横浜のみなとみらいで社会福祉士事務所を営んでいます。
生涯主役人生をまっとうできるよう、エンディングまでに対峙する可能性の高い諸問題について、具体的な問題解決方法とその手順をガイドさせていただいております。
ここでは、老い先へのそなえに係るマル秘&マル得情報を綴っていきます。
まさかは必ずやってくる…。なのに、どうしてそなえないのですか?
百寿グループでは、老人週間に、横浜市内に在住の70歳以上のシニアを対象に、終活(老い先へのそなえ)に係る意識調査を行いました。
eハローページに基づき無作為で電話をかけ、サンプル数が100件となるまで不眠不休で(笑)調査を継続。
ようやく100人分のサンプルが集まり、ホッとしています…。ご協力いただいた方々には、拙著『完全なる終活バイブル』(定価1,000円)を謹呈してね
さて、今回の質問は、「老い先へのそなえをしていますか?」。
そして、回答がYESの場合には、「そなえていることを具体的に教えてください」。NOの場合は、「なぜ、そなえないのですか?」
以上3問です。
結果として、70代女性45名。同男性33名。80代女性16名。同男性6名。全100名にご回答いただくことができました。
で、調査結果です。
YES ・・・ 32名
NO ・・・ 54名
どちらとも言えない ・・・14名
*「家族と話している」、「あれやこれや考えている」、「わからない」
YES ⇒ 具体的な備えの中身 *複数回答あり
① 葬儀の予約や、墓地・霊園の確保を終えている(19名)
② 身の回りのモノを整理している(14名)
③ 遺言書やエンディングノートを書いている(8名)
④ 介護施設を見学している(3名)
⑤ 全財産を家族に渡して管理してもらっている(2名)
⑥ 後見人をつけている(2名)
NO ⇒ そなえない理由
① すべて家族に任せているから(17名)
② 何をどうしていいのかわからないから(16名)
③ どうにかなると思うから(11名)
④ たいした財産がないから(10名)
⑤ 面倒だから(8名)
以下に補足していきますが、結論を先に述べておきます。
4名の方を除き、誰もそなえていない。
これが結論です。
そして、電話でのやりとりから受けた印象をひとことでまとめるとこうなります
老い先に対する問題意識・当事者意識・危機意識がない…。
具体的に見ていきましょう。
YES(老い先へのそなえをしている)と回答した人であっても、回答とは裏腹な実態が垣間見えてきます。
まず、『葬儀の予約や、墓地・霊園の確保を終えている』と回答した19名のうち、なんと14名がそのことをお子さんに伝えていないのです。
これでは、明日もしものことが起こったら、お子さんは親が葬儀の生前予約をしていたことを知らないまま葬儀の準備をすることになります。
生前にかけたコストは、丸々ドブに捨てたことになります。
葬儀の段取りについてお子さんと共有しているという5名は、かろうじて、老い先へのそなえのごく一部はやっているということができます。
ただ、決して十分ではありません。
なぜなら、老い先へのそなえというのは、エンディングのことだけではないからです。
そこにたどり着くまでのほうがずっと大変なのです。介護のこと、医療のこと、おカネのこと…。ここをすっ飛ばして「お墓と葬儀だけ決めて伝えてありますから」というのは、ちょっと浅すぎです。
つぎに、『遺言書やエンディングノートを書いている』と答えた8名全員が、そのことをお子さんに伝えていません。
たしかに遺言書というのは性格上、死後に開封されるものではありますが、エンディングノートは何の目的で書いているのでしょうか。
死んだ後で家族に見つけてもらって、懐かしんでほしいのでしょうか。
そこに希望する葬儀やら、延命治療に対するスタンスなどが記載されていたとして、本人亡き後にそれを知ったお子さんの気持ちはどうなると思いますか?私には、ちょっと理解できません。
