80ばあちゃんの戯言(2)

聞いてほしくて(つづき)

私の人生(26)

2016-11-03 18:22:21 | 最近の出来事

小学校4年生の秋、とても大きな台風が来て、その晩父は

家に帰ってきませんでした。

私達が心配していると、翌朝早く帰ってきた父は、上大岡と

屏風ヶ浦の間のトンネルの中に京浜急行の電車が避難して

トンネルの中で長い時間を過ごしたといっていたのです。



それからしばらくして、父と一緒に京浜急行の電車で出かけ

たことがありましたが、その時、若い運転手さんが、私達の

乗っていた車輌に乗って来られて、

“先生、この間は大変お世話になりました。とても助かり

ました。“と深々とお辞儀をされたのです。

父はコロンビアレコードに勤めるサラリーマンで先生では

ないのに、何で、父のことを先生と呼んだのかと不信に思い

“なんで、お父さんのことを先生っていわれたのかしら?”

と父に尋ねましたら、父は

“この前台風の時に、トンネルの中に、電車が避難した時

の車掌さんが、トンネルから出て行って線路を調べたりして

大変だったんだ。

それでずぶ濡れになって震えておられたので、私の衣類を

貸してあげたんだけど、その時に、わたしが教育心理学だ

とか子供に聞かせる良い話365話、とか三冊ばかり、

教育に関する本を持っていたので、勝手に小学校の先生だと

決めているようなんだ“と、さもおかしそうな顔で言いました。



何をどのようにお貸ししたのか父は具体的なことは何も言い

ませんでしたが、父は本当に誰にでも優しい人でした。