野の花 庭の花

野の花や山の花は心を慰めてくれます。庭園に咲き誇る花は心をはなやかにしてくれます。

春の開花を迎えたアツバキミガヨラン。名前は仰々しいが

2019年05月21日 16時27分17秒 | 
日本ではアツバキミガヨランが代表的な花であるユッカが咲き始めた。
この樹は年に春と秋の二回開花するらしい。
「君が代」という名前は日本の国歌とは関係なく、牧野大先生が「Yucca gloriosa 和名アツバキミガヨラン(厚葉君が代蘭)」という学名のgloriosaから君が代と名付けたらしい。
名前は仰々しいが、目立つ花だけに、昔からなじみの花である。
(2019-05 神奈川県川崎市 道端)




ユッカ
ユッカ(学名:Yucca)は、リュウゼツラン科イトラン属(ユッカ属)の植物の総称。英語ではyucca(ヤッカ)。ユッカという名前は、初期にカリブ諸島でユカ(Yuca)と呼ばれるキャッサバと混同したために付けられた名前である[3]。

特徴
イトラン属(ユッカ属)の種は同じリュウゼツラン科のリュウゼツランと形態が似通っている。ユッカは常緑の多年生植物で多くは低木であるが、中には樹高10メートルを超すものもある。葉は放射状(ロゼット)に生え、多くの種では、葉は硬く厚みがあり、形状は剣状で先が針のように硬く尖り、縁にノコギリ状の歯があり取り扱いには注意を要する。この葉の特徴から多くの種の通称に銃剣(bayonet)、短剣(dagger)、剣(Sword)、針(needle)等と名付けられている。多くの種は乾燥地帯のある程度標高の高い所で自生する。いずれも長い花茎を伸ばし多くの白から乳白色の花をつける。主な原産地はメキシコを含む北米である。

ユッカは虫媒花で昆虫との相利共生関係にある。ユッカの花の雌しべと雄しべは離れており、自然には受粉しない、ユッカ蛾により受粉し、ユッカ蛾は花に産卵する。ユッカの種子しか食べない幼虫の寄生宿主となっている。ユッカの実は大きく殆どを食べ残しユッカとユッカ蛾はともに子孫を残す[4]。

通称ユッカガはホソヒゲマガリガ科に属する3属(Tegeticula, Parategeticula, Prodoxus)のガである[5]。

リュウゼツランとユッカの違い
近縁の種であるリュウゼツラン属とユッカ属は原生地が主にメキシコ・米国南西部の乾燥地帯、多肉植物で葉の形、ロゼット状の形態など類似点が多い。 

主な違い(例外もある)は[6][7]、

葉はいずれも放射状に生えるがリュウゼツランの方がより肉厚で葉の先にとげ、葉の縁にのこぎり刃状のとげがあるのに対し、ユッカはより薄く、細く、葉は真っ直ぐでとげがないものが多い。またユッカは成長に伴い幹を形成し高く成長するがリュウゼツランはほとんど幹を形成しない。 
受粉はユッカはユッカガによるが、リュウゼツランはハチ、ガ、鳥、コウモリなどによる。 リュウゼツランの大半は一回結実性で10年から数十年に一度しか開花せず、結実後には枯れるが、ユッカは成熟個体はほぼ毎年開花し結実後も枯れず成長を続ける。
分布

ユッカの米国周辺での分布
イトラン属(ユッカ属)(49種、24亜種(subspecies))[8]は中米から北米にかけて広く自生しており、南はガテマラから北はカナダのアルバータ州に及んでいる。特にメキシコ北部のバハ・カリフォルニア州、ソノラ砂漠、チワワ砂漠(英語版)、米国中西部の乾燥地帯に多く分布している。

生育環境は 主に乾燥帯(arid) からステップ気候(semi-arid)の乾燥した環境であるが、亜熱帯(subtropical)から亜温帯(semi-temperate)にも分布している。地形的には砂漠、悪地地形、プレーリーなどの草原地帯、山岳地帯から海岸の砂丘地帯と幅広い。

利用
17-8世紀に原産地の北米から各地へ移植され、観賞用に多くの品種が開発された。 ユッカは耐寒性・耐暑性があり、あまり水を必要とせず、手入れも殆ど必要としないので、米国西部では庭園植物として広く栽培されている。

ジョシュア・ツリーに関しては米国のいくつかの州では保護されており、採取は規制されている。また夏季の休眠期に過度の水をやると死んでしまう為、造園家は避けている。

米国のニューメキシコ州ではユッカを州の花としている。

原産地の北米では多くの種の果実、種、花、花茎、稀に根が先住民により食用・薬用に利用されていた。また葉や茎から取れる繊維は衣料や日用品に加工されて使われていた。サポニンを含む樹液は洗剤としても使われた。



