酒の手ほどき
わたしは生来の下戸である。両親の家系をたどっていっても 大酒飲みの記録は見当たらない。
家系図は室町に痰を発するから 相当長い年月をかけているが 酒という文字一つ現れぬ。
これじゃ俺も生涯酒でしっぱいすると言うこともあるまいと思っていた。
縁は異なものというが、嫁をもらってみると そちらのほうは また勇ましいこと。
先ず 筆頭は岐阜である。酒飲みという程度の者ではない。将に酒豪である。
一升、二升の酒で態度が違ってくるというようなものではない。刺すかに二升近くになると
顔も赤らむかな ちょっと喋りが増えるかなという程度でアル
私にとっては将に尊敬に値する。の身振りの世さてある。
「酒飲みはなあ ほどほどをわきまえんと 遺憾る楽しく酒は飲むべし。」
それに比べねと義兄たちの酒癖はほめたものではなかった。よく絡まれたのだ。
其のうち私も釣られて少しずつヴ画あがってきた。そうなると腕駄目しかしたくなる。
『よし今日どこまで持つかちょうせんしてみようル』と思い立ち 出発を駅前の居酒屋から始めた。
コップ一杯焼酎を気のまま飲んでどこ待て行けるかだ」
季節は夏の宵、結構ではないか、繁華街を通り越していた。7杯8杯ということは下戸男が8合飲んでいるんだ。
丁度10倍くらい飲んだころ わたしはとある御殿に横になっていました。
空は満天の星だ。暑い絨毯が心地よく体を包む。
体がぶるっと震えた。あたりには かすかに 灯りがさしていた。朝のようだ。県庁の用水池の隣に寝ていた。
芝生は絨毯に見えたのだろう。漸く 自体が飲み込めた。吐き気をも世干す。甘利いい気持ちではない。
いちばん電車だろうか 県庁まえ輪素通りして行った。
のんだ焼酎一升一合。このうそつき野朗なにが下戸か。