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寝屋川 平和と市民自治 No.7 2017年12月1日
寝屋川 平和と市民自治の会
Peace & Autonomy in Neyagawa
〒572-0837 寝屋川市早子町20-12
TEL/FAX 072-813-2913 090-3927-6382 heiwatoshiminjitinokai@outlook.jp http://blog.goo.ne.jp/heiwatoshiminjiti
韓国訪問… なかまユニオンの企画に同行して
社会連帯事業が地域変革や青少年の育成に結実!
寝屋川 平和と市民自治の会代表
大同 敏博
僅か五日間の滞在をもって韓国を語るのは不謹慎だと思いつつも、今回の訪韓について書いてみます。日本の≪なかまユニオン≫(労組連合)の企画に同行して訪れた韓国でしたが、≪希望連帯労組≫、≪青年ユニオン≫、≪城北(ソンブク)区市民運動≫との相互交流は、とても貴重な体験になりました。
韓国の上記の両労組は、職場・工場の壁を越えて地域の市民運動と結び付く事を重要視していて、労組が社会貢献する活動を展開しています。それに応える形で市民運動も労働者が直面している非正規雇用などの問題に取り組み、幅広い運動を行っています。昨年の秋から冬にかけて報道された“ロウソク集会”も、実はこうした背景があっての事で、景福宮の正門である光化門の前の大通りに百万人もの人々が結集した事でパク=クネ政権を退陣させたのです。因みに光化門から東南へ約四百メートル程の場所に『慰安婦像』(韓国では「平和の少女像」と呼んでいる)が建てられています。
韓国の民主化運動はシッカリと定着していて、それは1980年代から始まっています。最初は細々として分散する状態だった様ですが、30年もの長い闘いの末に現在の市民的な活況があると言えそうです。これを受けて今のソウル市長、パク・ウォンスン氏の就任になりました。彼は非正規雇用の市職員(約1万人)を正規職に転換するなど、労組を行政の重要なパートナーとして位置付ける考えを理念にしているそうです。日本では最低賃金と称される就業からの報酬を、パク・ウォンスン市長は生活賃金と捉えて、単に衣食住だけじゃなく、教育や文化にも支出できる金額を給料に含む考えを述べています。
その政策として、今まで時給7530ウォンだったのを来年度中に9521ウォンに引き上げると発表しています。この動向は京畿道、忠南道にも波及して、市民生活の改善へと突き進んでいます。
その一端を城北区の市民活動で見ました。そこでは≪希望連帯労組≫が施設の資金を提供して、青年、教員、地域の活動家がネットワークを作って、障害者や児童、青年の育成や世話をしているそうです。労組の組合員が地域の子ども達とキャンプに出掛けたり、青年の就業に関わる研修を手伝い、各学校の教員は美術を教えながら心理カウンセラーも引き受ける。子ども達の為に良書を揃えて、読書を通じての成長を支えているそうです。
こうした活動の目的は、経済的な貧困と社会的な支援を充分に受けていない疎外児童(低所得層・祖父母と孫だけの家庭・ひとり親家庭など)に対してオーダーメイド型の支援を行い、彼等が明るく健康な児童、青少年に育つよう助ける事とされています。家庭や学校と地域が一緒になって児童を育てる、そんな地域教育福祉共同体を作ってゆく事を目指しているのです。
この様な実践を通じて、今まで「社会貢献事業」と呼んできた活動をこれからは“社会連帯事業”と呼び替える提案がなされていて、私は深い共感を覚えました。確かに社会貢献の意図は地域での幅広い連帯を創り出す事だから、連帯事業と言うのが相応しく感じられます。ソウル市・ソンブク区での試みは、私たちが志向する市民自治の考え方と共通するものがあり、それへの応答として寝屋川市の市民が行っている“子ども食堂”の活動を紹介しました。ソンブク区でも同様の活動をしているけれど、定例化はされていない様で、興味深く聞いて貰えました。