やっと名前がみつかったシロバナマンテマ

2019年05月21日 16時12分49秒 | 
これは同定にずいぶん苦労した。さまざまな図鑑にも、似た花はいろいろあるのに、たくさん群れて咲いている小さなピンクの花の形と花のつきかたが一致するのはなかなかみつからなかった。
手掛かりになったのは花の下にある袋のようなふくらみだった。
これでマンテマ属らしいことがわかって、どうにかたどりついた。
もとは栽培種だったのかもしれないが道端の植木の足元に群生して咲いていた。
よくみると、ナデシコ科らしい、とてもかわいい花なのだ。
(2019-05 神奈川県川崎市 道端)






マンテマ
マンテマ(学名: Silene gallica L. var. quinquevulnera (L.) W.D.J.Koch[3][* 1])は、ナデシコ科マンテマ属に属する草本の一種。ヨーロッパ原産の一年草で[2][* 2]、日本では江戸時代に観賞用に持ちこまれ後に逸出し野生化し、本州中部以南の河川敷、市街地、海岸などに見られる外来種となっている[2]。

特徴
全体に開出毛と腺毛が密に生え[1]、茎は下部から分枝しやや横にはって、上部は直立し高さは 50 cm くらいになる[2][* 3]。葉は楕円形で、下部のものは先端の幅が広いへら形となり全縁で柄がなく対生し[2]、長さは 2-4 cm 幅は 0.5-1 cm となる[1]。

花期は春から夏で[* 4]、茎の先端に直径 1cm の暗赤色で縁の白い 5 弁花を一方向に向けて着いた短い穂を出す[2]。

基本種はシロバナマンテマSilene gallica L. var. gallicaで[1][2][4]、花弁の色は白色[1]から淡紅色[2]。


しろばなマンテマ (白花マンテマ)

●ヨーロッパが原産です。わが国へは、江戸時代の末期に渡来しました。現在では、本州以西から四国・九州の海岸沿いや市街地をはじめ、世界各地に帰化しています。高さは20~30センチになります。茎は葉は開出毛や短い腺毛に被われます。春から夏にかけて、茎頂に穂状花序をだし、白色から淡いピンク色を咲かせます。萼筒はつぼ形で10個の稜があり、花後に膨らんで卵形になります。「マンテマ」の学名上の母種です。
●ナデシコ科マンテマ属の越年草で、学名は Silene gallica var. gallica。英名は Common catchfly。

ふくよかなイメージでなごめるフヨウの花

2019年05月21日 06時35分00秒 | 
ピンクのフヨウが咲き始めた。
少し季節的には早いとおもうのだが。
ふくよかなおばさんのイメージでなごめる。
一日しかもたない一日花であるのも、いさぎよい。
槿ムクゲと花は似ているが、葉の形で区別できる。
(2019-05 神奈川県川崎市 道端)





フヨウ
フヨウ(芙蓉、Hibiscus mutabilis)はアオイ科フヨウ属の落葉低木。種小名 mutabilisは「変化しやすい」(英語のmutable)の意。「芙蓉」はハスの美称でもあることから、とくに区別する際には「木芙蓉」(もくふよう)とも呼ばれる。

概要

日中の花の色の変化
中国、台湾、日本の沖縄、九州・四国に自生する。日本では関東地方以南で観賞用に栽培される。幹は高さ1.5-3m。寒地では冬に地上部は枯れ、春に新たな芽を生やす。

葉は互生し、表面に白色の短毛を有し掌状に浅く3-7裂する。

7-10月始めにかけてピンクや白で直径10-15cm程度の花をつける。朝咲いて夕方にはしぼむ1日花で、長期間にわたって毎日次々と開花する。花は他のフヨウ属と同様な形態で、花弁は5枚で回旋し椀状に広がる。先端で円筒状に散開するおしべは根元では筒状に癒合しており、その中心部からめしべが延び、おしべの先よりもさらに突き出して5裂する。

果実はさく果で、毛に覆われて多数の種子をつける。

同属のムクゲと同時期に良く似た花をつけるが、直線的な枝を上方に伸ばすムクゲの樹形に対し、本種は多く枝分かれして横にこんもりと広がること、葉がムクゲより大きいこと、めしべの先端が曲がっていること、で容易に区別できる。フヨウとムクゲは近縁であり接木も可能。

南西諸島や九州の島嶼部や伊豆諸島などではフヨウの繊維で編んだ紐や綱が確認されている[1]。甑島列島(鹿児島県)の下甑町瀬々野浦ではフヨウの幹の皮を糸にして織った衣服(ビーダナシ)が日本で唯一確認されている[2]。ビーダナシは軽くて涼しいために重宝がられ、裕福な家が晴れ着として着用したようである[3]。現存するビーダナシは下甑島の歴史民俗資料館に展示されている4着のみであり、いずれも江戸時代か明治時代に織られたものである[3]。


俳句でも芙蓉は好まれている。「亡母訪ねくるよな夕焼白芙蓉 大野林火 白幡南町 昭和二十九年」はすごみがある。
確かに夕闇の中で一輪の芙蓉で揺れたら、母親の亡霊かと思うかもしれない。



