小説の感想です。
『ラーマーヤナ1 蒼の皇子』(アショーカ・K・バンカー著、大嶋豊訳 ポプラ社)
コーサラ国の第一皇子、ラーマチャンドラ(=ラーマ)は、王都アヨーディヤーが羅刹の大群に襲われて無残にも陥落する夢を繰り返し見ていた。ただの夢だと思うにはあまりにもリアルな映像に、ラーマは心の奥で不安を感じていた。
そんな中、都をあげて祝われるホーリー(祭)の日、伝説の梵仙ヴィシュワーミトラが瞑想中の深い森を抜けて都に現れる。実はこの梵仙は羅刹が化けた偽者だったが、姿を変えて都に来ていた本物のヴィシュワーミトラに見破られ、退けられる。
ヴィシュワーミトラは大王ダシャラタに、かつて大王自身が打ち破った羅刹王ラーヴァナが、もうすぐ羅刹の大群を率いて都を襲うと進言。それを止めたければ第一皇子ラーマを自分と共に旅に出るために差し出せと要求する。
梵仙ヴィシュワーミトラとラーマ、その弟のラクシュマナは、羅刹の侵攻を食い止めるために旅に出るが・・・?
というようなお話。
インドの二大叙事詩のひとつ『ラーマーヤナ』を現代語でわかりやすく語りなおしたものらしいです。
わたしのラーマーヤナの知識は、『ラーマーヤナ ラーマ王子伝説』というアニメ映画のみ。渋谷にモーニングショー上映を観に行ったら観客が10人くらいしかいなくて驚いたっけ・・・(微笑)。
それはさておき、ラーマーヤナは確かちくま文庫とかそういう学術系の出版社から本として出ていたと思いますが、この手の古典の文体は非常に読みづらく、なかなか手が出ないものです。
というわけで、この21世紀版語りなおしは普通の小説風なので、ありがたい限りです。
でも改めて読んでみるとこれSFだね。章タイトルも有名SF作品からもらってるし(「月は無慈悲な夜の女王」とか「幼年期の終わり」とか)。
敵の羅刹という種族が、身長3m超とか十一面(顔が十一個)とかなんかもうエイリアン状態です。まあ、ヒンドゥー神話からしてSFっぽいといえばSFっぽいですが。そして対する人間側、ラーマ皇子たちも十分超人じみている。梵仙ヴィシュワーミトラなんか数千年生きている設定ですし、この人からソーマ?を授かったラーマ皇子はドラゴンボールに出ても遜色ないよぐらいの勢いの強さを発揮(笑)。すごいです。
まだ物語は始まったばかりで、ラーマ皇子の旅もこれからが面白くなると思います。主役はラーマ皇子ですが、その親、大王ダシャラタと第一王妃カウサリヤーの不器用なすれ違いと和解、第二王妃カイケーイーとその乳母の腹黒さ(笑)と策略、無邪気な第三王妃スミトラー、それぞれ母親の違う4人の皇子たちのやたら爽やかな仲の良さなど、人間模様も面白い。
続きが待たれます。