中高年の山旅三昧(その2)

■登山遍歴と鎌倉散策の記録■
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台湾訪問記(3) 高雄へ

2012年03月04日 05時01分27秒 | 東南アジア訪問記 

[復刻版]          台湾訪問記(3) 高雄へ
         (国際比較管理学術会議(高尾)参加記録)
          1997年5月24日(木)~28日(月)

■機内食
 浜松町からのモノレールの事故が影響して,飛行機は15分程度遅れて出発したものの,その後は大した揺れもなく順調に飛び続けた.そして,昼食の時間になった.
 まず,飲物が配られる.
 ご存じのとおり,国際線では,アルコール類は,いくら飲んでもタダである.早速,さもしい根性丸だしの一行は,ワイン,リキュール,ビールと勝手に注文する.私も下戸な癖に何となく好奇心につられて「台湾ビール」を貰う.
 味は,沖縄のオリオンビールに似て,サラッとしていて,とても口当たりがよい.私は,
 「台湾に居る間は,台湾ビールで過ごそう」
と心の中で決める.
 容姿は日本人そっくりだが,どことなく仕草が荒っぽいスチュワーデスが,次々と食事を乗客に手渡していく.
 「シュリンプとビーフがあります.シュリンプは終わりです」
とだどたどしい日本語で諭すように,乗客一人ひとりに話している.
 「そんなら,シュリンプなんていちいち言わないで,だまってビーフを置いていけば良いじゃないか」
と私独特の「天の邪鬼」が頭をもたげるが,心の中にそっと押さえ込む.
 でも,このビーフ.握り拳ほどの大きさで,ミデアムレアーに焼いてあある.大変美味しい.トマトソースで味付けしたスパゲティや人参が添えてある.食卓の向かって左には,かなりの分量の中華風野菜炒めが置いてある.なかなかのボリュームで味も良い.
 私は,とても全部食べきれずに,かなり残してしまった.私達の戦時中育ちの世代に共通する感情は,食べ物を残すことへの罪悪感である.でも,己の健康を考えて,
 「自分の胃袋を,残飯を棄てるゴミ箱と間違えるな」
と言い聞かせながら,泣く泣く食べきれない分を残すことにした.
 隣の席では「ヒゲさん」が,痛快な速度で,食事をみるみる平らげている.ワインやビールをドンドンとこなす.副社長兼中小企業診断士兼兼・・・の「勉さん」も,結構アルコールに強いようで,グングンとメートルを上げながら食事を平らげている.

■台北でトランシット
 免税品の販売が始まった.
 トイレの前に長い列が出来ている.私の経験では,離陸後,大体3時間ほど経つとトイレが混むような気がする.きっと,登場直前にトイレへ行く人が多いので次の nature calls me! の時間が同期するのだろう.私も,決まって長蛇の列ができる時間帯に限って「自然が我を呼ぶ」状態になって,苦労する.
 その内に,心なしか,轟々と響くジェットの音が小さくなり始めた.耳がツンと来るような感じになる.飛行機が高度を下げているなと直感する.
 台北へは予定よりも15分ほど遅れて到着した.
 空港内では,随分と大勢の職員がいて,トランシット客を誘導している.私達の一行も,洋犬に誘導される羊の心境で誘導に従って先を急ぐ.高雄行きの飛行機がわれわれを待っていた.
 これまで乗ってきたジャンボに比較すると,何だか,随分と小さな飛行機である.中央の通路を挟んで3列の席が並んでいる.われわれ6人の席は横一列にリザーブされていた.席に着くと,待ってましたとばかり発砲スチロール製のお手拭きが配られ,ついで紙パック入りのオレンジジュースが配られた.
 何列おきかに,頭上に据え付けられた液晶パネルには,ジャンボと同じように,日本から台湾の道のりが映し出されている.パネル上では台湾の大きさの3分の1程もある飛行機のマークが南南西を向いて映し出されている.映し出された飛行機の尾翼が台北にいるのに機首は高雄についているような錯覚を与える.
 よく考えると,まだ入国審査も通関手続きもしていない.だから,機材が変わっても,まだ国際線を飛んでいるのだ.高雄までのフライト時間は,たった45分だった.

