goo blog サービス終了のお知らせ 

貧乏石好き

つれづれなるままに石をめぐりてよしなきことを

内モンゴル産緑水晶

2025-03-12 20:09:50 | 単品

この頃「内モンゴル(蒙古)産」という石をよく見る。フローライトなんかもある。
内モンゴルというと、中国とモンゴルとの中間地帯、広大な草原をイメージする。え? そんなとこでフローライトや水晶が出るの?
ところがどっこい。改めて地図を見てびっくり。内モンゴル自治区というのは、西はもちろん蒙古の大草原の中だけど、延々と東まで拡がっていて、なんと北京の北を通り越して北朝鮮の手前まで伸びている。何だよこれ。東っかわは全然大草原ではないじゃない。
面積は 118万3000平方キロ。日本が 37万8000平方キロだから、えーと電卓電卓、日本の 3.13倍だぜ。いくら大陸とはいえ、でかすぎだろ。ちなみに人口は2400万人ほど。
しかも、多くの鉱物が出るのは東側、つまり北京のすぐ北あたりらしい。
何だよ、大陸ど真ん中の大草原から蛍石や水晶が出るわけじゃないんですね。むしろ海沿いだよ。ちと看板に偽りありじゃないかい?(偽っているわけではないだろさw)

で、その一つ、「内モンゴル産緑水晶」。

内モンゴル緑水晶は最近あちこちで出ている。典型的なのは「松茸」、つまり頭でっかちのチ○コ型(よしなさいはしたない)で、表面に四角い蝕像模様が刻まれているもの。大きくて透明度があるものはえらく高い。
一つ見てみたいなと思ってゲット。これはプチプラものなので、松茸ではない。透明度もあまりない。色も濁っている。でも輝きはいいし、とても面白い。

「骸晶」「エッチド」というやつ。一回できた結晶が融けてガタガタになったと言われる。

さらに「セルフヒールド」と言うんでしょうか、その後に小さな結晶がばらばらと生えてきている。

それら「後から」の細工が精妙で、キラキラと輝いて、これはこれなりにとてもきれい。
透明で完璧な水晶は恵まれた環境ですくすくと育ったお坊ちゃまなのに対し、こちらはクローライトらしきものとまじゃり、さらに融かされて、その上にまた育とうとしている。たくましい野生ではないでしょうか。(野生?)
産地は Huanggang, Inner Mongolia, China とある。普通に Huanggang を引くと湖北省の黄岡市が出てくるけど、内モンゴルのは mindat にも出る有名鉱山。
《Huanggang Fe-Sn deposit, Hexigten Banner (Keshiketeng Co.), Chifeng City (Ulanhad League; Chifeng Prefecture), Inner Mongolia, China》
英語で書かれてもわからん。日本語にすると「赤峰市ヘシグテン旗黄岡鉄錫鉱山」。ヘシグテンはモンゴル語でしょう。
mindat の説明にはこうある。機械翻訳。
《初期ペルム紀の大石寨層と黄岡梁層の炭酸塩岩と、地域の西部と東部に位置する2つの白亜紀正長石花崗岩貫入岩(K-Ar同位体年代:67-115 Ma)との接触帯に発生するスカルン型錫鉄鉱床。接触部では、ガーネット斜方輝石スカルンとガーネット角閃石黒雲母スカルンが高度に発達している。鉱石鉱物は塊状、角礫状、脈状、および散在状に産出する。接触部から離れると、スカルン体の層内亀裂に小さな脈が形成される。後期硫化鉱物、角閃石、およびエピドートは、スカルンと初期の磁鉄鉱を置換している。》

わけわからん。要するにスカルンだよ。花崗岩マグマが上がって来たんだから、水晶や蛍石の大結晶ができるペグマタイトもたくさんあるのでしょう。
115MaっつうのはMaが100万年だから……電卓電卓。はい、一億と1500万年ですか。(そんなん暗算ですぐだろw)
はあ、年表引っ張り出さなきゃ。中生代白亜紀。白亜紀はジュラ紀の後。恐竜が跋扈していた頃。2億5000万年前にできた超大陸パンゲアが、もうだいぶ分裂していた頃。
中国のあのあたりはパンゲアの頃から大地のヘリで、海洋地殻の沈み込みによる火山活動なんかもあったのでしょう。もともと日本列島はそのさらに東ヘリだった。だから福井で恐竜の骨が出る。らしい。
まあさすが大陸、歴史は古く、変遷もまた激しい。
って、これ一億年前の水晶ですかね。だとするとなかなかじゃないですか。違う?

