欧州、自主防衛強化への「覚醒」待ったなし 米露主導の和平封じの思惑にじむ
【ロンドン=黒瀬悦成】スターマー英首相は2日、ロシアに侵略されたウクライナに「有志国連合」による平和維持部隊の派遣構想を打ち出すなど、ロシアの脅威からウクライナと欧州を防衛する取り組みの強化を訴えた。トランプ米大統領が首脳会談の決裂を機にウクライナのゼレンスキー大統領を拒絶する姿勢を強める中、ロシアへの本格的な対抗に向けた欧州の自主防衛への「覚醒」は待ったなしの状況を迎えた。
「今は協議を重ねている場合ではない。行動し、立ち上がるときだ」
スターマー氏は、ロンドンで開かれたウクライナ和平をめぐる欧州やカナダの首脳らとの会合後の記者会見で、参加各国がウクライナでの「公正で恒久的な平和」の実現に向けて各国が尽力するよう訴えた。
会合に参加した欧州委員会のフォンデアライエン委員長も記者団に対し、ウクライナが他国の侵略に対抗できるよう、軍事支援などを通じて「鋼鉄製のハリネズミ」に変身させなくてはならないと指摘した。
フォンデアライエン氏はまた、ロシアの脅威をにらんだ欧州の安全保障には「欧州の再軍備」が必要だと強調。欧州委員会はそのための包括計画案を今月6日に公表するとしている。
欧州諸国は、米露がウクライナ抜きで和平を結び、同国と欧州全域の安全がロシアから脅かされる事態を強く警戒している。
こうした懸念を反映し、スターマー氏が発表した会合での合意事項には「有志国連合の結成」「ウクライナへの戦時支援の継続と対露経済圧力の強化」に加え、「主権と安全が確保された恒久平和とウクライナの和平交渉への参加」「ロシアの再侵略阻止」-の計4項目が盛り込まれた。
一方、イタリアからの報道によると、同国のメローニ首相は平和維持部隊の派遣に疑問を呈し、「イタリアは検討していない」と述べた。ウクライナと国境を接するポーランドでも派遣反対の世論が根強いとされ、部隊派遣の是非には各国間で温度差が目立つ。
また、米軍事専門家によれば、欧州が平和維持部隊を派遣したとしても、スターマー氏が指摘する通り、航空支援や防空支援、情報提供といった米国の「後方援護」は欠かせない。
欧州連合(EU)や北大西洋条約機構(NATO)が唱える防衛産業基盤の整備を通じた軍事力の強化には10年単位の時間がかかるとされ、欧州の安全保障環境の安定のためにも米国の長期的関与は必要だ。
フォンデアライエン氏はこの日、記者団を通じてトランプ氏に「私たちは、民主主義や法の支配といった原則を守るために一緒に戦う用意がある。将来の戦争を防ぐのは私たち共通の利益のはずだ」と欧州関与の維持を呼びかけた。
産経新聞
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