レンキン

外国の写真と
それとは関係ないぼそぼそ

漫画のような彼 1

2006年02月19日 | ぼそぼそ
 高校の同級生で漫画みたいにもてる男がいた。
バレンタインデーにちなみ(遅いだろう)
思い出話をひとつ。


●年前の2月14日、高校二年生だった私は
部活の朝練のため早くに登校した。
教室の戸を開けると、小さな包みを持った
見知らぬ下級生女子が
教室の真ん中であからさまにおろおろしている。
おはようと挨拶したら彼女は
おはようございますとお辞儀し、返す手で
「あの、…Mさんの席ってどこでしょうか?」と聞いてきた。


漫画みたいにもてる男の名前がMであるが
M君の席のはっきりした位置を私は知らなかった。
えーどこかなあ、とか言いながら
机を覗いてまわったら、教室の後ろの方に
彼女が持っているようなカラフルな包みで
みっちりの机が一つあった。
多分ここだと差して教えてあげたら
彼女は机を覗き込み、一瞬ひるんだ顔をした。
しかしその後、朝練の支度をする私を尻目に
彼女はテトリスばりの技を駆使して
自分の包みを何とか彼の机に押し込んでいた。
ありがとうございましたと言って
教室を出て行く背中は
ちょっと質の違う達成感に満ちていた。


昔からたいそうもてていたMは
そういう事に関して、一挙手一投足にそつがなかった。
私はその後、Mが自分の机から
あのみちみちに詰まった
大量のチョコレートをどうやって取り出したか
全く覚えていない。覚えていないという事は
教科書でも出すように自然に取り出し、
何でもない物のように持って帰ったのであろう。
一日二日で習得できる技ではない。
私はプロの技を見た。
いや見なかったのか。


クラスメートの男子全員に
手作りの義理チョコを配るタイプの女の子からも
笑顔でチョコを受け取るM。
もてるはずだ、と言ったら彼は笑ってまあねと答えた。



とあるバレンタインの思い出です。