この頃「内モンゴル(蒙古)産」という石をよく見る。フローライトなんかもある。
内モンゴルというと、中国とモンゴルとの中間地帯、広大な草原をイメージする。え? そんなとこでフローライトや水晶が出るの?
ところがどっこい。改めて地図を見てびっくり。内モンゴル自治区というのは、西はもちろん蒙古の大草原の中だけど、延々と東まで拡がっていて、なんと北京の北を通り越して北朝鮮の手前まで伸びている。何だよこれ。東っかわは全然大草原ではないじゃない。
面積は 118万3000平方キロ。日本が 37万8000平方キロだから、えーと電卓電卓、日本の 3.13倍だぜ。いくら大陸とはいえ、でかすぎだろ。ちなみに人口は2400万人ほど。
しかも、多くの鉱物が出るのは東側、つまり北京のすぐ北あたりらしい。
何だよ、大陸ど真ん中の大草原から蛍石や水晶が出るわけじゃないんですね。むしろ海沿いだよ。ちと看板に偽りありじゃないかい?(偽っているわけではないだろさw)
で、その一つ、「内モンゴル産緑水晶」。
内モンゴル緑水晶は最近あちこちで出ている。典型的なのは「松茸」、つまり頭でっかちのチ○コ型(よしなさいはしたない)で、表面に四角い蝕像模様が刻まれているもの。大きくて透明度があるものはえらく高い。
一つ見てみたいなと思ってゲット。これはプチプラものなので、松茸ではない。透明度もあまりない。色も濁っている。でも輝きはいいし、とても面白い。
「骸晶」「エッチド」というやつ。一回できた結晶が融けてガタガタになったと言われる。
さらに「セルフヒールド」と言うんでしょうか、その後に小さな結晶がばらばらと生えてきている。
それら「後から」の細工が精妙で、キラキラと輝いて、これはこれなりにとてもきれい。
透明で完璧な水晶は恵まれた環境ですくすくと育ったお坊ちゃまなのに対し、こちらはクローライトらしきものとまじゃり、さらに融かされて、その上にまた育とうとしている。たくましい野生ではないでしょうか。(野生?)
産地は Huanggang, Inner Mongolia, China とある。普通に Huanggang を引くと湖北省の黄岡市が出てくるけど、内モンゴルのは mindat にも出る有名鉱山。
《Huanggang Fe-Sn deposit, Hexigten Banner (Keshiketeng Co.), Chifeng City (Ulanhad League; Chifeng Prefecture), Inner Mongolia, China》
英語で書かれてもわからん。日本語にすると「赤峰市ヘシグテン旗黄岡鉄錫鉱山」。ヘシグテンはモンゴル語でしょう。
mindat の説明にはこうある。機械翻訳。
《初期ペルム紀の大石寨層と黄岡梁層の炭酸塩岩と、地域の西部と東部に位置する2つの白亜紀正長石花崗岩貫入岩(K-Ar同位体年代:67-115 Ma)との接触帯に発生するスカルン型錫鉄鉱床。接触部では、ガーネット斜方輝石スカルンとガーネット角閃石黒雲母スカルンが高度に発達している。鉱石鉱物は塊状、角礫状、脈状、および散在状に産出する。接触部から離れると、スカルン体の層内亀裂に小さな脈が形成される。後期硫化鉱物、角閃石、およびエピドートは、スカルンと初期の磁鉄鉱を置換している。》
わけわからん。要するにスカルンだよ。花崗岩マグマが上がって来たんだから、水晶や蛍石の大結晶ができるペグマタイトもたくさんあるのでしょう。
115MaっつうのはMaが100万年だから……電卓電卓。はい、一億と1500万年ですか。(そんなん暗算ですぐだろw)
はあ、年表引っ張り出さなきゃ。中生代白亜紀。白亜紀はジュラ紀の後。恐竜が跋扈していた頃。2億5000万年前にできた超大陸パンゲアが、もうだいぶ分裂していた頃。
中国のあのあたりはパンゲアの頃から大地のヘリで、海洋地殻の沈み込みによる火山活動なんかもあったのでしょう。もともと日本列島はそのさらに東ヘリだった。だから福井で恐竜の骨が出る。らしい。
まあさすが大陸、歴史は古く、変遷もまた激しい。
って、これ一億年前の水晶ですかね。だとするとなかなかじゃないですか。違う?
しかし、ヤフオクなんかを見ていると、中国産標本の多いこと多いこと。
面白そうな標本もけっこうある。けど安いわけではない。こんなに溢れてるんだからもう少し、なんて言うと石屋さんに怒られるでしょうねw