貧乏石好き

つれづれなるままに石をめぐりてよしなきことを

シガール産アクアマリン

2024-12-31 10:19:36 | 単品

大つごもりですね。
とんでもないことが起こる年のような気がしてましたけど、それほどでもなく。
まあ来年あたり……(不吉なことを言うでない)

澄んだ氷のような石を。

泣く子も黙る、パキスタン、シガール渓谷産のアクアマリンでごわす。
アクアマリンはウクライナ産で卒業、と思っていたのですけど、ヤフオクで名産地のキリっとした結晶が比較的お安く出ていたので、ついポチっと。(ミーハーw)
色は薄いのだけど、この毅然とした結晶の姿はさすが。中の不均一が微妙な反射を作り出して、とても魅力的。
双晶で、上から見るとちょっとハート型。オジジがハートなんて言うのは気持ち悪いか。

まあやっぱりシガール産はひとつくらい持っていてもいいでしょう。

     *     *

しかし、オジジが進行してまいりまして、目はかすむは、耳は遠くなるは、あちこちの筋肉にガタは来るは、さらには生命エネルギーも低下するは、懐は寒くなるは、というていたらく。
そろそろ石集めもおしまい。(などと言いつつポチっとしてるじゃんw)
ブログ更新も間延びしつつありますが、もう少し続くとは思いますので、来年もまたぼちぼちとお付き合いください。
よいお年を。


レインボー・ラティス・サンストーン

2024-12-29 12:02:20 | ややレア

このところちょこちょこ見ますね。
割と高いのですけど、少し安めであったのでポチっと。それでも貧石価格オーバー。
普通に見ると濁った色のただの石。

けど、ふっとある角度になるとぼわっとイリデッセンスが出る。

タンザニア産。写真だとなかなかキラキラは捉えられないんですけど。
このぼわっと出てうわとなるの、やっぱびっくりです。(ひどい表現w)
裏面も同じようにイリデッセンスが出る。



サンストーンやラブラドライトの虹色キラキラは、斜長石の微細な成分の違いが層になっていてできる。これも層構造になっているのだろうけど、垂直方向も劈開面がある。うむむ。わからん。

しかし不思議ですねえ。
結晶の面なんかが決まった角度でできるというのは、まあ分子の結合の形がそうなんだろうからということでわかるような気がする。
けれど、こういう拡がりになっていて、そのどこもがきちんと同じ角度を描いているというのは、実に不思議じゃありませんか。
前に上げたセルサイトのだまし絵針針姿も、離れたところで同じ角度で結晶が生えてたけど、あれも同じ伝ですな。
何を当たり前のことを言ってると言われるかもしれないけど、やっぱり不思議ですよ。


恋路海岸の霰石(アラゴナイト)

2024-12-22 10:33:47 | 国産鉱物

こんなものがネット市場に出るとは思いませんでした。
能登・恋路海岸の霰石。ヤフオク。あまり高くならずに落札できたのはラッキーか。

これ、前に「カルサイト・アラゴナイト問題」の記事でちらっと触れているのですけど、その時は「マニアの間の秘密」かなあと思って、産地名は出さなかったのです。深掘りもしなかったので、記述が間違ってもいた。ところが、ちょっと調べてみると、これ、金沢大学の資料館にも収蔵されているけっこう有名な石らしいということがわかりました。
能登半島の先端近い恋路海岸で、波打ち際に散らばる玄武岩を割ると、中にアラゴナイトが出ることがある。六角柱の放射状・放射球状クラスターもしばしば見られる。金沢大学のものは少し大きめの六角柱結晶。ネットから拝借。

セラドナイトやアポフィライトも付随することがある。とのこと。
オークションの説明には
《古くから有名な古典的産地の標本です。約30年前に採集されたもの。美しい紫色結晶の放射集合体です。現在では採集は難しいとのこと。》
と書かれているけど、ネットにはわりと最近の収集報告もある。
まあ、あんまり市場には出回らないようですけど。。

ただ珍しいだけではなく、美しい。
薄紫で結晶面には虹色が輝く。



緑色のはセラドナイトでしょうか。


「カルサイト・アラゴナイト問題」はえらく難解。アラゴナイトは一般的に高温・高圧環境でできると言われているが、海水沈殿や貝などでも生成される。
この恋路海岸のアラゴナイトは、玄武岩内の空洞にできているけれど、生成プロセスは不明らしい。セラドナイトなどと一緒に出るというから、地中深くの高温高圧環境でできたとは思えない。
セラドナイトは、KMgFe3+Si4O10(OH)2、雲母の一種だけれど主に土状で出る。高温高圧での生成ではなさそう。
高マグネシウム環境ではアラゴナイトができやすいというから、案ずるに、玄武岩中の空洞に炭酸カルシウムを含んだ水が浸み入り、玄武岩に含まれるマグネシウムの影響でアラゴナイトになったのではないか。しかし大きな結晶ができるには、相当量の熱水が必要でしょう。次々に入って来て結晶したということですかね。ううむ。謎。