ソンブク区での活動を支えている若い女性のアン・ヨンシンさんは、平和人権教育のプログラムも紹介されて、「我々の権利は我々が守る」(児童人権への理解)、「自分を愛する事が世の中を愛すること」(自我尊重感を向上させる)、「私たちの声を聞いてみろ」(青少年の人権問題への理解)などの事業を行い、差別と偏見の克服に向かって活動していると話されていました。夜間学校や各種の研修会を通じて、こうした活動を支える若いリーダーも育っていて、これをソウル市がバックアップしているそうです。 今回の訪韓で注目したいのは、地域の人々が労働組合と共に地域変革や青少年の育成に努力している点で、それらに支えられて市の行政も成り立っていると言う事です。こうした三位一体とも言えるネットワークが作られる事で地域の福祉や教育があり、また適正な生活賃金が保障される事で人々の暮らしが展開してゆく。ソウル市に問題がないとは思わないけれど、彼等の表情には陽気な明るさがあり、自信を持って活動している姿に深い感銘を受けました。私が出会った人々が異口同音に語るのは、労働組合が職場の壁を越えて地域へ入って行く事の重要性で、社会貢献を社会的連帯の事業として取り組んでいる様子でした。ここには労組と地域住民の助け合い=共に生きる姿があり、行政もまたネットワークに参加しているのです。誰もが主体であり主権者として生きてゆく事が、子ども達の元気な姿に現れている、と感じられます。
≪平和と市民自治≫を理念として掲げる私たちは、ソウル市の市民から学べるものが多くある事を確認したいと思います。それに反して、大阪市の吉村市長は「慰安婦像」を巡る問題でサンフランシスコ市との姉妹都市交流を閉ざすと表明しましたが、これは全く愚かな判断だと思います。それは維新じゃなく、維旧でしょう。市民自治は維旧からは決して創造されず、私たちにとって大切な姿勢は韓国やソウルの人達と共に生きてゆく事だと思います。(了)
寝屋川 平和と市民自治 No.7 2017年12月1日
寝屋川 平和と市民自治の会
Peace & Autonomy in Neyagawa
〒572-0837 寝屋川市早子町20-12
TEL/FAX 072-813-2913 090-3927-6382 heiwatoshiminjitinokai@outlook.jp http://blog.goo.ne.jp/heiwatoshiminjiti
韓国訪問… なかまユニオンの企画に同行して
社会連帯事業が地域変革や青少年の育成に結実!
寝屋川 平和と市民自治の会代表
大同 敏博
僅か五日間の滞在をもって韓国を語るのは不謹慎だと思いつつも、今回の訪韓について書いてみます。日本の≪なかまユニオン≫(労組連合)の企画に同行して訪れた韓国でしたが、≪希望連帯労組≫、≪青年ユニオン≫、≪城北(ソンブク)区市民運動≫との相互交流は、とても貴重な体験になりました。
韓国の上記の両労組は、職場・工場の壁を越えて地域の市民運動と結び付く事を重要視していて、労組が社会貢献する活動を展開しています。それに応える形で市民運動も労働者が直面している非正規雇用などの問題に取り組み、幅広い運動を行っています。昨年の秋から冬にかけて報道された“ロウソク集会”も、実はこうした背景があっての事で、景福宮の正門である光化門の前の大通りに百万人もの人々が結集した事でパク=クネ政権を退陣させたのです。因みに光化門から東南へ約四百メートル程の場所に『慰安婦像』(韓国では「平和の少女像」と呼んでいる)が建てられています。
韓国の民主化運動はシッカリと定着していて、それは1980年代から始まっています。最初は細々として分散する状態だった様ですが、30年もの長い闘いの末に現在の市民的な活況があると言えそうです。これを受けて今のソウル市長、パク・ウォンスン氏の就任になりました。彼は非正規雇用の市職員(約1万人)を正規職に転換するなど、労組を行政の重要なパートナーとして位置付ける考えを理念にしているそうです。日本では最低賃金と称される就業からの報酬を、パク・ウォンスン市長は生活賃金と捉えて、単に衣食住だけじゃなく、教育や文化にも支出できる金額を給料に含む考えを述べています。
