3月20日(水・祝)に東京都奥多摩町で行われた「おくたま治助芋植付け」の報告です。
16名の参加がありました。
参加者の声
全く何も知らなかった。
それが今回治助芋の植え付けに参加しての一番の感想。
まず、芋に種がないこととか。
いや、じゃがいもに種がないわけではなく、調べてみるとじゃがいもはナス科で、受精がうまくいけば地上に花が咲き有毒の実がなりその中に種があるらしい。
だが実がなることが稀らしいのだ。
幼いころから私は野菜も含めて植物に大きな関心がなくむしろ忌み嫌っていた節もあるので、植物に関してことさら無知である。
芋自体が”イモ”という植物の実であり、その中に種ができていると思っていたのである。
食べててそんなもの見たことないけど。
とにかく、通った保育園から高校まで畑があったのだからどこかで触れていた気もするのに、”種芋”というものを植えてじゃがいもを育てるということを初めて知った。
他にも知らないことのオンパレード。
マルチや防草シートの名前、シートを押さえるペグの存在、マルチの穴は自分で開けなければいけないこと、防草シートをぶち抜いて生える雑草の寄生虫並みの食い込み具合、耕運機はエンジン使ってるのにけっこう押さないと進んでくれないこと、うねを作った後は移動がめちゃくちゃ面倒くさいこと、肥料はあとから振り撒くわけではないこと、等々。
挙げればきりがない。
何も知らなかったということがよく分かった。
すると、(今回治助芋を植えた畑が広いのか狭いのかもわからないが)あれだけの土地に必要な道具、肥料などかなりの金額がかかりそうだということがわかってくる。
そして、今回かなりの参加者の密度だったが、同じ場所を「おじいちゃん、おばあちゃんとその息子」みたいな構成でやろうと思うとかなり大変だということもわかる。
農家さんのご苦労たるや。
私たちが今回やらせてもらったことはおおまかに四つ。
・前シーズンの片づけ
・土を柔らかくしてうねを作る
・シート張り
・種芋を植え付ける
まず最初に前回使っていたマルチをはがし、畑の周囲に張られていた防草シートもはがし、織物の防草シートを突き破って生えている雑草をブチぶち引き抜く。
雑草や収穫後に残った芋のつるなどは、たい肥にするためにシートで覆われたたい肥予備軍の山に積む。
おいしくいただいた後に残ったものが次の旨し糧の役に立つなんて最高の循環。
いらないものを取り除いたら耕運機で、カッチカチに固まった土を柔らかくし、うねを作り、その上にマルチを敷いていく。
それと並行して周囲に新しい防草シートを張る。
「シートとシートの隙間を作らないように」なんて言われると、一緒に作業している人たちとコミュニケーションをとらなければならないし曲線のラインは筒状に巻かれたシートを転がすのも楽ではない。
入学式や卒業式の準備に体育館に全校生徒が集められた時の「え、自分何したらいいの。これ誰に手伝ってもらえばいいの。声のかけ方を教えて。HELP!」と思っていた内気な自分が思い出され、なあなあにやってしまいそうになる心によぎるは”防草”シートの名が虚しくなるほど雑草に侵食されていた。
さっきのアイツの姿。
雑草の強さ・怖さを見せつけられてしまったので、人見知りに勝る責任感で丁寧な仕事をしてやったぜ。
マルチを敷き終えたら、治助芋を植えるうねのマルチには30センチ間隔の穴を専用のバーナーであける。
この行程が一番衝撃的だったかもしれない。
え、この穴ってデフォルトじゃないんだ⁉ と。
穴の存在には前々から気づいていたし作物によって大きさが違うのだから少し考えればわかりそうだが、関心がないとこんなもんである。
自分で体験してみることの意義はこういうところにある。
この穴開け機は人生で初めて目にしたのでレアポケモンに出会ったような喜びがあった。
クライマックスはメインイベントの種芋の植え付け。
農園の堀さんの説明を聞いて、たい肥を用意し土を掘り種芋を植えていく。
一般的な植え方と農園流の植え方を説明してくださり、一気に芋植え上級者になった気分。
堀さんはいつも説明が過不足なくわかりやすく質問にも丁寧に答えてくれ、いろんな行程をより多くの参加者が体験できるよう配慮してくださるので尊いお方だ。
種芋を入れる穴一つ掘るくらいなんてことないとなめていると、二つ三つとかがんだままの姿勢で作業しているとなかなかこたえる。
