去年は久し振りに手塚治虫氏の作品にふれた。
読んだと書くべきなのだろうが熟読はしていないし、ものによっては完読していない。
ふれたが相応しい。勿論手前の蔵書の中からピックアップしてのことだ。
平成も終わりになる今年は氏も亡くなって30年にもなるのかと思うと考え深い。
かくいう手前は鉄腕アトムが生まれた年に生まれている。この時、すでに氏は第一線を走っていた。
幼少の頃から開く雑誌には必ず掲載されていて慣れ親しんできた世代だが、氏のマニアでもファンでもなかった。
蔵書も数えるほどでしかないし特別入れ込む作品もない。ではなぜ手塚治虫なのだろうか。
「ブラック・ジャック創作秘話〜手塚治虫の仕事場から〜」
この作品に巡り合って、手持ちの作品をもう一度読んでみようと思った。
数々の伝説に満ち溢れた氏であるが、やはりはずせないのが無類の映画好きということだろう。
一年間に三百数十本も観たという執念も今の若い人にはピンとこないかもしれない。
今時ならスマホやタブレットで通勤時なので動画(映画)を一日に一本以上観ることなど当たり前に出来ることだからだ。
そうでなくてもテレビでの上映やドラマなどを含めると以外にも想像以上に一般人は多くの映像を観ていることになる。
しかし氏が驚嘆すべきはあの忙しさの中でのことなのだ。
月に10本の連載をかかえ月産三百枚以上も描き、徹夜もありの境遇での劇場での映画鑑賞。
そう当時は劇場にわざわざ足を運ばなければ映画は観れないのだ。
おそらくは編集者の目を盗み、あるいは時間に限りがあれば途中で観るのをやめて続きはまた違う日に来て観るということもあったのだろう。当然時間に余裕があれば映画館のはしごもしたのだろう。映画は氏にとって主食だったのだ。