「日本は中国より邪悪だ!」…アメリカ鉄鋼大手がUSスチール買収問題で日本批判 日本製鉄・橋本英二CEOに「車や家を奪う」と挑発
アメリカで13日、クリーブランド・クリフス社がUSスチール買収を計画し、日本製鉄との対立がさらに泥沼化している。
クリーブランド・クリフス社のCEOは、「日本は中国より邪悪だ」と述べ、日本批判を展開した。
トランプ政権へ移行する中、今後の行方が注目される。
「何も学んでいない!」買収めぐる過激発言
日本製鉄のライバル会社が、USスチールの買収を計画しているとアメリカメディアが報じた。
CNBCは13日、鉄鋼大手「クリーブランド・クリフス」が、別の鉄鋼メーカーと組んでUSスチールの買収に動いていると報じた。
クリーブランド・クリフス社のゴンサルベスCEOは会見で、買収の可能性を否定しなかったものの、「この場で戦略を明らかにはしない」と述べ、詳細は明らかにしなかった。
一方で、トランプ次期大統領に近いとされるゴンサルベスCEOは「日本は中国より邪悪だ」と述べ、日本批判を展開した。
これに対し、日本製鉄は「CEOは偏った固定観念に固執し続けていると認識している」などとするコメントを発表している。
誹謗中傷や虚偽の報告も…対立は泥沼化
ここからは、フジテレビ・立石修解説委員室長が解説する。
宮司愛海キャスター: ーーライバル社の出現ということで、とても対立しているという状況ですね。
フジテレビ・立石修解説委員室長:
こじれてきましたよね。クリーブランド・クリフスもアメリカの鉄鋼大手で、もともとUSスチールの買収に意欲を示していました。日本製鉄と争ってきましたが、競り負けたという状況です。
ところが、バイデン大統領が日本製鉄側の買収を阻止したため、クリーブランド・クリフスが息を吹き返した状況にあります。日本製鉄の橋本英二CEOはバイデン大統領も提訴していますが、クリーブランド・クリフスのゴンサルベスCEOが日本製鉄側の買収を阻止するために、日鉄の誹謗(ひぼう)中傷や虚偽の報告など妨害行為を行ったとして、両者の対立が泥沼化しています。
宮司キャスター:
こうしたことが背景にあって、会見で激しく日本を批判したということです。中国にも、日本がいろいろなことを教えてきたというふうに会見で述べています。
クリーブランド・クリフス社 ゴンサルベスCEO:
日本は邪悪です。日本は中国に、鉄鋼関連も含めて多くのことを教えた。われわれはアメリカ合衆国だ!日本は注意しろ!日本は己を分かっていない。1945年以来、何も学んでいない!アメリカがどれほど善良で、慈悲深いか学んでいない。
フジテレビ・立石修解説委員室長:
日本は邪悪なので、日本企業がアメリカの製鉄業を買収するのは安全保障の懸念があるというふうにゴンサルベスさんは主張しています。会見では、日本人自体が好きであるとか友達だとか話はしているんですが、企業や政府は別であるという言い分です。
橋本CEOに対しても、自分のことをマフィア呼ばわりしているが、もし証明できなければ車や家も奪ってやるなどと、非常に過激な挑発をしています。
宮司キャスター: ーー恐喝めいたものも感じますが、ここまでして買収にこだわるゴンサルベス氏の狙いというのはどういうところにあるんですか?
フジテレビ・立石修解説委員室長:
世界の鉄鋼業の生産量ランキングを見てみます。日本製鉄は世界第4位ですが、クリーブランド・クリフス社は22位。24位のUSスチールより上ですが、もしUSスチールが日本製鉄と一緒になれば、このグループは3位になって、あっという間に差をつけられる。それを避けたいという思惑もあるのだと考えられます。
宮司キャスター: ーー今後、買収というのはどうなっていきそうですか?
