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〇厳しい姿勢を見せる各国政府
海外の動きは早かった。
セーフガード・ディフェンダーズは11月7日、続報を配信し「米欧など14カ国の政府が問題の施設に対する調査に乗り出した」と伝えた。
オーストリア、カナダ、チリ、チェコ、ドイツ、アイルランド、イタリア、ナイジェリア、ポルトガル、スペイン、スウェーデン、オランダ、英国、米国の対応を紹介している。
たとえば、オランダは、どう動いたか。
ウォプケ・フークストラ副首相兼外相は11月1日、ツイッターで「違法であり、閉鎖するよう命じた。
駐オランダ中国大使には、問題を明確にするよう要求した。
完全に独立した調査をする」と表明した。
外務省報道官は「中国はセンターの活動について、外交チャンネルを通じて一切、我々に報告していなかった。そもそもの出発点から違法だ」と語った。
オーストリアの内務省報道官は「我々は、いかなる状況においても、外国の情報機関や警察が違法な活動をするのを容認しない」と言明した。
カナダ王立騎馬警察は「カナダに住む個人の安全に対する深刻な脅威であり、外国がカナダ国内の個人とコミュニティを脅迫して、危害を加える可能性を認識している」と表明し、調査を始めた。
チリ内務省は閣議の後「警察が調査している」と発表し、チェコ外相もメディアに「調査が始まった」と語った。
ドイツ内務省の報道官は「連邦政府は外国機関による権力行使を容認しない。中国にドイツ国内で行政権を執行する権限はない。
中国は外交関係と領事権に関するウイーン条約の枠内で動かなければならない」と言明した。
アイルランド外務省報道官は「アイルランドにおける、すべての外国政府の活動は国際法と国内法に従わなければならない。
この前提に立って、我々は施設を閉鎖し、活動を停止するよう、中国大使館に通告した」と語った。
もっとも強力に対応しているのは、米国だ。米司法省は10月24日、会見で中国の活動に関連して「2人を逮捕し、13人を告発した」と発表した。
タイミングからみて、米国は報告書の発表前から、捜査を進めていたのは間違いない。
セーフガード・ディフェンダーズは当初、指摘した54拠点のほかに「新たに16拠点が明らかになった」と伝えた。
関係する警察は、福州市と青田県以外にもある可能性が高い。
〇逃亡犯を強制的に連行している可能性
それによれば、中国共産党は2014年以来、「スカイネット」と呼ばれる作戦で、世界120カ国から約1万人の中国人を強制的に帰国させた。スカイネットは、海外に逃げた汚職官僚を摘発する「フォックスハント(狐狩り)」の上位に位置づけられる大掛かりな作戦だ。
中国共産党は作戦遂行のために、国家管理委員会(NSC)という組織を新設した。
国家管理法の第52条は、海外逃亡犯の帰国を実現するための手段について、こう定めている。
〈2つの方法がある。
(1)誘拐。逃亡犯を逮捕し、帰国させるために誘拐という手段を利用する。(2)罠と捕獲。容疑者を最終目的地や公海、国際的領空、または最終目的地と犯人移送協定を結んでいる第3国に誘い出し、そのうえで逮捕、送還する〉
つまり、NSCは誘拐や罠のような策略を弄して、刑事犯容疑者や政治犯らを摘発、強制連行する組織である。
中国にいる家族や仕事の関係者を脅したり、容疑者に直接、海外で接触して帰国を強要する。
あるいは容疑者を外国で拘束、誘拐するケースもある、という。
〇日本から帰国を強要されたらしきケースも
こちらの報告書は、非自主的な帰国を強要された多くのケースを紹介している。
日本から帰国を余儀なくされ、その後、新疆ウイグル自治区の強制収容所で死亡が確認されたミヒライ・エリキン氏の場合は、どうだったか。
ウイグル人弾圧犠牲者のデータベースによれば、彼女は1990年2月23日に同自治区のカシュガルで生まれた。
上海交通大学で植物に関する生物工学を学んで卒業後、東京大学の大学院で修士号を取得。東京で教師として働く傍ら、ウイグルの子どもたちにウイグル語を教えていた。
彼女はカシュガルにいる家族に会うために、2019年6月17日に帰国、夏に新疆に帰った。
だが、その時点で父親と叔母は強制収容所に拘束されていたため、家族には会えなかった。
RFA(ラジオ・フリー・アジア)は2021年5月25日、彼女は2020年11月、カシュガルにある町の収容所で「尋問の結果」死亡した、と報じた。
データベースによれば「担当官が彼女は死ぬ前に拘束され、尋問されていたことを確認している」という。
ただし、中国側は「彼女は治療を受けるために帰国し、20年12月19日にカシュガルの病院で極度の貧血による臓器不全で死亡した」と説明している。
彼女の叔父は、ウイグルの言語活動家で詩人のアブドゥウェリ・アユップ氏だ。
エリキン氏をはじめ、彼の兄弟姉妹3人が当局に拘束された。
アユップ氏自身も2013年に逮捕され、15カ月投獄された後、釈放され海外に脱出した。
同氏は「自分の活動のために、エリキン氏らが拘束された」とみている。
彼女のケースで、東京の中国警察施設がどう関与していたか、については分からない。
ただ、彼女は帰国前、母親から叔父(アユップ氏)の活動を止めるか、帰国するよう強く促すメッセージを受け取っていた、という。これは中国の常套手段だ。
つまり、この施設は日本の国内法に違反し、国家主権を侵害しているだけでなく、中国による「人権弾圧の海外拠点」になっている疑いがきわめて濃い。
政府が動かず事実上、黙認しているのであれば、中国共産党の人権弾圧に手を貸すのと同じではないか。
主要マスコミの動きも鈍い。
とくに日頃、人権擁護を声高に叫ぶ左派メディアが沈黙を守っているのは、彼らのダブルスタンダードを物語っている。
私には、政府とメディアが手を組んで「臭いものにフタ」をしようとしているかのように見える。
11月16日公開の「長谷川幸洋と高橋洋一のNEWSチャンネル」-34分ーは、私の1人語りで中国警察問題を取り上げました。
2重スパイを駆使した米連邦捜査局(FBI)の中国に対する捜査についても、語りました。
17日には、高橋さんの著書「『消費増税』は嘘ばかり」ー1時間ーを題材に、高橋さんに消費税問題を語っていただきました。
18日には、中国警察問題の続報を公開します。
それから!16日には、新たに立ち上がった「闇鍋ジャーナル(仮)」-44分ー
に出演しました。これは「虎ノ門ニュース」の事実上の後継番組です。
いずれも、ぜひご覧ください。