不思議でとてもいい石です。お近くにお住いのハンターさんにはぜひチャレンジしていただきたいですね。


珍奇?ラブラドライト

2024-12-13 11:09:16 | 単品

この頃は「何じゃこりゃ?」と思う石もあまりなくなりまして、ちょっとつまらんと思っていたのだけど、久々に「何だよこれは」というのに出会いまして。



ラブラドライト。いろんな色で輝くシラー「ラブラドレッセンス」で人気の石。たくさん出てる。
しかしこんなん見たことない。
普通ラブラは磨いた表面の全面に美しいラブラドレッセンスが出る。青だったり紫だったり。
これは縞々。は?





さては、普通はラブラドレッセンスを美しく出すために層面に水平に磨くところを、へそまがりで垂直に磨いたのではないか?……

ラブラドライト Labradorite は斜長石(プラジオクレース・シリーズ)に属し、アノーサイトとアルバイトの比率が7:3から5:5のものを言う。組成式は (Ca,Na)[Al(Al,Si)Si2O8]。ややこしい。minndat から拝借。

ちなみに、グーグルAIはプラジオクレースを検索するとこんな要約を最初に出してくる。
「プラジオクレースは、長石の一種である斜長石(フェルドスパーグループ)に属する天然石で、ムーンストーンの変種とされています」
ムーンストーンの変種って何だよ。AIの現状ってこんなもんなんかい?

で、ラブラドレッセンスとは、ラブラドライト中でアルバイトとバイタウナイトが薄い層構造を作っていて、そこで反射光が干渉して美しい色の輝きを出す作用。この層を「離溶ラメラ exsolution lamella」と言う。
《高温でできた固溶体鉱物が、ゆっくりとした温度の低下で固体の状態で2種以上の鉱物に分離することがあり、これを離溶という。……離溶した鉱物には、1つの結晶中で別種の離溶した鉱物が直線的に配列している離溶組織という組織が見られる。》倉敷市自然史博物館「離溶組織
そしてラブラドライトの離溶ラメラの厚さは「128ないし252ナノメートル」だと言う。
おやおや、これでは層に垂直に切ったら目には見えないですな。

つまりはこの縞々は、「離溶ラメラ」の模様ではなく、ラブラドライト自体が作り出しているということになりそう。
輝かない部分は組成が違って「離溶ラメラ」が形成されなかったということですかね。
層に水平の部分は細くてわからないけどラブラドレッセンスは出てない。磨けば出てくるのかもしれないけど、どうもラメラは石の層に垂直にできてるみたい。

うーむ。わからん。
mindat のフォトギャラリーを見ても、多少筋模様になっているのはあるけど、これほどはっきりした縞々模様を見せるラブラドライトはない。
離溶でラブラドライトができて、その中でさらに離溶ができたということ?
しかもこの縞々、驚くほどにきっかりと直線的で輝きも美しい。

ひょっとするとかなり珍しいラブラドライトではないかな。


真っ黒ベスビアナイト

2024-12-08 10:33:32 | 国産鉱物

甲武信鉱山産ベスビアナイト。ヤフオクでめちゃ安かった。

真っ黒なベスビアナイトなんてあるんですね。
ベスビアナイトにはいろんな色がある。緑とかピンクとかが人気かな。黒なんて初めて見た。しかも国産。ちょっと珍しくないですかね。知らんけど。
結晶がかっきりして、黒光りして、とても美しい。

ベスビアナイトについては既出。組成がめちゃくちゃ複雑な石。
Ca19(Fe,Mn)(Al,Mg,Fe)8Al4(F,OH)2(OH,F,O)8(SiO4)10(Si2O7)4
mindat は簡略化したのを載せている。
Ca19Fe3+Al4(Al6Mg2)(◻4)◻[Si2O7]4[(SiO4)10]O(OH)9
って、あんまり簡単になってないw
mindat の結晶構造図はこんなん。

接触変成でできる代表的なスカルン鉱物とのこと。
どうやったらこんな複雑なものを組み立てられるのでしょうかね。「ふふん、どうじゃい」と言ってるやつがいるような気がする。(誰だよ)
しかしさあ、ベスブ石という変な和名、やめてもらえませんかねえ。

     *     *     *

石の色というのは素晴らしいものですけど、黒もまた素晴らしい。色がないのではなくて、黒く光っている。あちきはけっこう好きみたいで、黒い石はけっこう持ってる。
主な面々。
左からメラナイト、イルヴァアイト、エジリン、キャシテライト、イルメナイト、ビクスビアイト。



モリオン、ショール、那智黒、シュンガイトなんかも黒だな。
どれも黒なりにそれぞれの個性的な質感・輝きがあって美しいです。