その政策として、今まで時給7530ウォンだったのを来年度中に9521ウォンに引き上げると発表しています。この動向は京畿道、忠南道にも波及して、市民生活の改善へと突き進んでいます。
その一端を城北区の市民活動で見ました。そこでは≪希望連帯労組≫が施設の資金を提供して、青年、教員、地域の活動家がネットワークを作って、障害者や児童、青年の育成や世話をしているそうです。労組の組合員が地域の子ども達とキャンプに出掛けたり、青年の就業に関わる研修を手伝い、各学校の教員は美術を教えながら心理カウンセラーも引き受ける。子ども達の為に良書を揃えて、読書を通じての成長を支えているそうです。
こうした活動の目的は、経済的な貧困と社会的な支援を充分に受けていない疎外児童(低所得層・祖父母と孫だけの家庭・ひとり親家庭など)に対してオーダーメイド型の支援を行い、彼等が明るく健康な児童、青少年に育つよう助ける事とされています。家庭や学校と地域が一緒になって児童を育てる、そんな地域教育福祉共同体を作ってゆく事を目指しているのです。
この様な実践を通じて、今まで「社会貢献事業」と呼んできた活動をこれからは“社会連帯事業”と呼び替える提案がなされていて、私は深い共感を覚えました。確かに社会貢献の意図は地域での幅広い連帯を創り出す事だから、連帯事業と言うのが相応しく感じられます。ソウル市・ソンブク区での試みは、私たちが志向する市民自治の考え方と共通するものがあり、それへの応答として寝屋川市の市民が行っている“子ども食堂”の活動を紹介しました。ソンブク区でも同様の活動をしているけれど、定例化はされていない様で、興味深く聞いて貰えました。
ソンブク区での活動を支えている若い女性のアン・ヨンシンさんは、平和人権教育のプログラムも紹介されて、「我々の権利は我々が守る」(児童人権への理解)、「自分を愛する事が世の中を愛すること」(自我尊重感を向上させる)、「私たちの声を聞いてみろ」(青少年の人権問題への理解)などの事業を行い、差別と偏見の克服に向かって活動していると話されていました。夜間学校や各種の研修会を通じて、こうした活動を支える若いリーダーも育っていて、これをソウル市がバックアップしているそうです。 今回の訪韓で注目したいのは、地域の人々が労働組合と共に地域変革や青少年の育成に努力している点で、それらに支えられて市の行政も成り立っていると言う事です。こうした三位一体とも言えるネットワークが作られる事で地域の福祉や教育があり、また適正な生活賃金が保障される事で人々の暮らしが展開してゆく。ソウル市に問題がないとは思わないけれど、彼等の表情には陽気な明るさがあり、自信を持って活動している姿に深い感銘を受けました。私が出会った人々が異口同音に語るのは、労働組合が職場の壁を越えて地域へ入って行く事の重要性で、社会貢献を社会的連帯の事業として取り組んでいる様子でした。ここには労組と地域住民の助け合い=共に生きる姿があり、行政もまたネットワークに参加しているのです。誰もが主体であり主権者として生きてゆく事が、子ども達の元気な姿に現れている、と感じられます。
≪平和と市民自治≫を理念として掲げる私たちは、ソウル市の市民から学べるものが多くある事を確認したいと思います。それに反して、大阪市の吉村市長は「慰安婦像」を巡る問題でサンフランシスコ市との姉妹都市交流を閉ざすと表明しましたが、これは全く愚かな判断だと思います。それは維新じゃなく、維旧でしょう。市民自治は維旧からは決して創造されず、私たちにとって大切な姿勢は韓国やソウルの人達と共に生きてゆく事だと思います。(了)
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