胃生検の小部屋 Cottage for Gastric Biopsy

胃生検からはじまる消化管病理の美しい世界

「似て非なるもの」、腫瘍病理学の基本、腸型腺腫を用いて

2008-10-24 | 胃腺腫
 いつもオタクな症例ばかりアップしていますが、今回は初級者向け病理総論です。「腫瘍細胞・組織は発生母地の形態・機能を模倣する」というのが腫瘍病理組織学の基本のひとつです。また、病理や画像で病気を診断する際、病変と非病変の比較ということが重要です。腫瘍病理診断では病変周囲の正常組織だけでなく、炎症、再生、萎縮、過形成、化生などとの関連に注目して、比較しならがみることが重要です。
 さて、これは胃の管状腺腫(腸型)です。またの名を小腸型低異型度腺腫といいます。伝統的に異型上皮(ATP)とも言われてきたやつです。
 クリックしてください。写真の右側の腺管は完全型(小腸型)腸上皮化生です。吸収上皮と杯細胞が明瞭です。左側に腫瘍腺管があります。腺管の全体の形は右側の腸上皮化生とそっくりです。構成細胞も杯細胞型細胞と吸収上皮型細胞です。この部分ではパネート細胞型の細胞はみられません。
 ただ、腫瘍の方では、杯細胞型細胞の粘液が小型であり、細胞密度が高くなっており、核も正常より大きくなっています。腸型腺腫ではこのように核が少し細長く、細胞の縦軸方向に伸びるのが特徴ですが、基底膜側によく揃っています。
 
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3 コメント

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質問です (TENDOH)
2010-06-03 00:04:19
最近同じ胃袋に2つの腺腫がありました.1つは周囲が腸上皮化生で,もう一つの周囲は腺窩上皮過形成です.前者は立ち上がりのしっかりした腫瘍でCDX2+,MUC2+,MUC5AC-,TFF1-で通常のATPでした.後者は立ち上がりが腺窩上皮過形成のためなだらかで,途中から腺腫になっていて,中心部がCDX2+,MUC2-,MUC5AC+,TFF1-でした.後者の組織発生は腺窩上皮過形成かと考えていろいろ検索しましたが,腺窩上皮過形成から腺腫(腸型)が発生するという報告はないようです.腺腫の初期病変・組織発生について教えてください.
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腺腫(腸型、胃型) (ドクトル・クッシー)
2010-06-14 21:54:32
TENDOH様。ご来室ありがとうございます。話せば長くなるので少々時間を下さい。ただ、「腫瘍細胞・組織は発生母地の形態・機能を模倣する」というのが腫瘍病理組織学の基本ですが、胃固有上皮から腸上皮化生が出るように、腺窩上皮過形成や幽門腺腺腫(胃型腺腫)といったほぼ完全な胃型病変からも腸型病変は出現すると思っています。欧米の先生方は腸上皮化生はprecancerousと信じていますが、必ずしもそうではなく、paracancerousだという立場もあろうかと愚考しています。
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腺窩上皮型胃癌 (みみか)
2013-12-30 23:33:28
腺窩上皮型胃癌について教えてください。
1年前にポリープの結果でした。
その1年後癌のような形になっているので検査に出すと
腺窩上皮で癌でないと言われました。
その1週間後早期がんと内視鏡で言われ生検で異常なしです。
なかなか見つからなく苦戦しています。
腺窩上皮の癌はどのようにしたらひっかかるのでしょうか?
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