芙蓉 の例句
あふのけに汝の脛待つ芙蓉かな 齋藤玄 飛雪
ある朝の冷えや芙蓉を驚かす 安住敦
ある朝の芙蓉がひとつあと杜絶ゆ 安住敦
いたりつつその紅のとき酔芙蓉 岡井省二 有時
いちにちの終りし思ひ芙蓉閉ぢ 鷹羽狩行
いちまいに薄紅ひろぐ芙蓉かな 松村蒼石 雁
おはじきは今朝の空いろ芙蓉咲く 古沢太穂 捲かるる鴎
おもかげのうするる芙蓉ひらきけり 安住敦
お遍路のかくるる風の芙蓉かな 岸田稚魚
かくて秋定まる雨の芙蓉かな 安住敦
こころよきことのふしぎに芙蓉咲く 岡井省二 夏炉
こんなきれいな時間がありぬ花芙蓉 岸田稚魚 紅葉山
さかづきのめぐりそめけり酔芙蓉 水原秋櫻子 蘆雁以後
さはさはと松風わたる芙蓉かな 富安風生
すでに酔ひ午後の芙蓉でありしこと 稲畑汀子
そののちの日を重ねたる芙蓉かな 安住敦
その後のなほ野分めく芙蓉かな 中村汀女
たれもかれも親し白芙蓉紅芙蓉 山口青邨
つゆけさの一輪殊に酔芙蓉 水原秋櫻子 殉教
のどもとを潮の目ながれ夏芙蓉 岡井省二 有時
また秋の庭の芙蓉が咲いて呉れし 及川貞 榧の實
やぶ入の一日にしぼむ芙蓉哉 正岡子規 芙蓉
やゝ水のやさしさもどる花芙蓉 能村登四郎
マダム・バタフライのごとし酔芙蓉 鷹羽狩行
ロゼといふ色に出でたる酔芙蓉 後藤比奈夫
一輪のはや大酔や酔芙蓉 水原秋櫻子 殉教
中々に酔はざる白さ酔芙蓉 高浜年尾
九月来る醜男の庭に咲く芙蓉 三橋鷹女
亡母訪ねくるよな夕焼白芙蓉 大野林火 白幡南町 昭和二十九年
人の妻恋へば芙蓉に月険し 日野草城
人間世界芙蓉の花に日のあたりをる 中川一碧樓
今宵よりはじまる月夜芙蓉閉づ 阿波野青畝
今散りし芙蓉の花に蟻わたる 星野立子
仲秋や芙蓉は草の如く咲く 山口青邨
先づ以て亜米利加芙蓉咲きにけり 星野麥丘人
八ツ時の太皷打ち出す芙蓉哉 正岡子規 芙蓉
函館の芙蓉の朝のはじまりぬ 雨滴集 星野麥丘人
初嶋はかすみて漁戸の芙蓉咲く 飯田蛇笏 白嶽
初花の芙蓉に澄めり稽古笛 能村登四郎
初花の葉がくれ酔へり酔芙蓉 水原秋櫻子 蘆雁
十六夜や花閉ぢあへぬ白芙蓉 水原秋櫻子 緑雲
双鶴の離れて芙蓉水に濃き 渡邊水巴 富士
古家や芙蓉咲いて人なまめかし 正岡子規 芙蓉
名月や仙人掌上の玉芙蓉 正岡子規 名月
君が家の鯉いろいろや酔芙蓉 森澄雄
咲きつぎて芙蓉うつろはざり倦みぬ 及川貞 榧の實
啼くも飛ぶもいらだつ蝉や花芙蓉 渡邊水巴 富士
城石垣一片移す庭芙蓉 河東碧梧桐
夕光や芙蓉の蕊の座の紅さ 楠本憲吉 隠花植物
夕冷えに白さ極まる芙蓉かな 日野草城
夕風や芙蓉は莟数知れず 安住敦
大酔を微醺かこめり酔芙蓉 水原秋櫻子 蘆雁以後
妬心ほのと知れどなつかし白芙蓉 杉田久女
妹逝く背戸の芙蓉の桃色に 細見綾子
妻が歌芙蓉の朝の水仕かな 石田波郷
妻去れば養女かなしむ芙蓉かな 下村槐太 天涯
妻戸明けて一枚はねる芙蓉哉 正岡子規 芙蓉
子に供華の千万かなし紅芙蓉 及川貞 榧の實
子に供華の千萬かなし紅芙蓉 及川貞 夕焼
存へて浮世よろしも酔芙蓉 森澄雄
宝蔵に侍づき咲きて芙蓉の日 石塚友二 方寸虚実
居待月芙蓉はすでに眠りけり 安住敦
山人の盆の顔ある芙蓉かな 森澄雄
山門の白芙蓉まづ意にかなふ 山口青邨
島の中に島を作りて花芙蓉 鷹羽狩行
嵐めく芙蓉一叢見て去ぬる 岸田稚魚 筍流し
帰り見れば芙蓉散りつきし袷かな 杉田久女
廢舘に鷄遊ぶ芙蓉かな 正岡子規 芙蓉
廢苑や芙蓉を覆ふ葭の風 正岡子規 芙蓉
廣椽の折り曲りたる芙蓉かな 正岡子規 芙蓉
忘れ得ぬ日や初花の酔芙蓉 水原秋櫻子 餘生
打水の日を截るしぶき花芙蓉 渡邊水巴 富士
撫子も白芙蓉も白秋暑し 山口青邨
料理屋の夜の*間寂や白芙蓉 飯田蛇笏 霊芝
料理屋の夜の間寂や白芙蓉 飯田蛇笏 山廬集
旅毎日芙蓉が落ちし紅き音 西東三鬼
日や萩に雨や芙蓉にかく優し 安住敦