これが全部自分の畑だったらと思うとどっと疲れる気がする。
しかし作業していくうちに手袋の口から土が入ってきたり、膝をついて作業したりしているとだんだん汚れることがどうでもよくなって、その場で座ったり膝して全部をベタ付けするのが嫌でなくなっていつもやらないそれが妙に楽しくなってくる。
土の柔らかさ、草のくすぐったさ、たまに見つける虫までもキモかわいく見えてきて、童心に帰るようだ。
疲れるけれどまだやりたい、もう少しここにいたいという気持ちがわいてくる。
日本の農家が減り食料自給率が低いというのは仕方のないことだと今回感じた。
重労働であるし環境に左右されすぎてリスキーだ。
農業を仕事にしていない人間が簡単に「それは問題だ。なんとかしてくれ。」とは言えない。
しかし今回私は、自分のアパートのベランダで何が育てられるかネット検索するほどには興味を持った。
手伝ってほしいという人がいれば喜んでやりたい。
参加者の中にはクラインガルデン利用者の方もおり、大規模にはできなくても趣味としてやりたいと思う人は潜在的に少なくないのではないかと思う。
ネットで見ても、農具付き貸農園や農業体験付き宿泊施設なんてのもたくさんある。
”農にちょっと興味がある人”の母数が、こういう簡単にできる体験によって増えていくことは少しだけ日本の農業に良いほうに働かないだろうか。(いや、働いてほしい。)
今回のような企画は、一回こっきりで作物ができるわけではないけれど畑仕事の面白さを広められる良い機会だ。
体を動かせること、時期や天候などの制約を受けながら作物のために時間と手間をとる面倒さ、少しづつ成長を見守るわくわく感、できたものを食べられる喜び。
エコだとか食育だとかそういう社会的に善っぽい理由抜きにして、畑仕事は楽しいと今回知ることができた。
畑仕事なんてと思ってる自称都会派の人ももしかしたらどこかで土まみれの喜びを求めているかもしれない。
私のように、この先どこかで家庭菜園を始める可能性が生まれたことで毎日が少しだけ楽しくなる人が増えたらいいと思う。
一日でこんなに意識や気分が変わるなんて。
とても良い機会をありがとうございました。
16名の参加がありました。
参加者の声
全く何も知らなかった。
それが今回治助芋の植え付けに参加しての一番の感想。
まず、芋に種がないこととか。
いや、じゃがいもに種がないわけではなく、調べてみるとじゃがいもはナス科で、受精がうまくいけば地上に花が咲き有毒の実がなりその中に種があるらしい。
だが実がなることが稀らしいのだ。
幼いころから私は野菜も含めて植物に大きな関心がなくむしろ忌み嫌っていた節もあるので、植物に関してことさら無知である。
芋自体が”イモ”という植物の実であり、その中に種ができていると思っていたのである。
食べててそんなもの見たことないけど。
とにかく、通った保育園から高校まで畑があったのだからどこかで触れていた気もするのに、”種芋”というものを植えてじゃがいもを育てるということを初めて知った。
他にも知らないことのオンパレード。
マルチや防草シートの名前、シートを押さえるペグの存在、マルチの穴は自分で開けなければいけないこと、防草シートをぶち抜いて生える雑草の寄生虫並みの食い込み具合、耕運機はエンジン使ってるのにけっこう押さないと進んでくれないこと、うねを作った後は移動がめちゃくちゃ面倒くさいこと、肥料はあとから振り撒くわけではないこと、等々。
挙げればきりがない。
何も知らなかったということがよく分かった。
すると、(今回治助芋を植えた畑が広いのか狭いのかもわからないが)あれだけの土地に必要な道具、肥料などかなりの金額がかかりそうだということがわかってくる。
そして、今回かなりの参加者の密度だったが、同じ場所を「おじいちゃん、おばあちゃんとその息子」みたいな構成でやろうと思うとかなり大変だということもわかる。
農家さんのご苦労たるや。
私たちが今回やらせてもらったことはおおまかに四つ。
・前シーズンの片づけ
・土を柔らかくしてうねを作る
・シート張り
・種芋を植え付ける
まず最初に前回使っていたマルチをはがし、畑の周囲に張られていた防草シートもはがし、織物の防草シートを突き破って生えている雑草をブチぶち引き抜く。
