満月と黒猫日記

わたくし黒猫ブランカのデカダン酔いしれた暮らしぶりのレポートです。白い壁に「墜天使」って書いたり書かなかったり。

『不死細胞ヒーラ ヘンリエッタ・ラックスの永遠なる人生』

2012-01-17 02:04:49 | 

皆様ごきげんよう。本格的に昼夜逆転感の出てきた黒猫でございますよ。マジやべえ。でも2:45からナイトライダー観るからまだまだ寝られないけどな。(真顔)

それはさておき、今日は本の感想。

『不死細胞ヒーラ ヘンリエッタ・ラックスの永遠なる人生』(レベッカ・スクルート著、中島章子訳、講談社)

世界で初めて不死化された人類の細胞、HeLa(ヒーラ)。その名で全世界の医療研究施設で利用されている細胞の主は、1951年に子宮頸がんで亡くなったヘンリエッタ・ラックスという黒人女性だった。
ヘンリエッタは自分の細胞が研究目的で採取されたことを知らないまま亡くなり、家族もまたそれを知らなかった。しかしヒーラ細胞を利用して様々な研究成果があがるようになった頃、家族の元にマスコミが押し掛けるようになり・・・?

というような話。
科学ジャンルのルポルタージュです。


筆者が取材を始めた頃には既にヘンリエッタの遺族はマスコミに対する強い警戒心を持っていて、家族の理解を得て取材を進める困難さの記述が内容の半ばを占めていたように思います。読んでるだけで大変そう。
筆者が学生の頃から取材に取り組んでようやく結実した最初の本ということで、医学的知識がなくても丁寧に解説してあるので理解できます。

昔のことで、細胞採取およびその後の利用に関して本人にも家族にも同意を得る必要が法的になかったとはいえ、ここまで医学界に貢献しているのに遺族には1セントの金銭も入らないというのはやはり気の毒。

筆者はものすごく丁寧に取材して、ヘンリエッタの人生をなぞるばかりか、その祖先や子孫の人生をも描き出します。すごい根気。
ヘンリエッタの生きていた時代はまあ半世紀以上前ではあるんですが、大昔というほどでもないのに、その頃は黒人は歴然と差別されていたんだなあと思わせる描写がしばしば。
筆者は白人で、ヘンリエッタの血族は黒人。それだけで遺族の警戒心が増して取材の難易度が高くなり、本当に大変な思いをして世に出した本なのだと思います。

筆者はヘンリエッタの血族、特に次女のデボラに重きを置いて取材していますが、デボラを始め、ラックス家の人々はブルーカラーで、あまり学がないので、ヒーラ細胞について本当に理解できたのは、筆者とかなり親密になり、筆者に丁寧に説明を受けてからのようです。もっと早く誰かが説明してあげるべきだったのに。

考えてみれば個人情報保護が叫ばれ出したのは割と最近のことではあるんですが、それにしたって色々ひどいよなあ。

筆者は本の売上の一部をヘンリエッタの子孫の教育基金に充てるとのこと。
一人でも多くのヘンリエッタの血族が、望んだだけ教育を受けられるよう祈ります。

個人的には年末年始に読んだ本で一番面白かったです。おすすめ。

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