アビカン(一般名ファビピラビル )の物質特許は、
で
日本での物質特許(特許第3453362号「含窒素複素環カルボキサミド誘導体またはその塩並びにそれらを含有する抗ウイルス剤」)は、(特許法67条4項に基づく期間延長を経て)2024年8月18日に消滅。
と紹介したように、特許法67条4項によって五年間延長されていました。
特許法67条4項第一項に規定する存続期間(第二項の規定により延長されたときは、その延長の期間を加えたもの。第六十七条の五第三項ただし書、第六十八条の二及び第百七条第一項において同じ。)は、その特許発明の実施について安全性の確保等を目的とする法律の規定による許可その他の処分であつて当該処分の目的、手続等からみて当該処分を的確に行うには相当の期間を要するものとして政令で定めるものを受けることが必要であるために、その特許発明の実施をすることができない期間があつたときは、五年を限度として、延長登録の出願により延長することができる。
薬機法(旧薬事法)の審査は年単位で掛かります。その間にも時は経ち、特許の消滅日が近付く。特許を実施できないのに。
これは不合理だ、
ということで設けられた規定です。特許権者にとってフレンドリーな規定です。
ところが、こういうフ特許権者にとってフレンドリーな規定を設定していない国々もあります。
公益(特に科学技術の発展)にフレンドリーなスタンス
と
特許権者にとってフレンドリーなスタンス
とは相容れません。そして、特許制度は、これら二つの相容れないスタンスの折り合いを付ける制度です。
ちなみに、
特許権者にとってフレンドリーは、プロバテント
公益(特に科学技術の発展)にフレンドリーは、アンチパテント。
特許法や特許関連裁判例を読むときは、
プロバテントとアンチパテント
のせめぎ合いを念頭に置く事を強くお勧めします。
どちらにどう転ぶが、立法に関わった者ですすら読めないようです(例えば、知財高裁はプロバテントの一環で設置されました。ところが、知財高裁が出す判決は、アンチパテント寄り)。
そして、中華人民共和国の国是は、科学的社会主義。
なので、
アビカン(一般名ファビピラビル)の物質特許が、
日本では残っているけど、
日本では残っているけど、
中国では消滅済みなのです。
(他の国がどうなっているかは、https://patents.google.com/patent/JP3453362B2/ja
右側に並ぶ国名略記号をクリックして見てください。GooglePatentsは有能です )
以上は、
日本が開発した薬だが後発薬(ジェネリック)を中国がどんどん作っている。トンビに油揚げをさらわれたような気分だが特許が切れ、後発薬が違法なわけではない。
という事情の背景解説でした。
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