貧乏石好き

つれづれなるままに石をめぐりてよしなきことを

岐阜県黒川産麦飯石

2024-11-27 20:50:29 | 国産鉱物



岐阜県加茂郡白川町黒川産「麦飯石」。「むぎめしいし」ではなく「ばくはんせき」と読む。
姿は確かに粒々が入っていて麦飯っぽいですな。
麦とろはもちろんのこと、麦飯というのはなかなかおいしいと思うのだけれど、昔、あちきの母親は「麦飯なんて冗談じゃない」と顔をしかめていた。山村の貧困の象徴のようなものだったのでしょう。ちなみに昔の麦飯は米3:麦7、今は米7:麦3とのこと。おまけに食べやすくした「押し麦」も昔はなかった。押してない麦7割の麦飯はけっこうハードだったかもしれませんな。
でも大麦というのは健康にはよろしいようで(もうやめなさい)

日本ではこの産地でしか出ない「多孔質石英斑岩」。
多孔質だから軽い。ちょっとお菓子みたいな感じがある。




説明や来歴はややこしい。要点のみを並べると、
・昭和20年代に地元住民が特異な石を発見、それを「炊いた」水を飲んで心臓病が治り、評判になった。
・昭和34年に岐阜薬科大学で分析、益富壽之助(日本地学研究会館創立者)が中国明代の『本草綱目』に出る薬石「麦飯石」であると判定。
・昭和51年『麦飯石美容・健康法』が主婦の友社から刊行。
・複数の業者が採掘販売していたが、いずれも消滅。現在は地元住民によって設立された会社が採掘販売している。
・白亜紀後期の「飛騨流紋岩」に貫入した石英斑岩が部分的に方解石になり、それが溶出して多孔質岩石になったもの。ううむ。よくわからない。石英斑岩が方解石になるってどういうこと?
・日本ではこの地域にしか見られない。理由は不明。
・多孔質岩石・鉱物は吸着濾過作用がある。沸石(人造含む)は現在さかんに利用されている。
・岩石成分の溶出とその医学的効用は微妙で明確な科学的証明はない。

詳しくはこちら

もろもろっとした質感もなかなか味わいがあっていいですし、ここでしか出ないというのだから、珍石ではないですか。もっと有名になってもいいように思います。


アークナイト

2024-11-24 10:20:04 | 国産鉱物

まあ何というか、半分冗談のような名前。
四国の剣山近辺で出る「地方銘石」。案外人気があるようで、赤とか紫の美しいものはけっこう高い。これはミニサイズのお安いもの。

なかなかきれいではないですか。玉髄、アゲートでしょうか。
手前の色のない方は、表面に小さな光がキラキラと輝く。コランダムか何かか?

で、なんで「アークナイト」か。

《剣山にダビデ王が預言者モーゼから授けられた聖櫃(アーク)が眠っているという逸話から命名された石です。》

いわゆる「日ユ同祖論」系の世界観ですね。ユダヤの「失われた十支族」の一部が日本に渡ってきたというお話。オカルトとされますけど、ユダヤ人の団体が真面目に調査をして、インドシナや日本に手掛かりを見つけたといった話もあります。
古代日本に様々な技術をもたらした秦氏がユダヤ人だったとか、古い神道で祭礼に使われる祭具が古代ユダヤのものにそっくりだとか、言葉にそっくりなものがあるとか、いろいろな話があります。
かなり昔、テレビ番組で四国山中の岩にヘブライ文字が刻まれているという映像を見たことがあります。偽造かもしれませんけど。
あちきも最初は「まさかね」と思っていたのですけど、山伏が修行の時に前頭部につける六角形の兜巾(ときん)というものがありまして、「何じゃいありゃ」とかねがね思っていたのが、何とユダヤにそっくりなものがある。「ヒラクティリー」と言って、祈りの時にヘブライ聖書の言葉を収めた小さな小箱を前頭部にくくりつけるのです。それを見た時はちょっと腰を抜かしました。
古代には人の長距離移動はなかったなどと考えるのはむしろおかしいので、色々な所のいろいろな人が日本にやってきたということはあり得ないことではない。そしてそういった人々は持っている技術や呪術で糊口を凌いだかもしれない。
まあ半分面白がりながらこの手の話を渉猟するのは楽しいことです。

しかしなぜ剣山か。四国で修験道のメッカは石鎚山。剣山は近世末まで山名も安定しなかったマイナーな山。しかし逆にだからこそ、秘密の集団の隠れ里になったのかもしれませんね。険峻な山みたいですし。何かしら秘宝が眠っていてもおかしくない。誰か掘ってみてください。

とまあ、虚実ないまぜの逸話・神話がしばしばまとわりつくところも「地方銘石」の面白さではないでしょうか。


ヒデナイトとクンツァイト

2024-11-20 20:39:07 | 単品

スポデューーーメン。(変に伸ばすな) じゃあスポヂュメン。(こら)
変な名前。和名でもリシア輝石だったりリチア輝石だったり定まらなくて気持ち悪い。通称のほうがいいですな。

