本の感想です。今回は児童文学。
『かかしと召し使い』(フィリップ・ブルマン著、金原瑞人訳、理論社)
緑なすうつくしい土地、スプリング谷の所有者、パンドルフォじいさんは、自分がもう長くないことを悟り、遺言状を書くと、新しく作ったかかしの中にそれを詰め、自分の畑に立てる。
「礼儀正しく勇ましく、誇りを持て。思いやりを忘れるな。せいいっぱい頑張れ」とじいさんに声をかけられたかかしだったが、ほどなく通りかかった農夫に盗まれ、別の畑で鳥を追い払う羽目になってしまう。しかしある日、稲妻がかかしを直撃し、何の因果かかかしは人格を得る。動き出したかかしの心にあったのは、自分は礼儀正しく勇ましく、ご婦人には優しいスプリング谷の後継者だという内なる確信のみだった。
そのときたまたま雨宿りをしていたみなしごの少年ジャックを召し使いにし、かかしの冒険が始まる!
しかし一方、パンドルフォじいさんの遠縁であり、悪名高いブッファローニ一族の者が、スプリング谷を我が物とするべく、かかしの行方を追い始め・・・?
というようなお話。
『ライラの冒険』シリーズのフィリップ・ブルマン氏の新作というので読んでみたんですが、いやあ面白かったです。かかしの愛すべきお馬鹿さんぶりが楽しくて。人格を得たそのときから、自分は高貴な生まれで勇敢で偉いんだぞというちょっと勘違いな思い込みをしているんですが、お馬鹿さんなので嫌味がない(笑)。もとがかかしなので、穀物を食い荒らす鳥を目の敵にしているんですが、鳥であろうとご婦人には優しい。紳士です(笑)。
もうひとりの主人公といえる召し使いとなる少年ジャックがとても機転のきく子で、かかしひとりだったら絶対切り抜けられない場面をうまくさばきます。ジャックの活躍も素晴らしいのですが、結構公然と「ご主人様は頭は全然だめですから」とか言っちゃうところがいい(笑)。
かかし卿(途中からそう名乗る)がいつも冒険を求めているので、次から次へと一難去ってまた一難、冒険の連続なのです。無人島のシーンではかかしとジャックの絆にちょっとほろりとしました。
ずっとかかしの足跡を辿る悪役ブッファローニ一族とは、最後対決するんですが、そこもまた見もの。街の人のノリもいいです(笑)。
大人でしたら1時間程度で読めてしまう作品ですが、とてもわくわくしながら楽しく読め、しかも最後はこうでなくちゃ、というオチなので、皆さんにおすすめです♪
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