・私と落語のかかわりは、
小学生のころ聞いた金語楼のレコードである。
祖父が落語好きで、
春団治や金語楼のレコードをよくかけていた。
私は大阪の福島で育ったので、近くに吉本演芸場があり、
祖父に連れられて落語や漫才をよく聞きに行った。
その小屋はのちに映画館になってしまった。
金語楼のあとは、エンタツ・アチャコ、エノケンと続き、
ワカナ・一郎、お浜・小浜、捨丸・春代、ダイマル・ラケット、
好きなのは漫才であった。
いつごろから落語が好きになったのか、
多分、十年ほど前の上方落語が活況を呈しはじめた頃からと思う。
筑摩書房から」「おせいさんの落語」としてまとめて頂いたが、
やっぱり読む落語になってしまう。
円歌さんの、
「山の穴、穴、穴・・・」で有名な「授業中」なんかよくできている。
ところで私は、
上方のはなし家が好きで、みんないい持ち味だと思っている。
松鶴師匠の泥臭いおかしみ、
米朝さんの明晰とあたたかさ、
小文枝師匠のあかぬけたひょう逸、
春団治さんの色っぽさと滋味、
それぞれ一門にいい若手もいっぱいおり、
いい時だと思っている。
それとびっくりするのは、女性に落語ファンが増えたこと。
笑福亭鶴瓶や明石家さんまは女子高生にもてており、
三枝、仁鶴、春蝶は年増ファンが多い。
米朝師匠、小文枝師匠などは若い女の子に人気がある。
ところでトータルすると、
老若を問わず「枝雀」好きが多い。
小米のころから好き、という女たちも多くて、
「あれなあ、母性愛くすぐるねんわ」と言っていた。
何となく気弱そうに見えるところが気になるのだろう。
私は、というと、小染さん。
上方落語はもっちゃりしたところが好きなので、
色合いの濃いはなし家の芸や雰囲気が好きなのである。
上方の客は、しゃべりを楽しむはなし家、雰囲気を楽しむはなし家、
と、いろいろ使い分けをしている。
そしてその場の空気を一緒に吸っているだけで嬉しいのは、
上方のはなし家に多く、しゃべりを楽しむのは東京の落語家に多い。
(1981年 2月)