そもそも、例え離れて暮らしていても、親も子も元気なのに、どうして親の想いを共有しないのでしょうか。
わざわざ書面にしたためて、自分が死ぬまで隠しておく必要があるのでしょうか。
直接会話するからこそ、親の考えを子が理解し、サポートしてもらえるはずなのですが…。優先順位がまちがっています。
そして、『後見人をつけている』の2名ですが、終活セミナーで奨められて、認知症対策としてお子さんを任意後見人に設定したとのことでした。
ですが、「本当に認知症になってしまったら、任意後見人を監督する専門職が家庭裁判所から送られてきて、結局、任意後見人であるお子さんたちは、親名義の全財産をいじれなくなるのですよ」と伝えたところ、おふたりとも、「そうなんですかぁ~。そんなこと言われなかったけど…」。いやはや、です。
まあ、断捨離したり、施設見学に出向いたりというのは、やらないよりはいいかもしれません。
でも、唯一、老い先にそえなていると言えるのは、全財産の管理を家族に委ねていると回答した2名だけです。
こうしておけば、親の身に明日何が起こっても、家族は困りませんからね。
遺族にとっては、やはりおカネの問題がもっとも重要なのです。
続いて、NO(そなえていない)と回答した54名です。
『すべて家族に任せているから』(17名)、『何をどうしていいのかわからないから』(16名)、『どうにかなると思うから』(11名)、『たいした財産がないから』(10名)、『面倒だから』(8名)…。
親の責任放棄。思考停止。無責任。能天気。親失格…。
酷い物言いと思われるかもしれませんが、正直、こんな言葉しか浮かんできません。
こういう親の後始末をさせられるお子さんたちは悲惨です。
仕事や家事に忙殺される中、親の尻拭いを全部やらされるわけですからね。
たまったものではありません。
立つ鳥跡を濁さず…。そう書かれた掛け軸でも首からぶら下げてもらわないとダメでしょう。
あとひとつ。
大した財産がない遺族に限って争族に陥るということを添えておきます…。
それから、「どちらとも言えない」と答えた14名については、とくにコメントはありません。
もう終わっています。時すでに遅しの間は否めません。
自分の現状がわかっていないのですからね…。
昨今、親がそなえておかなかったことによって多大な不利益や不便を強いられるお子さんたちが増えています。
今回の調査は、どれくらいの親がそなえていないのかを調べてみようと思い立って実施しました。で、結果がこれです。
「ああ。この人はちゃんとそなえているのだなぁ」と認識できたのは、100名中わずか2名のみ。
厳しい言い方ですが、残りの98名は、このままエンディングを迎えたとしたら、亡くなってからもずっ~と、お子さんたちに言われることになるでしょう。
「ったく、うちの親は何にもそなえておいてくれなかったんだよな~。だから残ったものが厄介な目に遭わなきゃならないんだよ。勘弁してくれよな~」ってね。
どうでしょう。
みなさんは、ご自分が死んだ後、子どもや孫たちにどう言われたいですか?
ネガティブな記憶だけを残して死んでいってもいいのでしょうか?
目が黒いうちに老い先へのそなえをして、それをお子さんたちと共有して、頼むべきことはきちんと頼んでおく。
もちろん、そのために必要なおカネもあわせて渡しておかないとダメですよ。だって、突然倒れてしまったら、おカネを手渡せないのですからね。
そして、成年後見人という赤の他人に、死ぬまで全財産を管理されることになるのですよ。
実の子ではなく、会ったこともない法律家もどきに通帳ごと持っていかれて本望ですか?しかも、死ぬまで報酬や交通費を払い続けながらね。
まさかは突然やってきます。
しかも、まさかは必ずやってきます。
そして…。親のまさかは子のまさか、です。
親世代さいごの役目に、真摯に取り組んでほしいものです。
「うちの親は、ホント、大変だったんだよなぁ…。ったく!」などと末代まで恨みを買うようなことがないようにね。