「エナメル」
少なくなりました。エナメル文字盤。
その美しさ、クラシックさ、技術力、これらは昨今の新素材における近代技術競争にある背景とは、とても同じ目線では見れない。アタリマエデアルガ。
エナメル加工の伝統技術は古代エジプト人が装飾に使用した技法です。100以上のミネラルの複合組成で、主に砂・鉛成分・シリコン・金属酸化物が色を作っています。エナメル加工の最初の工程は文字盤となる真鍮プレートにエナメルパウダーを施します。パウダーをのせる前にベースプレートに接着グルーをつけパウダーが粘着するようにします。最も困難なのは完璧に仕上げるために常に同量の接着グルーとエナメルパウダーを施すことです。
注目する点はエナメル加工は文字盤の両面に施すことです。例え裏側で見えなくとも両面に施すことで一層剛健になり、エナメル加工が崇高な芸術作品となるのです。
次にエナメルプレートは800℃~850℃の加熱炉に入れられます。接着グルーは燃焼されエナメルが溶け、ガラス質になります。多くの要素(オーブンの温度からエナメルの濃度まで)が溶解に影響するので、熟練加工師は加熱炉に留めておく的確な時間を判断します。加熱が短すぎると文字盤は破損してしまい、長すぎると湾曲してしまいます。エナメル加工と火入れは完璧な結果を出すまで3回繰り返されます。この工程は精密科学ではなく、熟練エナメル加工師のみにしか出来ない作業なのです。
文字盤が完璧にエナメル加工され冷まされた後、文字盤にエナメル塗装が施されます。カウンター(インデックスの数字等)が描かれた後はすべて手仕上げされます。特筆すべき点は塗装にはエナメル混合が使われることです。文字盤塗装後、再び加熱炉に入れホワイトエナメルと塗装が溶け合い完全に仕上がります。角型ケースであっても常に大きな丸型プレートが使用され、最終工程で切断します。
と、少しマニアックになってしまいましたが・・・。
なぜエナメルが人々を魅了するかと云うと、硬度で弾力性があり長持ちするという実用性がある上で、なめらかな感触の素材で気品ある美しさそして他に類を見ない芸術性を兼ね備えているからでしょう。
新作の”ヴィンテージ1945フランソワ・ペルゴ”は、以前にも記載したジラールペルゴ創設者の弟で日本におけるスイス時計輸入のパイオニア、フランソワ・ペルゴに捧げるモデルとして発表されました。まず、何と云っても、驚くなかれ、日本限定34本なのです!34本。非常~に少ない。日本限定にしたのは、日本におけるスイス時計輸入のパイオニアという点も強く関係しているでしょう。フランソワが日本で生きた19世紀半ばを意識しエナメル文字盤を採用、そして選ばれたモデルはヴィンテージ1945。しっかりとトリビュートしています、合格。
個人的に気に入っている点を少し。
”ジラールペルゴ”の文字を筆記体にした事。
”ラ ショード ホン”の文字を入れた事。
筆記体にした事でとてもシックリきます。そして、産地名。これはIWC社は実施していますが、他メーカーはAUTOMATICばかり。これはどうも無粋に感じる。ラショードホンって語呂もイイですしネ。そしてそして、このジラールペルゴの産地名記載は当方が以前にオリジナルウォッチで実行しているのですが、そんな戯言はドウデモヨイカ。
後は、ベルトの色をチェンジすれば真のカッコイイスペシャルウォッチだと想います。
ではでは、ご拝聴アリガトウゴザイマシタ。