非常時に持て

　昨年始めに今の家に引越しをしたのだが
その時のどさくさに紛れて大事な物を紛失してしまった。
非常持ち出し袋だ。
そんな大事な物を紛失した事を
今になって気付いたのも大概あれだが
実は前から薄々気が付いていて
無くしたと認めたくなかったのだ。
人は大きな過ちを犯すと、記憶をちょっと無くすように出来ている。


大きな地震があった時に慌てて作ったもので
中に入っていたのは
・カロリーメイト　たくさん
（…おやつで食べてしまったかもしれない）
・水を入れるポリ袋
・サクマドロップ（食べかけ）
・携帯ラジオ
・近所の神社のお守り
・燃料用アルコール
・軍手
・ティッシュ一束
・その当時一週間だけつけた日記
・村上春樹さんからもらったメールをプリントアウトしたもの



大慌てで作ったとはいえ
一体非常時に持ち出すべき物なのか
キャンプに行く時持ち出す物なのか
失恋した時に持ち出すものなのか
ちょっと判別のつかない代物だった。
というかこうやって書き連ねてみると
大事なものが入っていた袋とは言い難い。
実際無くしてショックなのはメールのプリントアウトだけだ。
でもそんな代物でも、無くしてしまうと何ともこころもとなく
自分が何の準備もしていない事に
改めて気付いてしまう。



近いうちに新しい非常持ち出し袋を作ろうと思う。
思うが再びなくした場合の事を考えすぎて
大事な物が入っていない袋になりそうだ。
正しい非常持ち出し袋というものは
一体何が入っているんだろう。


一週間だけつけた日記は入っていないと思う。
分かってる。