薄緑のものをヒデナイトと呼ぶ。けど、あんまり色がはっきりした標本は少ない。先日、けっこうちゃんと色が出ているミニ原石があったのでゲット。ブラジル産。

この淡ーい緑、いいんですねえ。じわじわ来る。この手のものは他にあるかな。ペリドットやガーネットの緑とも違う。クロムによる発色だそうですけど。

クンツァイトはピンク。大きくて素晴らしいものを前に上げたけど、ヒデナイトと同じヤフオク出品者さんで濃ゆい色のものが出ていたので一緒にゲット。これもブラジル産。

透明度は少し落ちるけど、かすかに紫が入るこの色もいいですねえ。

スポデューメンは LiAlSi2O6。リチウムは原子番号3の、とんでなく軽い金属。水より軽い。昨今は蓄電池素材として奪い合いになっているヤバイ物質。いやですねえ、人間は貪欲で。
そんな軽やかな特殊金属のせいでスポデューメンもこの世ならぬ軽やかな美を見せているのかもしれません。

しかしやっぱり石は色だねえ、と思う。トパーズの「あるかなきかの色」もよかったけど、このスポデューメンの淡い色もまた素晴らしい。小さくても、形が立派じゃなくても、こういう色が味わえる石はいい。
絵画の色、ガラス・陶磁器の色、自然の移ろう色。いろいろ美しい色はあるけれど、石の色は、凝縮して、確固として、深さがあって、とりわけ素晴らしいと思う。古来、人々が宝石に熱狂してきたのも、何か理由があるような気がする。
唯物論者から言わせると、鉱物の美などというものは、たまたまそこにある種の元素が集まってたまたま純粋な形状を作っただけであって、特別な意味はないし、地学的に重要でもない、ということになるのかもしれません。けれどそこには確かに美がある。人間はそこに何かを感知・感得する。
ガイアは偉大。人間はその偉大さを感得しうる奇妙な存在。違いますかね。
もっとも、別の生物種はその生物種なりの、人間とはまったく異なる、ガイアの偉大な姿や美しさを見ているのかもしれませんけど。


色トパーズ

2024-11-17 10:47:06 | 単品

トパーズの魅力というのは奥が深いようで、少しわかったようなわからないようなという状態ですけど、このところ色つきトパーズの魅力に惹かれています。
まずはメキシコ産の黄色味を帯びたもの。

クリワさんでのプチプラものだけど、とても豪奢。ゴールデン・トパーズと言ってもいいかも。

小さなブラジル産インペリアル・トパーズ。

黄色にほんのりピンク・オレンジが入る。黄色が強いもの、オレンジが強いもの、とあるけどこれは中間でその微妙さがとてもいい。

そして未処理のブルー・トパーズ。ブラジル産。

放射線処理の鮮やかな「ロンドンブルー」「スイスブルー」とは違って、ごく薄い青。
透過光だとより色がはっきりする。

どれも「あるかなきかの色」ですけど、わさわさっとした密な質感と、表面の輝きが相まって、とても魅力的。水晶の色つきとはまた全然違う味わいですね。
何だろう、見ているとしみじみとした気持ちになって、とてもいいんですわ。


トルマリン

2024-11-13 22:30:24 | 単品

フローライトほどではないにしても、沼が深く、熱烈なファンも多い石ですね。
あちきはあんまり近寄らないようにしていて、たまーにちょっと触っては逃げるという繰り返し。(なんか煮え切らん態度w)
有名どころでは、ウォーターメロン、バイカラー、パライバなんてのがありますね。
どれもだいたい高いけど最近はさらに高騰しているとか。もっとも円安で海外物はどれもでしょうけど。石屋さんも大変だ。出品を中止しているところぽちぽち。
あちきなんぞの出る幕ではないのだけど、ちょっと変わりものを。
まずはイエロー・トルマリン。あんまり多くないみたい。エヌズさんやVecさんにもない。特別な宝石名がないというのもあまり流通しないからかも。
茶色っぽく濁ったビーズなんかは安価であるけど、純粋な黄色のルースなんかはけっこう高価。
これはヤフオクで出ていた小さな原石。澄んだ原石なんてけっこう珍しいのではないかと思うのだけど、安かった。ザンビア産。



ほのかな色がいいですね。トルマリンの色というのは、どことなく渋さがある。うちのカミさんは「昭和ガラスみたい」と表現したけど、確かにそんな感じ。この黄色も少し渋みを帯びてなかなかの味わい。

そしてベルデライト。グリーン・トルマリンの宝石名。ヴェルデはラテン語の「緑」由来で、英語だとヴァーディライトでしょうけどね。東京ベルディのファンはこれを持たないといけないでしょう。(おいw)
エヌズさんより。ミナスジェライス産。

深い緑でちょっと見は暗いのだけど、差し込む光が結晶面で反射してちらりちらりと美しい青緑が輝く。ちょっとぞくっとしますね。



透過光だとかなり明るい緑になる。

派手ではないけど、奥深い感じのするいい石です。

まあ人気の中心をはずすというのは、人間がひねくれているからでしょうかね。(そうだろうね)