高齢者が海外から日本へ不正薬物を持ち込む「運び屋」に仕立てられる事例が昨年から急増している。関西国際空港から覚醒剤を密輸しようとしたとして昨年、大阪税関が関税法違反容疑で摘発した8人のうち60歳以上は5人。2011、12年は0人だったことから、大阪税関は「高齢者を敬うことで検査が甘くなると踏んだ新たな手口」とみて、警戒を強めている。
摘発された5人のうち日本人は3人で、いずれもインドから覚醒剤を持ち込んだ。80代の農業男性は、「国連の調停官」から「あなたが油田開発に投じた資金を取り戻す」という趣旨の英文メールを受信。昨年9月、手続きのため70代の知人男性とインドへ渡り、土産物の反物を受け取って関空へ戻り発覚した。税関職員が確認すると、芯から覚醒剤約5・9キロ(末端価格約4億1300万円)が見つかった。
また、60代の会社役員男性は同12月、フェイスブックで知り合ったアフリカ人女性に誘われインドへ行き、覚醒剤約450グラム(同約3150万円)を隠したノートパソコンを持ち帰らされたという。覚醒剤とは知らなかったとして、3人はいずれも不起訴処分になっている。
大阪税関の寺満・調査部長は「金絡みのあり得ない話に乗らず、渡航先で安易に荷物を受け取らないでほしい」と呼びかけている。【千脇康平】