■高尾空港到着
 入国審査,通関手続きともに,ごく簡単であった.良く覚えていないが,前回,台湾に来たときは,結構,緊張した記憶がある.諸手続が簡単になったのは,多分,台湾の生活水準が向上したからに違いないと,私は早合点している. 
 出口に進んだ.
 われわれ一行の荷物には,VIPと大きな字が印刷してある白地の荷札がついている.それを見つけたダブルの黒いスーツを着た50歳代の丸顔紳士が盛んに手招きをしている.この人が,今回のツアーでお世話になったガイドの「許さん」である.
 早速名刺を交換する.
 名刺には「∴格林國際有限公司」と書いてある.ただし,∴の部分は,一つひとつの点を「金」に置き換えた字である.つまり,金の三つ重ねになっている.こんな字は,私のワープロソフトには入っていない.

■高雄市観光へ
 空港の建物の外へ誘導される.
 バンが1台待っていた.短期旅行なので,一行の荷物も大した量ではない.直ぐ出発することができた.バンの中は,とても綺麗に掃除してあるし,車両も新しい.運転手の服装も清潔だ.
 「タイとは随分違うな」
が偽りのない私の再見!台湾の第一印象であった.
 助手席に座った「許さん」は,後部座席の方に身を乗り出すようにして,あらためて自己紹介を始める.身だしなみも良い.
 「皆さん.初めまして.許です.ホテルへチェックインする前に,ちょっと高雄市の観光案内をします」
と流暢な日本語で話す.
 時々,おかしな日本語も出るが,それにしても日本語がとても達者で大したものだと,早速,感心してしまう.以後,「許さん」と呼ぶのは面倒なので,「ツウさん」と呼ぶことにしよう.
 窓側に座ったK大の「ソカさん」は,早速,鞄の中から地図やらガイドブックを引っぱり出して,何やら一人で合点している.カメラを片手になんでも写してやろうと力んでいるように見える.そそっかしいが,この子供のような好奇心が「ソカさん」の真骨頂だ.フイルムを6本も買い込んできたという.
 「髭さん」は得意の分厚い手帳を引っぱり出して,何やら自分のノートの資料を確認して,1人で悦に入っている.
 私は,「髭さん」の仕草に,バイタリティを感じている.「こういうの,いいな」と「髭さん」を好ましく思っている.
 「勉さん」は,前列真ん中の席で,音もなく粛然と座している.
 後ろの席では「ヒガさん」の上体が眠そうにふらついている.

■現地通貨に両替
 「ツウさん」は,5日間の日程表や観光案内の資料などを,つぎつぎに配布する.
 「皆さん.今日の為替レートは,1NT$が約4.2円です.とりあえずお一人1万円相当のNT$を用意していますので,宜しければ換えます」
 全員が,一人1万円ずつNT$に交換した.総じて,日本のお札よりは,少々汚いのが混じっているが,
 「タイよりは大分ましだな・・・」
と私は,またもや,実感している. 
 高雄市に着く前は,高雄市はせいぜい長野か藤沢ぐらいの大きさの街だろうと勝手に想像していたが,これが大変な誤りであることに,すぐ気付いた.旅行社から貰った高雄市の地図には空港が書いてないが,どうやら空港は高雄市の南にあるらしい.片側4車線の広い立派な道路に沿って,われわれを乗せた車は北上する.

