『マネー資本主義』という奥歯にモノが挟まったようなわけわからないタイトルのNHK特集全5回が今夜終わったが「で、どうなんだ!?」(小田実)というと大事なことは何も言っていないという印象である。①いわゆる「金融資本主義」なるものが資本主義の究極の姿であるのかどうか。②資本主義の過去と現在に対する根本的な批判とそれに対して資本主義を擁護する側からの反・批判はどこでどう噛合っているのか。③世界経済の行く末、なかんずく今や「ドル本位制」とも言うべき現在の世界の基軸通貨=ドルに未来はあるのか・・等々切り込むべき課題は山ほどあるが、NHKはその周辺を当たらず触らず徘徊してお茶を濁しただけである。スポンサーも持たないNHKはいったい誰に何を遠慮しているのかと言えば、その視線の先にあるのは自公政権と霞ヶ関だけだと言っていいのである。「政権交代」はかかるメディア内部の風通しも俄然良くする筈である。で、今夜のゲストたちは「遠慮がちに」ではあったが少しだけいいことを示唆していた。「各国マネーが(かつての肉弾戦の)代理戦争をしている」だとか「公益資本主義の視点が必要だ」とか、或いは「マネー投機」ではなく「(農業等)地場産業への地道な投資が必要だ」とかである。最後の「地場産業育成」について言うなら、これは単に日本国内においてのみ要請されていることではなく、全世界規模で「もの作り支援」が緊急に要請されていることは自明であるが、現実には「モノを作っていたんでは食って行けない(!)」民が世界に溢れている上、「モノを右から左へ動かすだけ」更には「何も作らず動かさず単にデータを打ちかえるだけの人間が瞬時にして膨大な利潤を獲得してしまう」体制が世界を覆い尽くしているのであり、これこそが「金が全ての世の中」のぶっちゃけた姿なのである。この「ウォール街の投機合戦」に学問的権威付けを与えたのがいわゆる「金融工学」なるもので、複雑な数式を駆使してやっていることは、要するに確率論に基づく「投機の合理化」であり「リスクの可能的分散化」なのであって、元よりこんなものが学問の名に値するものかどうか、私には甚だ疑問である。だいたいが「重商主義」じゃあるまいし(はあ?)「金を貸して利鞘を稼ぐ」なんてことが経済の中心になっていい筈もなく、本来人倫たるもの基本は「モノ・食料を作ってナンボ」だったのである。 . . . 本文を読む