明家の草の中より芙蓉哉 正岡子規 芙蓉
昼過ぎつ芙蓉の下に鶏すくむ 河東碧梧桐
時に秋眉開かせくれぬ白芙蓉 松崎鉄之介
時化あとの新たなる花紅芙蓉 及川貞 夕焼
暁方の夢にこだはり白芙蓉 橋閒石 雪
月の蜘蛛寝ねし芙蓉へ力糸 後藤比奈夫
月出たり芙蓉の花の傍に 正岡子規 芙蓉
月明し明日咲く芙蓉かぞふべし 安住敦
有明の雨が濡らせる芙蓉かな 安住敦
朝々の芙蓉の数となりしかな 安住敦
朝な梳く母の切髪花芙蓉 杉田久女
朝の露汚して芙蓉珠おとす 能村登四郎
朝を果敢な蟻ら 芙蓉の底紅まで 伊丹三樹彦
朝駈けの雨の濡らせる芙蓉かな 安住敦
村會の議員住みける芙蓉哉 正岡子規 芙蓉
松が根になまめきたてる芙蓉哉 正岡子規 芙蓉
松風や芙蓉溺れむばかりにて 岸田稚魚
枝廣くたしかに開く芙蓉哉 正岡子規 芙蓉
柳散る芙蓉の庭や朝嵐 正岡子規 芙蓉
梢頭の覚めて冷たき白芙蓉 斎藤玄 狩眼
椽廣く折り曲りたる芙蓉哉 正岡子規 芙蓉
武藏野を見下す寺の芙蓉哉 正岡子規 芙蓉
歩きつつ芙蓉は萩にかくれけり 上野泰 佐介
歳月や亡師さながら芙蓉に病む 石田波郷
残月やひらかむ芙蓉十あまり 水原秋櫻子 残鐘
母の家の芙蓉や閉ぢぬ帰るべき 山田みづえ 忘
水櫛に髪しなやかな花芙蓉 中村汀女
池の日の眞つ晝間なり夏芙蓉 岡井省二 前後
池中や石も吹かるる萩芙蓉 石川桂郎 含羞
沓の跡芙蓉の下に印すらん 河東碧梧桐
深空より甍を垂るる芙蓉かな 富安風生
濤立ちて芙蓉を吹けり日本海 森澄雄
爪紅の手をのべて芙蓉折らんとす 正岡子規 芙蓉
痢人の手触れてをのゝく芙蓉かな 西島麦南 人音
白き猫芙蓉の光あつめ臥す 橋閒石 雪
白芙蓉しだいに灯恋はれけり 石橋秀野
白芙蓉ふたたび交す厚き文 野澤節子 未明音
白芙蓉凋みて落ちて綿のごと 山口青邨
白芙蓉墓大にして血統絶ゆ 福田蓼汀 山火
白芙蓉暁けの明星らんらんと 川端茅舎
白芙蓉添水のみづの流れくる 大野林火 方円集 昭和四十九年
白芙蓉白木槿庭さびしすぎ 山口青邨
白芙蓉睡竹堂の木椅子かな 松崎鉄之介
白芙蓉秋は夫人の愁ふ瞳に 飯田蛇笏 雪峡
矮鶏が鬨つくる芙蓉の花の雨 木村蕪城 寒泉
砂入れて平らかになりし芙蓉かな 右城暮石 句集外 昭和十一年
碁の音や芙蓉の花に灯のうつり 正岡子規 芙蓉
秋の空芙蓉の花に定まりぬ 内藤鳴雪
秋風をいろづけせむと酔芙蓉 阿波野青畝
空蝉や芙蓉落ちたる音閑か 渡邊水巴 富士
競ひ咲く花にはあらず芙蓉咲く 三橋鷹女
箒木は皆伐られけり芙蓉咲く 河東碧梧桐
紅芙蓉まづ白芙蓉一日ずれ 高田風人子
紅芙蓉一花の高しくらら庵 石川桂郎 四温
紅芙蓉春樹素読の声透くや 林翔 和紙
紅芙蓉村水没のダム際に 右城暮石 句集外 昭和五十年
紅芙蓉枝の向きむき四山退く 中村草田男
紅芙蓉白芙蓉又紅芙蓉 星野立子
紅芙蓉鉄扉鳴らして出入口 右城暮石 句集外 昭和五十五年
翡翠や芙蓉の枝に羽つくろひ 正岡子規 翡翠
老人の妻も老人酔芙蓉 亭午 星野麥丘人
肥汲が辞儀して括る芙蓉かな 渡邊水巴 白日
胸の手のつめたく覚めし花芙蓉 鷲谷七菜子 黄炎
船つくる木の香の匂ふ花芙蓉 清崎敏郎
色どれど淋しき頬やな花芙蓉 杉田久女
芙蓉くれなゐ蟷螂斧をかまふるは 山口青邨
芙蓉ことに簀戸のへだての美しき 及川貞 榧の實
芙蓉には蝕むといふ障りあり 後藤夜半 底紅
芙蓉に鯰裸かの胸にちちろとぶ 金子兜太
芙蓉の日うすらぐほどの雲過ぎぬ 橋閒石 雪
芙蓉の翳古郷忌幾日過ぎにけむ 石田波郷
芙蓉の花多し海鳴の曇り日 金子兜太
芙蓉の葉巻きけり蜘蛛に似し虫が 阿波野青畝
芙蓉は妙齢老の釣針魚もだゆ 中村草田男
芙蓉みな萎みぬ星座さやかなり 渡邊水巴 富士
芙蓉より明けて潮汲に明けをはる 加藤秋邨
芙蓉ヨリモ朝顔ヨリモウツクシク 正岡子規 芙蓉
芙蓉一花まづ咲き珠の小家建つ 能村登四郎
芙蓉咲いて古池の鴛やもめ也 正岡子規 芙蓉
