企業が社員向けの売店として設置しているコンビニエンスストアで、障害のある人が従業員として活躍するケースが増えてきた。利用者が限られている店舗で、安心感のある中で働きがいを見いだしてもらいつつ、企業側も障害者の法定雇用率を達成できる。多様性を受け入れるダイバーシティ&インクルージョン(D&I)の浸透にもつながっているようだ。 「当店は、耳が聞こえにくい社員が働いています」。日本生命保険本店東館(大阪市中央区)にある社員用のコンビニ「セブン―イレブン」のレジ前には、こう掲示されている。 同店は令和4年5月、コンビニ大手「セブン―イレブン・ジャパン」(東京)とフランチャイズ契約し、オープン。従業員5人は聴覚障害などがあり、障害者の雇用促進・安定を図るために設立された日本生命の特例子会社、ニッセイ・ニュークリエーションに所属している。 店内の品ぞろえや内装は一般的なコンビニとほぼ同じだが、手の動きで意思を伝える「サイニングストア」の形式を導入していて、従業員は手話やメニュー表の指さしなどで接客する。お金の数え間違いが精神的な負担にならないようキャッシュレスとした。従業員の30代女性は「お客さんが手話を覚えて『ありがとう』と伝えてくれることも増えてきて、いいなと思っています」と話し、やりがいを感じているという。 一方、明治安田生命保険本社(東京都千代田区)のコンビニでも、同社の特例子会社の障害のある人6人がスタッフとして商品の陳列や補充、レジなどをこなす。仕事をサポートする専属のトレーナーも一緒に働き、体調管理に注意を払っている。スタッフは「セルフケアシート」に体調が悪くなる予兆の有無や、睡眠の状況などを記入して、トレーナーがチェック。何か変化があれば面談を行ったり、バックヤードでの勤務に交代したりといった対応を取っている。 明治安田生命の特例子会社、明治安田ビジネスプラスの常見(つねみ)晃業務部長は「外部の人の利用がないコンビニなので、障害者が安心して働ける。障害のない社員にも、一緒に会社運営をしている意識を持ってもらいたい」と話す。
障害者雇用促進法は、国や自治体、民間企業に一定割合以上、障害者を雇用するよう定めている。従業員43・5人以上(短時間労働者は0・5人と換算)の民間企業は、従業員の2・3%以上の障害者を雇う義務がある。違反した場合、納付金徴収や企業名公表の対象となる。 帝国データバンク大阪支社の昌木裕司情報部長は「法律で障害者雇用率を達成することを求められているのに加え、持続可能な開発目標(SDGs)の観点からも、企業が障害者を雇用するインセンティブ(動機付け)は今後ますます強まる」と指摘。すでに、障害者に特化した人材紹介サービス事業などの動きも活発化しているとした。(井上浩平)