心配しない?」
「しない」
うーんといって匙を投げた。なぜだ?勝算があるのか?わからん!酒をまた飲んだ。
<キシダの変節のわけ>
キシダは相手の困惑を見て腹で笑った。私の深い読みを教えてやろう。
「私はね、××ちゃん」××ちゃんはヨイショ議員のあだ名。キシダは柔和で優しい外面を装っているが、内面は鬱屈したものを宿していた。アベ、アソー、スガといった能無しの連中から長年バカにされ冷遇されてきたが、自分はお前らより上だという優越感をいつか見せつけたいという欲望が潜んでいた。国葬を自分の一存で決めたのも、この優越感を解き放してもいい頃だと判断したからだ。
「アベさんが撃たれた日の夜のニュース、翌日、参院選投開票日のニュースをよく観察したよ」
キシダの説明にヨイショ議員は耳を傾けた。
(献花の長蛇の列。TVに映りたいだけなのか、被害者が長きにわたり国にどれだけの被害を及ぼしたのか自覚していない付和雷同の国民。ニュースウォッチ9 2022.7.8、サンデーモーニング2022.7.10)
「事件当日もその翌日も投票日も事件現場の献花の列が続いていた。また世界のメディアが緊急速報で事件を大々的に報じていた。トランプ氏、プーチン氏、各国首脳、G20出席の各国要人らが哀悼の意を表していた」
「僕もみていたよ」ヨイショ議員が相槌を打った。だからなんだ?
「4月頃、アソーさんが「キシダにやらせてみたらそこそこやるじゃねーか」と言ったのを私は忘れていない」キシダの顔が険しくなった。「あの時は僕も腹が立ったよ」とヨイショ議員は本気でキシダに同情した。人を人と思わない、いつも他人を見下したアソーの物言いは党内でも反感を買っている。だけどだからなに?
(やらせたら岸田もそこそこやるじゃねーか。麻生にとって岸田は番頭扱い。FRIDAYデジタル 2022.4.21)
「2019年7月の参院選、広島選挙区。改選数2。我が狡知会のミゾテさんが野党と1議席づつを分け合って守ってきた選挙区だった」そうそうあれね、ヨイショ議員もキシダの言いたいことが分かった。
「それを官邸が勝手に2議席独占を掲げてカワイ候補も立候補させてきた」思い起こすとまた怒りが沸き起って来たのかキシダはさらに険しい表情になった。
「おかげでミゾテさんは落選。しかもカワイ陣営の選挙資金はミゾテさんの10倍の1億5千万だったことが後でわかった。勝負は初めから決まっていたね」とヨイショ議員。
「私もミゾテさんもこの仕打ちを忘れていない」キシダのメガネの奥の目がギラリと光った。
「そらそうだ」と酒をあおったヨイショ議員。でもこの話どこにいくのか?キシダさんは一体なにが言いたいのか、サッパリわからない。国葬とどう関係するのか。
(安倍・菅の独断に煮え湯を飲まされた岸田・宏池会。報道ステーション 2019.10.31)
「私はね、××ちゃん」はいはい。目と顔が普段のキシダに戻っていた。
「いつかソーリになったら、このアベ、スガが破壊した負の遺産を、党内基盤を固めながらうまく処理し一掃したいと思っていた」
「スガ、コーノ、タカイチ、ノダで争われたジミン党の総裁選挙の時に「私は今や我が国の民主主義の危機にある」と何度も主張していたよね。覚えているよ」だけど国葬を、内閣独断で決定したのは民主主義の破壊、危機だと思うけど、とヨイショ議員は思ったが、口には出さなかった。
(安倍政治が民主主義を破壊したと自覚していたハズだが・・? 報道ステーション 2021.10.11)
「でもね、××ちゃん」はいはい。なんだよ、何が言いたい?
「大勢の人がアベさんの献花の列に並んで、中には涙を流してアベさんを惜しむ姿を見て思ったよ」
「なんて?」
<国民はバカ>
「この国の国民はバカなんだと分かった」
はあ?おいおい、そんなこと言っていいのか。
「国民はモリトモもカケも、税金・警察・司法・官僚の私物化・私兵化も、公文書改ざんも、サクラを見る会も、不正統計操作も、ジャパンライフの広告塔のことも、関係ないんだ。つい数年前のことだよ。知らないはずがない。興味がないんだ。目の前の「凶弾に倒れた可哀想なTVによく出ていたアベさん」という思いだけなんだ。だから献花をしたり涙を流したり惜しんだりできるんだ」
確かに間違いではないのかもしれない。
「長期政権を目指すなら衆愚政治しかないと気づいたんだ。アベさんの残した負の遺産を糾弾したり、否定したりしたら、献花に訪れた人たちを敵に回すことになる。それならアベさんを国葬にして褒めたたえ、その遺志をつぐと言った方が彼らを取り込める。それに安倍さんの支持層の保守派も取り込める。無理に負の遺産を清算しようとすれば、党内からも古傷に触るなと牙をむいてくる連中が出てくることも明らかだと思った」
ヨイショ議員にもキシダの変節の理由がようやく理解できた。
民主主義の危機にも目をつぶり、アベさんの負の遺産の整理も止めて、長期政権を目指すということか。安定低空飛行もやめて、アベと同じ危険な高空飛行をやるつもりだ。
<参院選大勝を受けてすぐ決断>
「参院選の開票が進むにつれ与党の大勝が確実になった。すぐコンドー君(内閣法制局長官)を呼びつけてアベさんの国葬をやるから法的根拠を考えてくれと命じたんだ。すると開口一番、法的根拠はないという。私が怒って「法的解釈もできないのか!それほど君は無能なのか!」と怒鳴りつけたんだ。びっくりしたコンドー君はすぐ検討してみますと言い捨てて飛んで帰っていったよ。フフフ」痛快だった場面を思い出しているのか、気持ちよさそうな笑みを浮かべて酒をあおった。
キシダは変わったな、とヨイショ議員は確信した。猫かぶりを脱ぎ捨てた。アベが憑依したのかもしれない。
<弔問外交:人寄せパンダのトランプは欠かせない>
ヨイショ議員にはもう一つ聞きたいことがあった。
「国葬の葬儀委員長をやるのでしょう。大事なのは弔問外交ですよね。外国の招待客に対しては何か妙案を持っているの?」
「もちろんだ。むしろそちらの方がメインだよ。予算もそちらに重点を置くつもりだ」
「僕の見立てだが、プーチンは暗殺を警戒してロシヤから出ないだろう、習近平はアベさんをよく思っていない。肝心のアメリカだけど、アベさんと仲良しのトランプを呼べばバイデンはこないと思う。ヨーロッパはそこそこの首脳が来るかもしれない。大物が来ない小粒の弔問外交になるのでは?そこのところはどうするの?」
「トランプ氏さえくれば弔問外交は成功だよ。彼が来れば内外へのインパクトは大きい。イベントとして最高の盛り上がりになる。中ロやヨーロッパは正直どうでもいい。国内、海外にトランプ氏とともに私がニュースとして放送されれば成功だと計算している」
「彼は確実に来るの?」
「彼はトーイツ教会にもメッセージを寄せている。高額の謝礼金を提示すれば必ず来るよ。一応バイデンさんにも打診するけど、11月の中間選挙が迫っているのでそれどころではなく、たぶん来ないだろう」
キシダの頭の中は国葬、弔問外交をどう利用すれば長期政権に資するかどうかだけが占めていた。
憲法違反、法的根拠なしなどの批判の声など無視すればいい。
アベと同じ無法を進む最高権力者になることを決めていた。