芙蓉咲いて蟷螂の子の薄みどり 橋閒石 雪
芙蓉咲いて面影胸に甦る 日野草城
芙蓉咲きこんなに暗い真つ昼間 金子兜太
芙蓉咲きぬけふの暑さは易からむ 及川貞 榧の實
芙蓉咲き今朝の供華とす終戦日 及川貞 夕焼
芙蓉咲き倉敷川は朝澄めり 水原秋櫻子 餘生
芙蓉咲き後ろ手といふ無心あり 秋元不死男
芙蓉咲き自転車二台で竹運ぶ 金子兜太
芙蓉咲き見えぬ月見えぬ蛾眉山 金子兜太
芙蓉咲き風邪ひく山羊の風情かな 飯田蛇笏 山響集
芙蓉咲くかぎり白露結びけり 安住敦
芙蓉咲くかみなりさまとお別れだ 能村登四郎
芙蓉咲くしづけさにあり百ヶ日 安住敦
芙蓉咲く橋の袂の小家かな 正岡子規 芙蓉
芙蓉咲く風音は人々が聴いて 金子兜太
芙蓉峰うち仰ぎもす汐干狩 飯田蛇笏 雪峡
芙蓉数えていても女の険去らず 楠本憲吉 孤客
芙蓉白妙蟷螂真青秋新た 山口青邨
芙蓉見えてさすがに人の聲ゆかし 正岡子規 芙蓉
花の底美酒たたへ紅芙蓉 山口青邨
花芙蓉今宵火星は近づくと 星野立子
花芙蓉水に映りて揺るるなし 清崎敏郎
花芙蓉門跡稀に出で給ひぬ 村山故郷
草とつて芙蓉明かになりにけり 河東碧梧桐
草の中あはれ白芙蓉紅芙蓉 山口青邨
菜園のほとり芙蓉を咲かしめぬ 三橋鷹女
萎みたる芙蓉の花や磬の聲 正岡子規 芙蓉
萩を焚くついで芙蓉も鶏頭も 星野立子
萩芙蓉一日の妻を見棄てけり 齋藤玄 飛雪
萩芙蓉馬場移公子来て雨鮮し 星野麥丘人
落芙蓉すうっと 終章いそがねば 伊丹三樹彦
葉を出でゝ雪一塊の芙蓉かな 渡邊水巴 白日
葉を打つてしぼみ落ちたる芙蓉かな 杉田久女
蒼天や芙蓉はさらに身に近き 渡邊水巴 富士
薪割って初咲芙蓉ゆれにけり 及川貞 夕焼
藤村晩年の町曇天に芙蓉うかぶ 古沢太穂 火雲
蟷螂のほむらさめたる芙蓉かな 河東碧梧桐
行く秋を開ききつたる芙蓉哉 尾崎放哉 大学時代
行李空しきを芙蓉の宿に置き捨てん 中川一碧樓
袖の如ひるがへる葉や酔芙蓉 水原秋櫻子 殉教
裏庭は山つゞきなり紅芙蓉 星野立子
西子湖に映り源平咲き芙蓉 鷹羽狩行
西子湖の芙蓉のつぼみ拳大 鷹羽狩行
覚めてふと胸のくもりや白芙蓉 鷲谷七菜子 黄炎
豊満の美に佛性や紅芙蓉 富安風生
賓蔵に待づき咲きて芙蓉の日 「方寸虚実」石塚友二
起きぬけにシャヮー浴びたる芙蓉かな 草間時彦
跨虹橋に師とある如し白芙蓉 松崎鉄之介
逢いたさの雨白芙蓉擦過して 楠本憲吉 方壺集
逢ひにゆく袂触れたる芙蓉かな 日野草城
酔ひも酔ひさまにならむと芙蓉かな 阿波野青畝
酔態をへだてし葉あり酔芙蓉 水原秋櫻子 蘆雁以後
酔芙蓉すぐ午後が来て夕ベきて 安住敦
酔芙蓉のこして拓く駐車場 水原秋櫻子 餘生
酔芙蓉よりいささかの酔おくれ 能村登四郎
酔芙蓉ヨハネ村上忌も過ぎて 燕雀 星野麥丘人
酔芙蓉倚らしむ月日ありにけり 星野麥丘人
酔芙蓉溝より鼠跳びにけり 岡井省二 猩々
酔芙蓉白雨たばしる中に酔ふ 水原秋櫻子 殉教
酔芙蓉雪膚花顔と詩にも言ふ 水原秋櫻子 蘆雁以後
銀水引掛けばや白芙蓉そへて 山口青邨
門の辺の芙蓉の数も夕爾の忌 安住敦
雑草園女の客や酔芙蓉 山口青邨
雜草の雨にぬれたる芙蓉哉 正岡子規 芙蓉
雨にぬれて雜草の中の芙蓉哉 正岡子規 芙蓉
雨の芙蓉花かたつらになひきけり 正岡子規 芙蓉
霧ふかく酔いまだしや酔芙蓉 水原秋櫻子 殉教
露ながら一瓣すでに酔芙蓉 水原秋櫻子 晩華
露なくて色のさめたる芙蓉哉 正岡子規 芙蓉
面影は風に吹かるゝ白芙蓉 日野草城
風すぐに白き芙蓉を抜けにけり 星野麥丘人
風のまま芙蓉の花のひろがりて 後藤夜半 底紅
風はらむはずみにひらく芙蓉かな 阿波野青畝
風よりも細き身のひと花芙蓉 鷹羽狩行
髪刈りしのみの日曜芙蓉落つ 能村登四郎
鰯焼く煙芙蓉を犯しけり 日野草城
鵞の卵孵らず芙蓉散りそむる 橋閒石 雪
黒髪を梳くや芙蓉の花の蔭 日野草城

