「俺、自分じゃ何も出来んから。みんなに助けてもらってんだ」
入院病棟っていうコミュニティーは、色々ことが不自由な人の集まり。
特に整形は。元気だけど不自由。元気だけど激しい痛み。
足が不自由な人、手が不自由な人、腰、首、肩…
日々の生活の色々なことが思うようにいかない。
当たり前に出来ない。
元気なだけにこれは辛い。
もちろん、看護師さんは色々なことを手助けしたり、代わりにやってくれたりする。
天使はいつだって優しい。
でも、やっぱり完璧じゃない。
こっちも頼みづらい時もある。
「これくらいは」「忙しそうだから」「恥ずかしい」
でも自分では出来ない。フラストレーションは少しずつたまっていく。
朝の洗面所は挨拶が行き交う。かなり早い時間から混雑もする。
看護師さんも当然、忙しい。洗面所にこられない患者も多い。
「私、手術後初めて髪を洗います!」
意を決したように、一人の女性がシャワー洗顔台に向かう。
先ほどまで金髪でイカツイおじさんが洗っているのを見て、自分で洗ってみようと思い立ったのかもしれない。
周りからは、「大丈夫?」という声がかかる。
洗顔台の前に車椅子を止めたとき、さっきの怖いおじさんの車椅子が横に着いた。
「髪洗うの?」
「うん」
「シャンプーとリンスは?」
「シャンプーはある」
「ほら、リンス」
そしてシャワーヘッドを持ってお湯を出す。
「洗ってやっから、かがめるかい?」
優しい声。
おじさんは洗い流すのを手伝っている。
「気持ちいい」
女性は何度も何度も、同じ言葉をかみ締めるようにつぶやいた。
「ありがとね」
女性が何日も髪を洗えないのはフラストレーションがたまっていただろう。
表情が実に気持ち良さそうで、晴れ晴れとしていた。
「俺、自分じゃ何も出来んから。みんなに助けてもらってんだ」
だから、自分が手伝えることを他の人にもしてあげる。
ペイフォワード。
いかにもガラの悪い、そういうおじさんなのだ。
おじさんと目が合う。
いつものように「おはよーっす」と声をかける。
いつものように「おうっ」と返事をしたイカツイ顔の、目は優しかった。
入院病棟っていうコミュニティーは、色々ことが不自由な人の集まり。
特に整形は。元気だけど不自由。元気だけど激しい痛み。
足が不自由な人、手が不自由な人、腰、首、肩…
日々の生活の色々なことが思うようにいかない。
当たり前に出来ない。
元気なだけにこれは辛い。
もちろん、看護師さんは色々なことを手助けしたり、代わりにやってくれたりする。
天使はいつだって優しい。
でも、やっぱり完璧じゃない。
こっちも頼みづらい時もある。
「これくらいは」「忙しそうだから」「恥ずかしい」
でも自分では出来ない。フラストレーションは少しずつたまっていく。
朝の洗面所は挨拶が行き交う。かなり早い時間から混雑もする。
看護師さんも当然、忙しい。洗面所にこられない患者も多い。
「私、手術後初めて髪を洗います!」
意を決したように、一人の女性がシャワー洗顔台に向かう。
先ほどまで金髪でイカツイおじさんが洗っているのを見て、自分で洗ってみようと思い立ったのかもしれない。
周りからは、「大丈夫?」という声がかかる。
洗顔台の前に車椅子を止めたとき、さっきの怖いおじさんの車椅子が横に着いた。
「髪洗うの?」
「うん」
「シャンプーとリンスは?」
「シャンプーはある」
「ほら、リンス」
そしてシャワーヘッドを持ってお湯を出す。
「洗ってやっから、かがめるかい?」
優しい声。
おじさんは洗い流すのを手伝っている。
「気持ちいい」
女性は何度も何度も、同じ言葉をかみ締めるようにつぶやいた。
「ありがとね」
女性が何日も髪を洗えないのはフラストレーションがたまっていただろう。
表情が実に気持ち良さそうで、晴れ晴れとしていた。
「俺、自分じゃ何も出来んから。みんなに助けてもらってんだ」
だから、自分が手伝えることを他の人にもしてあげる。
ペイフォワード。
いかにもガラの悪い、そういうおじさんなのだ。
おじさんと目が合う。
いつものように「おはよーっす」と声をかける。
いつものように「おうっ」と返事をしたイカツイ顔の、目は優しかった。