しかし、ヤフオクなんかを見ていると、中国産標本の多いこと多いこと。
面白そうな標本もけっこうある。けど安いわけではない。こんなに溢れてるんだからもう少し、なんて言うと石屋さんに怒られるでしょうねw


五芒星?フラワーアラゴナイト【追記あり。騙されたようですw】

2025-03-09 09:57:35 | 単品

もいっちょ何じゃこれ。

アラゴナイト。Pesquera, Cuenca, Spain産。左右22ミリくらい。
アラゴナイトなんだけど、五角形でお星さまの姿になっている。オークションでは「スターアラゴナイト」と書かれていたけど、スターだと放射状のシラーと紛らわしい。
似たような姿のものに「フラワーアメジスト」というのがある。中央に「芯」があって、そこから放射状に結晶が拡がっているもの。しばしばその拡がりが平面的で、これとよく似たような姿になる。
しかしこれ、アラゴナイトですぜ。




ううむ。アラゴナイトというのは実にいろいろな姿を見せる。mindat のフォトギャラリーを見ると唖然とする。とても楽しい。
しかし、こんなんはない。六角形のものは1つ出ているけど針状放射状結晶で全然姿は違う。
五角形というのは、結晶面の形としては時々ある。しかし五角形に広がるというのはないんじゃないか。ペンタゴナイトくらい?

ううむ……ん? これ、「たまたま」?
たまたま大きく成長した結晶が五方向についている、それを人間の目が勝手に五芒星を重ねて見ているだけ?
同じ場所で同じようなのが出ていれば、へそ曲がりの作り手がいるということだろうけど、そんなん知る由もないしね。(作り手って何だよw)
まあ、たまたまでも、面白いではないですか。
しかしねえ、こやつ、色もちょっと紫がかった所があるし、誰かがアラゴナイトでアメジストフラワーのそっくりさんを作ろうとしたのではないか。(だから誰だよ)

さらに不思議なことがありまして。これ、母岩に付いていた痕跡がないんですね。
裏っ返しても、自然な結晶面ばかり。

先日、Xで平たいフラワーアメジストを上げている人がいて、それも母岩に付いていた痕跡がなく、投稿者さんも不思議がっていました。
浮遊したまま結晶が成長したのか、ものすごく柔らかいものの中で成長したのか。
接地痕がない結晶というのは、わりあいあるみたいですね。ハーキマー水晶とか。
前に上げたエジリンのように、途中まで浮遊していてその後別の結晶にひっついたと思われるようなものもある。あれ昔のスマホで写真がひどいから再掲。



うむむむ。前は素人の先入観で、結晶というのは母岩からゆっくりゆっくりと伸びていくもの、というイメージを持っていたけど、あながちそういうものばかりではないらしい。
しかし浮遊しながら大きく育つというのは、よっぽど長期間周囲環境が静謐だったということですかね。それとも、前にも触れたように、結晶というのは案外短期間にできるものなのか。
はあ、わかりません。まあ素人ですからわからなくていいでしょう。不思議だなあと感心していれば。

【追記】
とアップしたら、早速Xで菅田鉱物館さん@SugataMineralsからご指摘がありました。

《実は…Robert Lavinskyさんによれば、「おそらく柱状結晶を薄くスライスした断面であり、表面の明るく煌めく光沢と細かな凹凸の質感を引き出すために軽く酸洗浄が施されています」とのことです。https://www.mindat.org/photo-1040993.html》

加工品に騙されたっつうことですねw あれこれ悩んで損したw (悩んだのかw?)
恥ずかしいから記事削除しようかと思ったけど、まあこれもまた石の楽しみの一つということで残しておくことにします。
それに、普通は六角形の柱状結晶なのにこれは五角形だからちょっとユニークかもしれないし。(などと負け惜しみを言っております)
 

ブルー・ウォーターオパール

2025-03-05 21:05:20 | 単品

そんな名前の石はありませんけど。(は?)
ヤフオクで「人類未到の青」というなんかよくわからない惹句で出ていたもの。確かに美しい青で「何じゃこりゃ」と思ってゲット。

透き通った実に美しい青。実物はもっときれい。ほかにはなかなかないかもしれない。未踏でもいいか。
そして遊色もばっちり出る。写真じゃ撮れないけどばんばん。



何じゃいこりゃ、と思ってじっくり観察してみた。
光の当て方を調整してみると、どうも透明なオパールの一部に青い層があるらしい。その青が全体に滲んでいる。カットの中央にうまく来るようにしているらしい。巧み。

で、ほかの部分は非常に透明度の高い「ウォーターオパール」。普通のオパールは「ここが何色に輝きますよ」と分かるのだけれど、透明度の高いウォーターオパールは、透明で何もない部分から不意に光が出現するので、とても素晴らしいと思うのです。典型はこちら
つまり、全体を青く染めている部分と、高質なウォーターオパールとのドッキング。バイカラーとも言えるか。
なんかすごい、奇跡のオパールではないでしょうか。(大げさじゃない?)
産地は「エチオピアらしい」とのことで詳細は不明。

オパールというのは奥が深い。ボルダーだのカンテラだのハニカムだのナッツだのノビーだのとえらく名前も多い。値段もけっこうする。贋作もちょぼちょぼある。危険なのであまり踏み入りたくない。(危険はないだろw)
そもそも本来は固体でも鉱物でもない、石と言えるのかどうかも危うい石。
結晶しないくせに最密充填構造とやらを作るというわけわからん物質。
謎ですねえ。


