まさに、「平和を噛みしめる」である。
杜の都の宮町の端っこで、上杉近くにある、こぢんまりとした店。
地球瓶やガラス棚が並び、その中には煎餅がいっぱいだ。
「小萩堂」である。
震災前から知る店で、震災後に大丈夫かと寄ってみた。
店は以前のままでほっとした。
連れ合いは、ここの「いか煎餅」が気に入っていた。
私にとっては「いか煎餅」というと、岩手の宮古が思い浮かぶが、確かに、小萩堂の「いか煎餅」も美味いのだ。
だが、小萩堂の煎餅と言えば、焼き印も売りである。
仙台城に味噌樽や、七夕に萩といった、歴史や風物の絵柄が素敵だ。
風流な焼き印のせんべいが並ぶ中、一風変わった文字を刻むものがあった。
「九条せんべい」である。
仙台も、空襲で焼け野原になった。
堂々たる大手門も、軒を並べた店も住まいも、そして逃げ惑う人々をも火焔は襲い、痛ましい有様が広がった。
これを目の当たりにし、乗り越えた人々は、移り変わる時代の波にも、決して再びこの惨禍を繰り返さぬようにと願うのだ。
そして、戦禍を潜り抜けた店主の気骨が、せんべいに刻まれた。
世界へ、平和憲法を広めようと。
今日は文化の日。
自由と平和を愛し、文化をすすめる日である。(内閣府記載 「国民の祝日に関する法律」)
杜の都の九条せんべいを思い出して、関東の地でも東北に続く青空を仰いだ。