Y十字路からK南方面に向かい一番最初の左辻がYOGI市場となる。市場の入口すぐのビル2階に朝日湯があり、急な階段を上りきった右側に番台があり、東京のそれとは違う低いカウンターに風呂屋の娘で同級生の千里ちゃんが高校2年生の姿で番をする。千里ちゃんはピンクのシースルーの上着を羽織り、薄めの生地を通して形のよい乳房と桜色の乳首が見える。すこし戸惑ってしまうが、なあに、こちらは既に中年オヤジ、何食わぬ顔で「大人一人」と同時に15セントか25セントぐらいの小銭を預ける。しばらくぶりに見る千里ちゃんのその顔は、可愛くマン丸メガネポニーテールが愛おしい。
「HACHI君、久しぶりだね。前に来てから45年以上経ってるよ。皆先に来て待ってるよ。後一言言いたいんだけど~一度も告ってくれなかったね。私知っていたんだよ」やはり女は鋭い。中学の入学式で千里ちゃんを見、一目惚れして中学から高校の3年間に(嬉しい事に同じ高校)遊んだ事もあるし、一度部屋に遊びに来た千里ちゃんと二人きりでベットに腰かけ、一緒にピンクフロイドを聞き一瞬の事だったけど淫微な雰囲気になったこともあった。でも手すら触れることなく純愛だったな~と夢見るHACHI公うすら笑いでキモイ。
45年ぶりの脱衣所こんなに狭かったかとうろたえ、あらためて廻りを見れば、板張りの脱衣場に脱ぎ散らされた服と、ガラスに仕切られた入浴場に我が少年時代のガキ大将三味線屋よしはる&みのる兄弟・牛乳屋かつみ・公務員ひであき・床屋まもるの懐かしい姿が湯気の向こうに見える。全員小学から中2の頃のまま。
「HACHI早く来いよ~。みんなで朝一番の大仕事始めるよ」とよしはるが言えば全員湯船に水水を投入開始する。何時もやっていた遊びで「熱いお湯は嫌だみんなで銭湯プールごっこ」の始まり。ぼ~っと見ていた僕は(いつも行動が遅い)「よしはる、それはいけないことじゃないか」と思うのですがついつい面白くなり仲間になり、終いには誰よりも頑張ってしまいます。そばを見るとひであき君やかつみ君も、うひゃうひゃとわらいながら、わらったおかげで力がぬけて水をこぼしたりして、となりの人にかけてしまい「うひゃ~つめたい」とひめいをあげるのがたのしく、さいごは水かけ大会になります。ひと騒ぎした後はつめたいプールでからだを冷やします。
そうして遊んでいると朝風呂を楽しみにしている近所のオジーが何も知らずに湯船に一気に浸かり「アゲー」と叫んだりして、大笑いです。その後は朝日湯のおばさんにこっぴどくしかられます。その後帰るのですが誰もタオルを持っていないので、脱衣所の服を入れる箱の上に上がり、裸で天然乾燥させます。そのとき乾きにくい金玉はよくひっぱって乾かします。
三々五々帰っていきます。あれからだいぶ時間が経ってしまいました。彼らと合わなくなって思い出だけが残りました。今夢見ているHACHI公は懐かしさと寂しさで泣いていますね。同居人が急に笑ったり泣いたりする、就寝中のHACHI公を見て「基地外かもしれん」と思っています。