雑草や収穫後に残った芋のつるなどは、たい肥にするためにシートで覆われたたい肥予備軍の山に積む。
おいしくいただいた後に残ったものが次の旨し糧の役に立つなんて最高の循環。
いらないものを取り除いたら耕運機で、カッチカチに固まった土を柔らかくし、うねを作り、その上にマルチを敷いていく。
それと並行して周囲に新しい防草シートを張る。
「シートとシートの隙間を作らないように」なんて言われると、一緒に作業している人たちとコミュニケーションをとらなければならないし曲線のラインは筒状に巻かれたシートを転がすのも楽ではない。
入学式や卒業式の準備に体育館に全校生徒が集められた時の「え、自分何したらいいの。これ誰に手伝ってもらえばいいの。声のかけ方を教えて。HELP!」と思っていた内気な自分が思い出され、なあなあにやってしまいそうになる心によぎるは”防草”シートの名が虚しくなるほど雑草に侵食されていた。
さっきのアイツの姿。
雑草の強さ・怖さを見せつけられてしまったので、人見知りに勝る責任感で丁寧な仕事をしてやったぜ。
マルチを敷き終えたら、治助芋を植えるうねのマルチには30センチ間隔の穴を専用のバーナーであける。
この行程が一番衝撃的だったかもしれない。
え、この穴ってデフォルトじゃないんだ⁉ と。
穴の存在には前々から気づいていたし作物によって大きさが違うのだから少し考えればわかりそうだが、関心がないとこんなもんである。
自分で体験してみることの意義はこういうところにある。
この穴開け機は人生で初めて目にしたのでレアポケモンに出会ったような喜びがあった。
クライマックスはメインイベントの種芋の植え付け。
農園の堀さんの説明を聞いて、たい肥を用意し土を掘り種芋を植えていく。
一般的な植え方と農園流の植え方を説明してくださり、一気に芋植え上級者になった気分。
堀さんはいつも説明が過不足なくわかりやすく質問にも丁寧に答えてくれ、いろんな行程をより多くの参加者が体験できるよう配慮してくださるので尊いお方だ。
種芋を入れる穴一つ掘るくらいなんてことないとなめていると、二つ三つとかがんだままの姿勢で作業しているとなかなかこたえる。
これが全部自分の畑だったらと思うとどっと疲れる気がする。
しかし作業していくうちに手袋の口から土が入ってきたり、膝をついて作業したりしているとだんだん汚れることがどうでもよくなって、その場で座ったり膝して全部をベタ付けするのが嫌でなくなっていつもやらないそれが妙に楽しくなってくる。
土の柔らかさ、草のくすぐったさ、たまに見つける虫までもキモかわいく見えてきて、童心に帰るようだ。
疲れるけれどまだやりたい、もう少しここにいたいという気持ちがわいてくる。
日本の農家が減り食料自給率が低いというのは仕方のないことだと今回感じた。
重労働であるし環境に左右されすぎてリスキーだ。
農業を仕事にしていない人間が簡単に「それは問題だ。なんとかしてくれ。」とは言えない。
しかし今回私は、自分のアパートのベランダで何が育てられるかネット検索するほどには興味を持った。
手伝ってほしいという人がいれば喜んでやりたい。
参加者の中にはクラインガルデン利用者の方もおり、大規模にはできなくても趣味としてやりたいと思う人は潜在的に少なくないのではないかと思う。
ネットで見ても、農具付き貸農園や農業体験付き宿泊施設なんてのもたくさんある。
”農にちょっと興味がある人”の母数が、こういう簡単にできる体験によって増えていくことは少しだけ日本の農業に良いほうに働かないだろうか。(いや、働いてほしい。)
今回のような企画は、一回こっきりで作物ができるわけではないけれど畑仕事の面白さを広められる良い機会だ。
体を動かせること、時期や天候などの制約を受けながら作物のために時間と手間をとる面倒さ、少しづつ成長を見守るわくわく感、できたものを食べられる喜び。
エコだとか食育だとかそういう社会的に善っぽい理由抜きにして、畑仕事は楽しいと今回知ることができた。
畑仕事なんてと思ってる自称都会派の人ももしかしたらどこかで土まみれの喜びを求めているかもしれない。
私のように、この先どこかで家庭菜園を始める可能性が生まれたことで毎日が少しだけ楽しくなる人が増えたらいいと思う。
一日でこんなに意識や気分が変わるなんて。
とても良い機会をありがとうございました。