向田邦子のCDをいただいた。エッセイ集「父の詫び状」の朗読版である。
家族、とくに父親を題材に、ユーモアたっぷりに描かれている。
昔風の父親は、わがままな雷親父であるが、愛すべき人物として登場する。
単身赴任先の仙台に母と行ったとき、会社の人を家に呼び振る舞いをする。
飲み過ぎた部下の一人が、朝方帰るとき玄関で粗相をした。
その吐瀉物を母親が後始末をするのを見て腹が立ち、娘が無理にも代わろうとする。
その様子を見て、父親は何も言わず後ろに立って見ていたという場面が書かれている。
3~4日後、仙台駅で別れるときにも、父親は何も言わない。
東京に帰ってくると、帰るより先に、父親から巻紙での手紙が届いていた。
用件中心の文面であったが、文末には、朱を入れて「この度は格別のお働き」とあった。
そのことを、娘のユーモラスな、皮肉な?見方で「詫び状」と言ったものである。
私も、娘に言わせれば、繰り言を言ってはひんしゅくを買う、どうしようもない親父である。
成人式の振り袖は無駄だと言いつのったため、腹を立てた娘は出席しなかった。
その頃、夏休み中の特別講義に出席する娘のために、自分の弁当と一緒に一ヶ月ほど、
毎朝弁当を作るという、バカ親を演じるという側面もあった。
さらに言えば娘の好きなアニメやドラマでは共通項がいくつかあり、話が弾むこともある。
娘がもし、エッセイを書くとすればどんなタイトルになるだろうか。