芙蓉 続補遺

*ずずだまを植し母なし芙蓉咲 松窓乙二
おしむなよ芙蓉の陰の雨舎り 支考
まだ痩ぬ蝶や芙蓉の暖まり 中川乙由
刈揚や芙蓉の寺も門並に 鈴木道彦
夏の僧の無沙汰佗るや散芙蓉 鈴木道彦
山も岡も芙蓉に露を置がごとし 樗良
星の精や八日にさける白芙蓉 加藤曉台
暮の鐘きかずにしぼむ芙蓉哉 木導
曇る日は猶ちからなき芙蓉かな 木導
月やこの芙蓉も持たずくもる庵 松窓乙二
月宵~芙蓉日~にはなの露 井上士朗
月満て芙蓉の花のすわりけり 加藤曉台
有明の鏡になをる芙蓉哉 林紅
朝露のはれなる白き芙蓉哉 旦藁
枝ごとに苔もちあふ芙蓉哉 卓池
百合は過芙蓉を語る命かな 風麦
立出て芙蓉の凋む日にあへり 加舎白雄
笄に芙蓉の落花集めけり 三宅嘯山
笠の内色をふくめる芙蓉哉 りん女
筆と見て見ひらく芙蓉の命かな 素堂
芙蓉さく今朝一天に雲もなし 宮紫暁
芙蓉の香苔のみづらにこぼれけり 椎本才麿
花芙蓉美女湯あがりて走りけり 素堂
茶筌もて真の掃除や白芙蓉 其角
蕣のつぼみて渡す芙蓉哉 卯七
露と日に光りわかるゝ芙蓉哉 三宅嘯山
鵙の声院の芙蓉を鄙にする 鈴木道彦



端正な花なのに名前で不利になっているドクダミ

2019年05月21日 06時14分31秒 | 
いたるところで咲き始めたドクダミ。
この前までは野原の白い花はハルジオンだったが、
今ではドクダミが大半を占める。よく見ると端正な花だ。それに芽の形も美しい。
名前がひどいけど、ドクダミ茶などで馴染みの名前になってきた。
もともとは毒を抑えるという意味らしい。
(2019-05 神奈川県川崎市 道端)




ドクダミ
ドクダミ(蕺草、蕺、学名:Houttuynia cordata)はドクダミ科ドクダミ属の多年草。 別名、ドクダメ(毒溜め)、ギョセイソウ(魚腥草)、ジゴクソバ(地獄蕎麦)。