■寿山公園
 ヘルメットを被らないままで二輪車に乗っている人を見掛ける(2012年注;この様子は1997年当時のこと).中には,子供を荷台と膝に乗せたままスクーターを運転している人もいる.暑いときに,風を切りながら,一家で乗るスクーターの醍醐味を,一度でいいから,味わってみたい.
 相変わらず,二輪車の数が多いようだが,前回,訪台したときに比較すると,随分と減っているような気がする.多分,所得水準が向上したために,スクーターから乗用車に乗り換えた人が多いのだろう.ただし,これは勝手な想像である.
  空港から20~30分ほどで,寿山公園に着いた.
 公園内には大きな池が広がっている.その池を横切るような形で,ジグザグに折れ曲がった橋が架かっている.九重の葛折(ツヅラオリ)になっている.
 「ソカさん」が盛んに感心して,ニコニコしながら写真を撮りまくっている.
 池の水は,濁っている.種類は分からないが,鯉ほどの大きさで,ぎざぎざとした精悍な感じの魚が,棲息しているようだ.
 土曜日だというのに,それほどの人出ではない.
 日本人の観光客も,ちらほら居るが,それ程,目立たない.
 でも,天候は高曇りで,かなり蒸し暑い.平素,冷暖房完備の素敵なビルで仕事をしている「ヒガさん」は,やや疲れ気味のように見受けられる.
 「勉さん」は目立たないが,元気なようだ.
 「髭さん」は颯爽としていて頼もしい.
 平素,半年遅れの極端な冷暖房完備の環境で過ごしている私には,この程度の暑さは,全く,気にならない.
 公園のはずれに,7重の塔がある.日本の五重の塔に比較すると,何となくずん庇の形がのっぺりしていて,そのくせ庇の曲線(何ていうのだろう)がきつくて突き出た印象を受ける.なんとなく均整が取れていない感じを受けるが,これは日本人の眼で見るからであろう.
 40~50段の階段を登り詰めた丘の上に塔が立っている.鉄筋コンクリート製のようである.中は意外に広くて,二重の螺旋階段が着いていて,登り口と出口が別になっている.登り口の足下の床に,大きな矢印が階段に向かって書いてある.
 ガイドの「ツウさん」が,
 「どうぞ上まで登って,景色を楽しんで下さい」
とそれとなく促す.
 「髭さん」と私は,早速,塔に登り始める.普段,山道を歩いている私には,7階建ての塔に登るぐらいは,全く,どうということはないが,「髭さん」は3階あたりから呼吸が荒れ出す.つき合っていても仕方がないので,私は,そのままのテンポで,一足先に天辺まで登って風景を楽しんでいる.
 西側とおぼしい方向に山が見える.どうやら,この山の裾が工場地帯らしい.そのあたりの空気が大変濁っている.南にはビル群が見える.高雄市の中心街らしい.予想外の大都会である.眼下には広大な池が見下ろせる.  ややあって,「髭さん」が,ふうふう言いながら登ってきた.
 「先生,随分と丈夫ですね」
と汗を拭きながら,ハアハアしている.
 「「髭さん」,あなた,運動不足ですよ」
 2人で,しばらく遠景を楽しんだ.他の連中は,途中の階で,登るのをギブアップしたらしい.そこで,下り階段を使って,地上に降りた.ガイドの「ツウさん」と「トウさん」がタバコを吹かしながら,われわれが降りてくるのを待っていた.
 やがて,「勉さん」も途中の階段からおりてきた.神戸大の「ソカさん」だけが行方不明である.最初,「ソカさん」は,みんなが塔に登るのに,「ツウさん」の側で,登らずに居たが,やがて寂しくなって,どこかへ行ったらしい.  皆で暫く「ソカさん」を待っていた.
 一向に姿を見せないので,そろそろ心配しだした頃,「ソカさん」が怪訝な顔をして,塔から降りてきた.
 「一人で居ても仕方がないので,階段を登っていけば,みんなに合えると思ったんですが,誰にも会わなかった.皆さんどうしたんですか?」
 皆,顔を見合わせた.一瞬,「ソカさん」の言っていることが理解できなかったのだ.
 みんな,怪訝な顔をしている.
 「だって,「ソカさん」.私たちが下り始めたら,上り階段ではすれ違がわないでしょう」
と私が気付く.
 「アレッ 階段,二重になっているんですか?」
と「ソカさん」が素っ頓狂な声を出す.
 「夢にもそんなこと気付きませんでした.だから階段を登っていったら,どこかで降りてくる皆とすれ違うと思っていました」
登り口にある大きな矢印を,「ソカさん」だけが見落としていた.それに狭い階段をどうやってすれ違うのか,「ソカさん」が不思議に思わなかったことが,逆に不思議である.
 いつも「ソカさん」は,これである.危なっかしいったらありゃしない.

