化粧箱

田舎で、母が使っていた化粧箱がでてきました。
木の重い化粧箱
仕事を終えてやっとほっとした時間
炬燵で足を温めながら
この箱を傍らに置いて
箱からクリームを取り出しマッサージをする母
冬になると毎日の日課でした。
その箱の中に今では使えそうもない古い化粧品と
信じていた宗教の教典と
手あかのついた古いトランプ
私の高校時代の古い写真がありました。
物を整理するのが得意だった母
食器棚には高価な趣味のいい器が並んでいたのに
引き出しの中身は脈絡ないものがいっぱい入っていました。
晩年には何が大事か選択する力も薄れていたのに
化粧箱の中身は
母の大事なものが詰まっていたのです。
孫たちとしたトランプ
汚れたままのトランプ
孫たちもすっかり大きくなって
その機会もないまま
大事に大事に
持ち続けたのです。
父の持ち物の中にも数も揃ってないトランプが
ありました。