名称
古くは、之布岐(シブキ)と呼ばれていた。どくだみの名称は「毒矯み」(毒を抑える)から来ている。ドクダミ自体に毒はない[1]。中国語と同様の魚腥草(腥の意味は「生臭い」)、ベトナム語のザウザプカーまたはザウジエプカー(ベトナム語: rau giấp cá/ rau diếp cá 、意味は「魚の野菜の葉」)、英語のfish mint, fish herb, fishwortなど、魚の匂いに纏わる名称も多い。英語にはそのほか、lizard tail(トカゲの尻尾), chameleon plant(カメレオンの植物), heartleaf(心臓の葉)や、bishop's weed(司教の草)という表現もある。

形態・生態等
多年生の植物[1]であり、住宅周辺や道ばたなどに自生し、特に半日陰地を好む。全草に強い臭気がある。開花期は5~7月頃。茎頂に、4枚の白色の総苞(花弁に見える部分)のある棒状の花序に淡黄色の小花を密生させる(総苞は実質イミテーション)。本来の花には花弁も萼(がく)もなく、雌蕊と雄蕊のみからなる。 繁殖力が高く、ちぎれた地下茎からでも繁殖する。

利用
食用
加熱することで臭気が和らぐことから、日本では山菜として天ぷらなどにして賞味されることがある。日本において料理用のハーブとして用いられる事は無いが、葉を乾燥させてどくだみ茶を製造する事がある。これは一種のハーブティとして、麦茶のように飲まれる事が多い。どくだみ茶は商品化もされている。爽健美茶の主原料の1つとしても有名。


他の香草と共に食されるドクダミ(ベトナム)
また、ベトナム料理では、とりわけ魚料理には欠かせない香草として生食される。ただし、ベトナムのものは日本に自生している個体群ほど臭気はきつくないとも言われている[要出典]。

中国西南部では「折耳根(ジョーアルゲン 拼音: zhéěrgēn)」と称し、四川省や雲南省では主に葉や茎を、貴州省では主に根を野菜として用いる。根は少し水で晒して、トウガラシなどで辛い味付けの和え物にする。

薬用

生薬として、開花期の地上部を乾燥させたものは生薬名十薬(じゅうやく、重薬とも書く)とされ、日本薬局方にも収録されている。十薬の煎液には利尿作用、高血圧、動脈硬化の予防作用などがある。なお臭気はほとんど無い。 また、湿疹、かぶれなどには、生葉をすり潰したものを貼り付けるとよい。

漢方では解毒剤として用いられ、魚腥草桔梗湯(ぎょせいそうききょうとう)、五物解毒散(ごもつげどくさん)などに処方される。しかし、ドクダミ(魚腥草、十薬)は単独で用いることが多く、漢方方剤として他の生薬とともに用いることはあまりない。


