ロシア軍の侵攻に激しい抵抗を続けるウクライナ軍。
その戦いを支える武器の1つが「ドローン」です。
ロシア軍を偵察する活動に
多くの市民が参加している実態を取材しました。
▽「ドローン部隊」市民と軍が連携
これはウクライナ陸軍が12日に公開した映像。
上空から撮影している「ドローン」がロシア軍の戦車の位置などを
地上部隊に伝え、待ち伏せしたとみられています。
キエフ郊外では9日にも、ウクライナ軍による待ち伏せ作戦で
ロシアの戦車部隊が敗走しました。 この映像を撮影したのは
ロシア軍の動きを偵察する「ドローン部隊」だといいます。
侵攻翌日の先月25日、ウクライナ国防省は民間用のドローンを
持っている国民に対し偵察活動への協力を呼びかけました。
「チェックポイント1、状況を報告してください」
「報告します。白いバスが出発しました」
これはドローン部隊の作戦室とされる映像です。
ドローンを操縦できる市民が軍と連携し、
無線で連絡をとりながらリアルタイムで
ロシア軍の動向を収集しているといいます。
ウクライナ国内で民間用のドローンを販売している
こちらのお店では、ロシア軍の侵攻後、
2000台以上のドローンをウクライナ軍に提供しています。
経営者のタラス・トロイアクさん。
(ドローン販売店経営者 タラス・トロイアクさん)
「ドローンが人を殺害するために使われることは素直に喜べません。
しかし、母国を守らなければいけない。ほかに選択肢がないのです」
侵攻3日目、首都キエフに向けて進軍するロシア軍の車列。
これはトロイアクさんが提供した民間用ドローンが撮影した映像です。
(ドローン販売店経営者 タラス・トロイアクさん)
「監視映像でロシア軍の位置情報を特定し、
その情報を軍に送って、空から攻撃するのか、特殊部隊を送るのか、
対戦車ミサイルを使うのか決めるのです」
民間用の市販品とはいえ、熱を感知するサーモカメラや
暗視カメラなども搭載されていて、夜間でも
ロシア軍の動きをとらえることができるのだといいます。
▽「民間用ドローン」が捉えるロシア軍
ロシア軍の包囲攻撃でいまだ「人道回廊」による市民の退避が
実現していないマリウポリ。退避用とみられるバスも
破壊されています。 ドローンがとらえていたのは、
その「人道回廊」に設定された道路を進軍するロシア軍の戦車。
ウクライナ軍はこうした映像を証拠に、
ロシア軍が停戦合意を破って攻撃を続けていると
世界に訴えています。圧倒的な戦力のロシア軍に対し、
「目となり耳となっている」民間用ドローン。
こうしたウクライナ側の抵抗には、周辺の国からの協力も
集まっています。 プーチン大統領と親密な、隣国ベラルーシの
ルカシェンコ大統領。 その独裁に抵抗する反政府組織は、
インフラへのサイバー攻撃や機動隊施設にドローンを使って
火炎瓶を投下するなど抵抗を続けています。
今回のロシア軍の侵攻を受け、
この組織のドローン部隊がウクライナに入ったといいます。
(反政府組織「サイバーパルチザン」
ユリアナ・シェメトーベツさん)
「プーチンという共通の敵がいるのでウクライナ側につきました。
持ち込める技術・機材は何でも持ち込み、
ウクライナ軍に力を貸しています」
▽「国民の士気」ドローン活用で向上へ
ウクライナがトルコから調達した軍事用の攻撃型ドローンも、
大きな戦果を挙げていると専門家はみています。
(慶應義塾大学 古谷知之教授) 「この映像を見る限りでは、
高度200m以下のところから、ロシア軍の戦車をピンポイントで
攻撃している様子が見てとれるんですけど、
今回のロシア軍のようにですね、兵站が非常に長くのびきって
(戦車が)停止しているところにですね、ピンポイントで攻撃を
するといったことを非常に得意としているんですよね」
遠隔操作によって地上の標的を攻撃する軍事用ドローン。
ウクライナ軍はこうした映像を積極的に公開することで
国民の士気を高めているといいます。
懸念されているロシア軍によるキエフ中心部への総攻撃。
市街戦が激化したとき、市民らが操縦する無数のドローンが
ウクライナ側の抵抗に欠かせないものになるとみられています。
(慶應義塾大学 古谷知之教授) 「例えば、
ロシア軍を待ち伏せ攻撃するための偵察であったりとか、
火炎瓶とか爆弾の投下ですね、そういったところで活用される
のではないか。民生用のドローンがここまで戦場で投下された
事例というのは今回初めてだと思いますけど、
攻撃用の無人機とあわせて活用していくという状況に
なっているんじゃないかと思います」
3月13日『サンデーステーション』より [テレ朝news]