増補 日本文學史 池田秋旻 氏著
一部加筆 山梨県歴史文学館 山口素堂資料室
第四章 連歌の格調
今『筑波集』其の他の諸書に出でたる、連歌の二三を掲げて、
當時の格調を示さん。
かゞみの山に月ぞさやげき
にほてるやにはほのさざなみうつり来て 家 隆
たえぬ烟とたちのぼるかな
春はまだ浅間たけのうす霞 為 家
思ふ程にはいまだうらみす
風かよふなつのゝまくすわかばにて 善 阿
空にも冬の月はすみける
やどるべき水は氷に閉られて 西 行
紹巴獨吟干句
年毎の花ならぬ世の恨かな 紹 巴
ふりにし跡も庭の春草 同
山の端の薄雪残る露みゑて 同
羽風を塞み雁わたる群 同
船とめし枕は秋のうら波に 同
月を旅寝の袖のかたしき 同
春の夢草
面影を月と花とに袖ぬれて 肖 柏
ものことになど戀はかなしき 同
花にたる況のゆうべわすれめや 同
身にまかすへき思ひともなし 同
さきかへす川に包れか落すらん 同
壁 草
われからに世のうきやのがるゝ 宗 長
誰たえて誰雲にのる身なるらん 同
いたこのたひはすみそめの袖 同
花ならでわけんもかなし吉野山 同
宗祗終焉記
消し夜の朝露分る山路かな 宗 長
名残すきうき宿の秋風 宗 碩
小荻原旅寝の月に散を見て 同
鹿のなくねも袖ぬらせとや 宗 長
物ごとあはれはくれを帰る野に 同
雲をかたみの春ぞあだなる 宗 碩
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