満月と黒猫日記

わたくし黒猫ブランカのデカダン酔いしれた暮らしぶりのレポートです。白い壁に「墜天使」って書いたり書かなかったり。

『ラーマーヤナ1 蒼の王子』

2006-09-10 15:04:36 | 

小説の感想です。

『ラーマーヤナ1 蒼の皇子』(アショーカ・K・バンカー著、大嶋豊訳 ポプラ社)

コーサラ国の第一皇子、ラーマチャンドラ(=ラーマ)は、王都アヨーディヤーが羅刹の大群に襲われて無残にも陥落する夢を繰り返し見ていた。ただの夢だと思うにはあまりにもリアルな映像に、ラーマは心の奥で不安を感じていた。
そんな中、都をあげて祝われるホーリー(祭)の日、伝説の梵仙ヴィシュワーミトラが瞑想中の深い森を抜けて都に現れる。実はこの梵仙は羅刹が化けた偽者だったが、姿を変えて都に来ていた本物のヴィシュワーミトラに見破られ、退けられる。
ヴィシュワーミトラは大王ダシャラタに、かつて大王自身が打ち破った羅刹王ラーヴァナが、もうすぐ羅刹の大群を率いて都を襲うと進言。それを止めたければ第一皇子ラーマを自分と共に旅に出るために差し出せと要求する。
梵仙ヴィシュワーミトラとラーマ、その弟のラクシュマナは、羅刹の侵攻を食い止めるために旅に出るが・・・?

というようなお話。

インドの二大叙事詩のひとつ『ラーマーヤナ』を現代語でわかりやすく語りなおしたものらしいです。
わたしのラーマーヤナの知識は、『ラーマーヤナ ラーマ王子伝説』というアニメ映画のみ。渋谷にモーニングショー上映を観に行ったら観客が10人くらいしかいなくて驚いたっけ・・・(微笑)。

それはさておき、ラーマーヤナは確かちくま文庫とかそういう学術系の出版社から本として出ていたと思いますが、この手の古典の文体は非常に読みづらく、なかなか手が出ないものです。
というわけで、この21世紀版語りなおしは普通の小説風なので、ありがたい限りです。

でも改めて読んでみるとこれSFだね。章タイトルも有名SF作品からもらってるし(「月は無慈悲な夜の女王」とか「幼年期の終わり」とか)。
敵の羅刹という種族が、身長3m超とか十一面(顔が十一個)とかなんかもうエイリアン状態です。まあ、ヒンドゥー神話からしてSFっぽいといえばSFっぽいですが。そして対する人間側、ラーマ皇子たちも十分超人じみている。梵仙ヴィシュワーミトラなんか数千年生きている設定ですし、この人からソーマ?を授かったラーマ皇子はドラゴンボールに出ても遜色ないよぐらいの勢いの強さを発揮(笑)。すごいです。

まだ物語は始まったばかりで、ラーマ皇子の旅もこれからが面白くなると思います。主役はラーマ皇子ですが、その親、大王ダシャラタと第一王妃カウサリヤーの不器用なすれ違いと和解、第二王妃カイケーイーとその乳母の腹黒さ(笑)と策略、無邪気な第三王妃スミトラー、それぞれ母親の違う4人の皇子たちのやたら爽やかな仲の良さなど、人間模様も面白い。
続きが待たれます。

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『出口のない海』

2006-09-10 03:53:12 | 映画

皆様ごきげんよう。今日は遅くなりましたが先週試写会で観た『出口のない海』の感想を。


明治大学で野球部投手をつとめる並木(市川海老蔵)。戦時中の不穏な時代にあり、オリンピックは中止され、学生達は皆閉塞感を感じていた。そんな中、行きつけの喫茶店で、同輩で陸上部の北(伊勢谷友介)は自ら志願して軍属になると発言する。そんな行動を見た並木も考えた末自ら志願することを決める。召集を受ける前に自ら志願すれば、陸軍か海軍かを選べるのだ。
海軍を選んだ並木が予備兵として訓練を受ける間にも戦況は悪化し、日本は負け始めていた。やがて、戦況を打破するために、出口のないひとり乗りの魚雷「回天」が開発された。回天は一度発進したら後戻りはできず、そのまま敵艦に激突して玉砕することを使命としていた。志願するか否かを問われた並木は、悩んだ末に志願する。厳しい訓練を経て、並木は出撃のため潜水艦に乗船するが・・・?

というようなお話。

わたしは恥ずかしながら今まで「回天」というものを知りませんでした。
回天での出撃前に自分の機が破損してしまった人が「俺の回天がぁ・・・俺の・・・」と号泣するんですが、途中までその意味がわかりませんでした。死の覚悟をしてやってきたのに、破損してしまった以上出撃できないので、その人は仲間を見送るしかないわけです。精神的にすごく厳しい状況です。
同じように玉砕部隊として神風特攻隊は有名ですが、回天は海中という性質上、出撃前に駄目になる、ということも多かったようです。玉砕という方法を取らなければならないほど負けていた戦況、日本は負ける、と薄々わかっていながら出撃を待つ心境。虚しい限りです。主人公の最期も本当にやりきれない。

タイトルからして悲しげな映画ですが、61年前の日本はこんなことをしていたのだと知るにはいい作品だと思います。

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