引き出しを整理していると、父の書いた小さなノート、母の「入院記録」がでてきた。
B5の子供用ノートで、あるのは知っていたが、中を覗いたことはなかった。
父は、子どもや孫の使い古しや、使わなかったものを再利用することがよくあった。
特筆すべきは、私が20歳頃に買った腕時計を死ぬ間際まで使っていたことであった。
父は国鉄職員であったので、腕時計は買ったことがない。退職時腕時計をもらったが、
間もなく壊れ、私が使わなくなった腕時計を死ぬまで使い続けた。
自分で買ったことがないというのは、支給された懐中時計を使っていたからだった。
さて、そのノートを読んでみたところ、母が倒れてから2ヶ月弱毎日書いていた。
最後の頃には、「体調悪く見舞いに行かなかった」などと頻繁に書くようになった。
間もなく父は入院し、その3ヶ月後亡くなった。
約50ページほど、父の生真面目な人柄が偲ばれる内容の記録だった。