■春秋閣
 池を巡りながら,公園の出口に向かう.途中,芝生を仕切った露天がある.われわれが通りかかると,薄汚い姿をした2人の男が,砂糖黍(サトウキビ)を取りだして,台湾語で,何か頻りに問いかける.ガイドの「ツウさん」が,薄笑いをして無視しているので,われわれもそのまま通り過ぎる. 
 再び,バンに乗り込む.市内を数分,西に向かう.湖面に「春秋閣」が聳える公園についた.
 入口の広場には数件の売店が並んでいて,やや雑然とした雰囲気である.
 ガイドの「ツウさん」は,一軒の露天で,見慣れない缶ジュースを買ってきた.
 「暑いでしょう.冷たいのをドウゾ」
と言いながら,全員に配った.
 香ばしい香りがして,ほのかに甘い冷たいジュースは,大変,美味しい.初めて経験する味だ.「冬瓜ジュース」というのだそうだ.缶の印刷を見ると「47・・・・・」というバーコードが見える.なるほど,台湾のコードは「47」か.日本が「49」だから,台湾は二つ前だ.
 ジュースの成分は冬瓜,特砂,水・・・と書いてある.「特砂」が何だか分からないが,多分,砂糖だろうと納まりの良い結論にしておく.
 道を隔てた鬱蒼とした緑陰の下に,折り畳み椅子が50~60脚,置かれている.そこでかなりの人数の年輩者が集まって,麻雀をしたり,雑談したりで,思い思いの時間を過ごしている.「ツウさん」によれば,これらの人たちは,年金暮らしの退役軍人だとのこと.
 「かれら,掛け麻雀盛んにやっています.でも,小さな額ですから,警察も大目に見ていますよ」
と大らかに物騒なことを言っている.勿論,真偽のほどは分からない.
 この公園は池を中心に出来ている.池の中に七重の塔が2基,並んで立っている.2階までは赤い柱が添えてある.二つの塔を巡る葛(ツヅラ)折の回廊がある.向かって左側の塔が入口になっていて,青い色の派手な亀が大きな口を開けている.その口が入口である.
 中にはいると,折れ曲がった階段がある.その曲がり角で,老婆が何か大きな声を出している.そこを通り過ぎようとすると,
 「仏様に賽銭を上げなさい」
といきなり日本語で捲し立てられた.いきなりの日本語に「ぎょっ」としたが,その時は,賽銭箱とおぼしきところを通り過ぎてしまっていた.数メートルの橋を渡ると,隣の塔の中に入った.そこには祭壇が設けてあった.
 出口は虎の口である.出口に続く葛折のところで,ガイドの「ツウさん」が,だれのカメラを受け取って,
 「ここから写真を撮ると,とても良く写りますよ」
といいながら,シャッターを押す.全員が型どおりに写真を撮る.

■ホテルにチェックイン
 私は,明後日のISSM国際大会の会場となる中山大学が何処にあるのか,また,宿泊場所のホテルと,どの程度離れているのか,アクセスの方法は何がよいのかなんていうことが気になる.
 ガイドに無理を言って,中山大学の門の前まで寄り道をして貰った.
 16時過ぎに,無事,ホテルに到着した.
 このホテル.さすが「五つ星」だけあって随分と豪勢である.
                                                 (つづく)

「台湾訪問記」の前回の記事
http://blog.goo.ne.jp/flower-hill_2005/e/760126bc7a67e265d5425eff28ceed3c
「台湾訪問記」の次回の記事
http://blog.goo.ne.jp/flower-hill_2005/e/5383522b6219146c79dc27de7f2448c6 

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[編集後記]

2012年3月4日(日)

 昨日,雪の中,大倉尾根を登り,尊仏山荘に宿泊した.これから下山する.
 塔ノ岳登頂の様子は,明日または明後日,ブログに掲載する予定である.



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