解説委員室長・立石修さん:
アメリカ国内での上位企業が一緒になるということは、独占禁止法に抵触するおそれがあって、今何か抜け道を探しているようなんですが、そもそも資金力も、クリーブランド・クリフス社は日本製鉄よりも劣ります。
そういう中で、地元の自治体やアメリカの有権者からも、日本製鉄による買収を支持する声はいまだに根強いです。ただ、今後トランプ時代のアメリカという中では、経済合理性を超えた恣意(しい)的な判断が下される可能性は非常に強いと思います。
宮司キャスター:
日本製鉄が一歩も引かない姿勢をとってはいますが、実はアメリカ政府が、日本製鉄による買収放棄の期限を、当初の30日以内から6月まで延期しています。
スペシャルキャスター・山口真由さん:
アメリカ経済を傷つける判断だと思います。日本製鉄の非常に合理的な判断を、バイデン大統領の不合理な、かつライバル社のいわれのない罵詈(ばり)雑言で、アメリカに向かう資金というのは、この政治的なゆがみの影響を受けるんじゃないでしょうか。
6月まで、まだいろいろと展開があるとみられる。
FNNプライムオンライン
「中国より悪」米鉄鋼CEO〝大暴言〟日本は「1945年以来、学んでいない」USスチール買収に割り込み 無策の石破政権、国益損ねる恐れ
日本製鉄によるUSスチールの買収計画に、米鉄鋼2位のクリーブランド・クリフスが割り込んできた。同社のローレンソ・ゴンカルベス最高経営責任者(CEO)は米時間13日の記者会見で「日本は中国より悪だ」「1945年以来、学んでいない」など理解不能の暴言を繰り返した。日鉄に劣る買収条件を提示して脱落した経緯がある同社だが、ドナルド・トランプ次期米大統領の歓心を買うことで買収を成功させたい狙いもうかがえる。ゴンカルベス氏はさらに、買収禁止を命じたジョー・バイデン大統領に「懸念」を伝えた石破茂首相に対しても「同じ要求をトランプ氏に繰り返してもらいたい」と挑発した。買収計画は政治問題の色を強めており、石破政権が無策のままでは日本の国益を損ね、日米関係の悪化を招きかねない。
ゴンカルベス氏は記者会見で、「中国は悪い。中国は邪悪だ。中国は恐ろしい」と述べつつ、「しかし日本はもっと悪い。日本は中国に対してダンピング(不当廉売)や過剰生産の手法を教えた」と言及した。
日鉄が中国国有の宝武鋼鉄集団の子会社、宝山鋼鉄と合弁を組んでいたことを批判したものだ。2024年に合弁を解消したが、中国からの安価な鋼材が米国の鉄鋼業を衰退させたと強調する狙いだ。
ゴンカルベス氏は第二次世界大戦を引き合いに「世界が平和になるにはわれわれの血を吸うのをやめないといけない。1945年以来、われわれの実力を学んでいない。日本は自分が何者であるか理解していないことを自覚すべきだ」と日本批判を展開した。
こうした暴言について、経済安全保障アナリストの平井宏治氏は「言いすぎで、不愉快な面もある。ダンピングも中国の国家資本主義の中で行われ、日本が教えたことではないので事実誤認だ。一方で、技術に関しては、日鉄は宝武鋼鉄と協力してきた背景もあり、日本は痛いところを突かれている」と指摘する。
前駐オーストラリア大使で外交評論家の山上信吾氏は「1980年代の日米貿易摩擦の時代に先祖返りしたのかとショックと憤りを覚えた。『日本は中国よりも悪い』というのは言語道断だ。日本は同盟国で中国は競争相手という区別もない。時代錯誤と偏見に満ちている。日本は今回の発言を看過せず、猛烈に反応しなければならない」と話す。
ゴンカルベス氏はブラジル出身で、米国に移住し、鉄鋼・鉱業関連企業の経営者などを務めた。2014年にクリーブランド・クリフスのCEOに就任後、国内企業の買収を繰り返して成長させた。米国鉄鋼協会の会長も務める。
クリフスは23年にはUSスチールに対し、総額70億ドル(約1兆1000億円)余りでの買収を提案したが、同社は141億ドルを提示した日鉄を相手に選んだ経緯がある。
日鉄は違法な買収妨害工作があったとして、今年に入ってゴンカルベス氏らを提訴している。
ゴンカルベス氏は会見で「(USスチールを)買収したい。計画がある」と強調した。米CNBCは13日、クリフスが電炉大手ニューコアと提携して、クリフスが現金でUSスチールを買収後、USスチール傘下の電炉会社をニューコアに売却する計画だと報じた。ただ、日鉄はUSスチール株を1株当たり55ドルで取得する計画だが、クリフスは30ドル台後半で買い取る方針で、日鉄の提示額を下回る。
zakzak