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西村真里子Official Columnist
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日本IBMのITエンジニアとしてキャリアをスタート。
アドビシステムズのフィールドマーケティングマネージャー従事後、2011年、クリエイティブ企業バスキュールにプロデューサーとして参画。
カンヌライオンズ金賞受賞。2014年株式会社HEART CATCH共同創業。2020年米国ロサンゼルスにHEART CATCH LA共同創業。
テクノロジー&クリエイティブのキャリアを活かし、企業や自治体の新規事業案件の企画に多く携わる。
内閣府日本オープンイノベーション大賞専門委員会委員。
経団連Web3タスクフォースメンバー(2022年)、デジタル庁スピンオフWeb3研究会DAO "Dig DAO" メンバー。
日米のスタートアップに投資しグロース支援、オペレーション支援を実施。Art Thinking Collective(仏パリ / ビジネススクール ESCP)メンバー。
武蔵野美術大学大学院 客員教授。
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世界最大級のテクノロジーの祭典であるCESが、2024年1月9日から、眠らず輝き続けるシン・シティー(罪の都)ラスベガスで華々しく幕を開けた。
新たなランドマークとなった球形ドームシアター『Sphere(スフィア)』が、その輝きを一層際立たせる。
世界各地で紛争の煙がくすぶる一方で、ラスベガスではいつものように華麗なるテクノロジーショーケースが展開され、デモや政治的な動きは影を潜めていた。
CESで有名なスタートアップショーケースエリア『Eureka Park(エウレカパーク)』では今年もウクライナとイスラエルが出展していた。
紛争があろうともテクノロジースタートアップの勢いは止めてはならないというメッセージだろう。
中国はファーウェイ事件以降出展が減ったが、今年は久々Alibabaが出展していたり、数多くのガジェット系サービスを展開する中華系の出展が賑わいを戻していた。
かくして世界150カ国から4,300出展社の出展、135,000人の参加者が集うCES 2024は、今年も盛況のうちに12日幕を閉じた。
さて、今回のCESで最も印象深かったのは「AI」、「サステナビリティ」、「ヒューマンセキュリティー/インクルージョン」の3つのテーマだ。
この3テーマに対して「人間や地球のために営利企業としてできることは何か?」その問いの姿勢に真摯に向き合っていた出展社を紹介していく。
〇AI
まず「AI」。2023年の生成AIブームを背景に今まで以上に多くの企業が生成AIを活用したプロダクトを紹介していた。
CES主催CTAが提供するテックトレンドセッションでも、生成AIの登場のおかげで一般消費者のAIに対するネガティブな印象が薄れてきているという。
「
CTAの消費者AI意識調査(2023年9月)によるとAIに対して恐怖(Scary)や、 悪意ある(Malicious)という印象よりも革新的(Innovative)、未来志向(Futuristic)、賢い(Intelligent)という印象が強くなっている
」
◇サムスンは「AI for ALL」をプレスカンファレンスのスローガンにしていた。
サムスンが今まで推し進めてきたコネクテッドな家電がAI機能を有することにより、デバイス間でコンテンツ体験をシームレスに連動させる。
また、AIによるデバイス制御がエネルギーのピーク時を自動的に回避し、エネルギー料金の節約に貢献する。
サステナビリティーにも貢献するAI、を打ち出していた。
◇アメリカ最大の小売業者ウォルマートは、マイクロソフトと手を組み、AIを駆使した新しいショッピング体験の提供を開始するとCESにて発表した。
ウェブサイトやアプリにAIを統合し、顧客の行動を分析して購入提案を行う仕組みを構築するそうだ。
使用されるAI技術は、ウォルマート独自の技術とマイクロソフトのAzure OpenAIサービスに基づいた、小売業向けの検索機能を組み合わせたものらしい。
ウォルマートの新しい生成AIは、iOSとAndroidのモバイルデバイス、および同社のウェブサイトから利用できるようになり、消費者メリットとしては個別の商品を一つ一つ検索して購入していく代わりに、「誕生日祝い」「クリスマス」などのイベントを自然言語で入力することで、おすすめの商品を探すことができる。
イベント準備にありがちな買い忘れを防いでくれそうで良い。
「
自然言語の会話を行うことで、自分に必要な商品をウォルマートが提案してくれるようになる
」
ちなみに、CES出展企業のプレスカンファレンスで「マイクロソフトと協業する」というシーンは多く見受けられた。
サムスンはGalaxy Book4にMicrosoft Copilotを搭載していくことを発表し、ソニーのプレスカンファレンスでは、SONY HONDA MOBILITYがマイクロソフトとMicrosoft Azure OpenAI Serviceを利用した会話型パーソナルエージェントを開発する契約を締結したと発表していた。
AI時代のパートナーとしてのマイクロソフトの存在が目立った。
生成AIを使った興味深いサービスは、ビューティーテック系で初めて基調講演を務めたロレアルの発表でも紹介された。
「ビューティー・ジーニアス」という名のサービスは、スマホ上で自分の肌や髪など気になることを入力するとおすすめの対応方法を教えてくれる。
基調講演壇上でニコラ・イエロニムスCEO自らがアプリとコミュニケーションのデモンストレーションを行った。
「
CES 2024にてビューティーテック系企業として初めて基調講演を行ったロレアル
」
「
生成AIを用いた「Beauty Genius」がパーソナルビューティーアドバイスをする
」
……ただ、気になるのは「Beauty Genius」で検索すると、資生堂のアプリがヒットする。
ロレアルの基調講演後にロレアルのサイトで「Beauty Genius」で検索してもヒットしないので、ネーミングを変更して今後リリースされるのではないかと予想する。
◇スタートアップも生成AIを使ったサービスを紹介していた。
ショッピングコマースを対話型で行う韓国の「enstead」、生成AIでウェブマンガの制作を効率化する「onoma.ai」など興味深くスタートアップの生成AI活用を見て回ったが、私が一番気に入ったのはフランスのスタートアップ「Imki」だ。
ファッションデザインの分野で生成AIが人間のデザイナーをサポートするもので、実際にフランスのファッションブランド「The Kooples」と組んで服を作っている。
面白いと思うポイントは、縫製工場のレギュレーションをサービスに組み込んでいるので、マスプロダクションにも対応できる点だ。
通常、「The Kooples」はカップル向けの黒を基調とした衣服を販売している。
ただ、生成AIが”間違えて” 銀色のジャケットを提案したという。
この「思いもよらない遊び」のデザインが「The Kooples」ブランドチームも気に入り実際に制作までに至ったという。
人間であれば「The Kooples = 黒」のルールの中でデザインをするところ、生成AIはルールを逸脱して提案をしたので、それが功をなしたと Imkiの説明員は教えてくれた。
もちろん人間のデザイナーでもルールを逸脱した提案は可能だ。
Imkiはあくまでも人間のデザイナーの提案のバリエーションを増やすことを主軸としている。
「
フランスのスタートアップImkiはThe Kooplesと組んで生成AIによるファッションデザインを展示
」
「
生成AIを活用したファッションデザイン。既存の縫製工場へのワークフローに沿っているのでマスプロダクションも可能
」