トロナ

2025-02-28 09:26:49 | 単品

近代以前のガラス製造の立役者ですね。
Trona。特別の和名はない。ナトロンとも。
Na3H(CO3)2・2H2Ol または NaCO3・NaHCO3・2H2O。
つまりは炭酸ナトリウム(炭酸ソーダ)と重炭酸ナトリウム(重曹)の合体。別名セスキ炭酸ナトリウム。なんかややこしい。掃除に使うセスキ酸ってこれかよ。何か新しい化合物かと思っていた。
ちなみにナトリウムはドイツ語系でソーダは英語系。日本では両方使うからややこしい。炭酸水をソーダというのは昔は重曹を使って作っていたからだそうで。重曹を飲んでいたわけだ。ナトリウム過多になるね。あ、「ワタナベのジュースのもとですもう一杯」という粉末のソーダの素を覚えている。あれ舐めるとじゅわじゅわしておいしかった。(やめなさい、誰も知らないw)

トロナは湖水(淡水)の蒸発によってできる。
古代のガラスは植物の灰を使った「カリガラス」だったが、えらく手が掛かるので、やがて湖水塩のトロナを用いた「ソーダガラス」が主流になっていった。こちら参照。
近代になってから、炭酸ソーダも重曹も化学合成が主流になったけれど、いまだに天然トロナを使用することも多く、特にアメリカでは多量に出るために商業採取されているとのこと。
で、ようやくご本体。



半透明でなかなか美しいではないですか。ちょっとセレナイトに似ている。夭折する美少女のようなはかなげさ。(何じゃそりゃ)
アメリカ、カリフォルニア州のデスバレーにあるサールズ湖産。「Searles」はシアリスとかシアルスとか書かれるけど、サールズが正しいみたい。開拓した米人名から。
デスバレーは海抜マイナスの部分も多く、水が流れ込んでは蒸発するので、様々な物質、鉱物が出る。サールズ湖はほとんど干上がった湖で、地下水を汲み出し蒸発させてトロナを始め様々な鉱物を生産しているとか。これは天然結晶でしょう。こんなのをちまちま拾っていたら工業生産にはならないわな。

トロナとか岩塩=ハライトとかジプサム/セレナイトといった鉱物は、湖水や海水が蒸発してできたもので、地中で圧力や熱を受けてできた鉱物ではない。だから何となく「鉱物と言えるのかねえ」みたいなイメージがある。水で溶けちゃうのもあるしね。コールマナイト、コキンバイト、カルカンサイトなんかもその類ですかね。
岩塩なんかは、すごく美しい青やピンクのものが出回っているけど、どうも「塩じぇね?」とか「絶対溶かすぜ」という思いが先に立って買えない。塩のくせに高いし。
このトロナだって、うかうかしていたら溶けてしまうでしょう。気をつけなきゃ。
しかし、古くからガラスを作り上げてきた立役者。ありがたく拝みましょう。
なめるとちょっとしょっぱくて苦い。(なめるなー)


アフガン産アウイン

2025-02-23 09:58:17 | 単品

アウインというと、前に上げましたが、ドイツのアイフェルで出る、美しい青の、しかしとてつもなく小さい石が定番でしたが。
このところあちこちで見ます。アフガニスタン産アウイン。ちと高かったけど、やはり見たかったのです。詳細な産地名は不明。

左右9ミリと大きい。少し色が濃い。大きいから当然なのかも。でも青が美しい。透過光で見ると、まさしくアウインの色。



ふうん、アフガニスタンでも出るんだあ。
と思ったけど、例の「ラピスラズリ問題」で書いたように、

実は世界で出るラピスラズリのほとんどはアウインから成っている

という mindat の衝撃の説がありまして。(またあのややこしい話かよ)

・ラピスラズリは主にアフガニスタンで取れる美しい青色「岩石」の古くからの名前。しばしばカルサイト、パイライトを含む。
・米のデーナ分類ではその青い鉱物成分もラピスラズリだとしたが、今は廃説。岩石名だから「ラピスラズリの結晶」というような表現は不適。
・19世紀に青い鉱物成分はラズライト(Lazulite、天青石)と命名されたが、その後それはアウインだとされる。
・21世紀になって改めてそれはアウインではなくラズライトだとされる。
・しかし世界で出るラピスラズリの多くはアウインを青色主成分とするとされる。
・超稀少な顔料「ウルトラマリン」はラズライトからしか採れない。
・ラズライトは蛍光しないがアウインは蛍光する。

はい、このアフガン・アウインもちゃんと蛍光します。

しかしアフガニスタンでもアウインがぼこぼこ出るとなると、アフガン・ラピスも多くはアウイン・ラピスではないかという疑いが出てくる。どうなんですかね。確かに蛍光するラピスは多い。
おまけにアフガニスタンではやはり青が美しいアフガナイトという鉱物も出て、それもラピスラズリの成分となったりするのでさらにややこしい。
本当にウルトラマリンが採れる「真正ラズライト・ラピスラズリ」はどのくらいあるのでしょうか。

はあ、めんどい。誰かちゃんとした学者さんが解明してくれませんかねえ。

まあ、くしゃみをすると飛んでしまうアウインではない、しっかりとしたアウインがあるというのは、とてもいいことですね。よくわからんけど。(何だよその感想はw)