俳句の世界でも、名前の余波は大きい。
「どくだみやこの世のユダの数ほどに 鷹羽狩行」はあまりにかわいそうかも。



十薬 の例句

うしろ手を解き十薬に親しみぬ 岡本眸
さからはず十薬をさへ茂らしむ 富安風生
しづかな道となりどくだみの芽 種田山頭火 草木塔
どくだみに降る雨のみを近く見る 秋元不死男
どくだみのくもりのひとを近づけず 大野林火 冬雁 昭和二十二年
どくだみのわれはがほなる二葉かな 富安風生
どくだみの十字に目覚め誕生日 西東三鬼
どくだみの密生神を斎く庭 山口誓子
どくだみの白妙梅雨の一日昏る 橋本多佳子
どくだみの終りしからに灸花 後藤夜半 底紅
どくだみの花いきいきと風雨かな 大野林火 冬雁 昭和二十一年
どくだみの花と夏天の鷺と白し 山口青邨
どくだみの花を踏みくる氷室守 百合山羽公 春園
どくだみの花咲くと洗ふ蜆かな 山口青邨
どくだみの花炎天の水に咲く 松村蒼石 寒鶯抄
どくだみの香にたつ土の薄暑かな 西島麦南 人音
どくだみへ 踏み込む 薬師は裏拝み 伊丹三樹彦
どくだみもやさしき若葉してゐたり 平井照敏 猫町
どくだみやこの世のユダの数ほどに 鷹羽狩行
どくだみや年々に喜怒淡くなり 鷹羽狩行
どくだみや真昼の闇に白十字 川端茅舎
どくだみや繁みが上の馬ぼこり 史邦
どら猫やどくだみの花踏みしだき 相生垣瓜人 負暄
一藪をたゞ十薬の匂ひ哉 正岡子規 十薬
人踏みし十薬匂ふ新しさ 右城暮石 句集外 昭和十三年
十薬が匂ふ恋しさともちがふ 細見綾子
十薬に一点の雨廃工場 桂信子 晩春
十薬に外出や三たび降りつのり 石橋秀野
十薬に彳ちて己を宥さずをり 野澤節子 未明音
十薬のそこら咲きみち梅雨宣言 山口青邨
十薬のましろき襟の信徒たち 平井照敏
十薬の匂ひに慣れて島の道 稲畑汀子
十薬の十字じめりへ発破音 秋元不死男
十薬の十字を額に悔いにけり 上田五千石『田園』補遺
十薬の大なだれしてゐるところ 石田勝彦 秋興以後
十薬の枯れたる花の十文字 清崎敏郎
十薬の根の長々と瓦礫より 細見綾子
十薬の根を押す雨となりにけり 岡本眸
十薬の水に映るは一弁欠く 山口青邨
十薬の渚のごとく歩を返す 古舘曹人 砂の音
十薬の白梅天となら妥協 後藤比奈夫
十薬の聖十字満つわが歩々に 山口青邨
十薬の花が白いなどこのやうな生涯 中川一碧樓
十薬の花に涼むや楽屋裏 松本たかし
十薬の花のたひらは浄土まで 鷹羽狩行
十薬の花の十字に襟正す 山口青邨
十薬の花の十字の梅雨入かな 石田波郷
十薬の花の咲く花圃薬学科 後藤比奈夫
十薬の花の真白きこと不安 後藤比奈夫
十薬の花咲きたてや草の中 星野立子
十薬の花庭埋むまた見るべし 山口青邨
十薬の花粉をくわへ蟻走る 上野泰
十薬の蕊高くわが荒野なり 飯島晴子
十薬の蕚あはれにも低きかな 山口誓子
十薬の雨朝々を鬱しをり 角川源義
十薬の香の墓に子とあそびをり 石田波郷
十薬はにはの醜草人のくすり 山口青邨
十薬も天に咲く花九十九谷 林翔 和紙
十薬も梅雨のあがりし朝の日に 長谷川素逝 暦日
十薬やうごきて杜の外の空 岡井省二 前後
十薬やつひにひとりの旅の尿 小林康治 四季貧窮
十薬やわびしけれども世を遁げず 上田五千石『天路』補遺
十薬や世に古りそめしわが俳句 石田波郷
十薬や人に尽くせし尽くし甲斐 鷹羽狩行
十薬や何を植ゑても出来ぬ土地 正岡子規 十薬
十薬や夏のものとて花白し 田川鳳朗
十薬や夜へ突立つ坂がかり 鷲谷七菜子 銃身
十薬や山路細まり土湿り 星野立子
十薬や才気ささふるもの狂気 鷹羽狩行
十薬や捧げて担ぐ米五升 伊藤白潮
十薬や木魂遊ばす子のたむろ 角川源義
十薬や母には会へぬ世に生きて 上田五千石『風景』補遺
十薬や母の生地の土やはらか 上田五千石 田園
十薬や犬をつなげば猫が来て 岡本眸
十薬や瓦の文の聖十字 水原秋櫻子 餘生
十薬や石垣つゞく寺二軒 村上鬼城
十薬や蕗や茗荷や庵の庭 正岡子規 十薬
十薬や衰へねども石に倚り 上田五千石『天路』補遺
十薬や酔のこりたる咽喉の奥 藤田湘子 途上
十薬や鴉吹かるる峡の雨 角川源義
十薬を摘みに来る姉巷に老い 山口青邨
十薬を白と思ふまで稲光 斎藤玄 狩眼
十薬を見れば農婦に見られけり 山口誓子
十薬を踏むやたちまち臭ひだつ 上村占魚
十薬咲く清く痩せたる苔地かな(王龍山) 細見綾子
取り果てず草と十薬に花咲かす 及川貞 榧の實
墓群よりも十薬ひしと寄り合へる 石田波郷
大甍どくだみ生えて垂れさがり 野見山朱鳥 曼珠沙華
巖迫り雨の饒舌どくだみに 古舘曹人 能登の蛙
指に莨熱くどくだみの中に立つ 大野林火 青水輪 昭和二十六年
村中を墓にどくだみ花ざかり 斎藤玄 雁道
熱の眼に十薬遠し置きにけり 石川桂郎 含羞
男神寧し十薬花を消し 岡井省二 明野
石垣の雨にどくだみ初夏の花 廣瀬直人 帰路
禅寺に咲きし十薬白十字 右城暮石 句集外 昭和五十年
細香の恋どくだみの臭に立つよ 山口誓子
芍薬にうき十薬のしげり哉 尚白
花言葉なき十薬は十字切る 上田五千石『琥珀』補遺
華僑の塀から 噴き出し十薬 暮色阻み 伊丹三樹彦
葉桜やどくだみの叢は夜のごとく 山口青邨
藪跡の十薬匂ふ明地かな 正岡子規 十薬
蛇の匂ひ十薬に似し記憶あり 右城暮石 句集外 昭和十三年
螢袋十薬畳拭きて咲く 山口青邨
裾まく十薬 討死武将の墓双つ 伊丹三樹彦
車庫に干すどくだみげんのしやうこなど 右城暮石 一芸
道冷えて十薬は咲き満ちにけり 山田みづえ 忘
金星も十薬もいま囁くほど 岡本眸
階上にまで十薬のはつきりと 山口誓子
雨のなか十薬の白のみ信ず 鷹羽狩行
雫落ち十薬の花またゝきぬ 清崎敏郎
露草の瑠璃十薬の白繁り合へ 石田波郷