私の発言は18分55秒~36分12秒のあたり。
6月5日、日本労働弁護団が、「#ライドシェア 」の実施に反対する緊急集会。
2人目のスピーカーとして、ハイタクフォーラムを代表して、私が「タクシー規制緩和の歴史と、それが労働者の生活に及ぼした影響」について、15分ほど(実際は1分ちょっと持ち時間超過)お話しをさせてもらった。
本日は、全自交労連、交通労連ハイタク部会、私鉄総連ハイタク協議会で組織、運動を展開しているハイタクフォーラムを代表して、タクシー規制緩和の歴史と、それが労働者の生活に及ぼした影響をお話しさせていただきます。
私たちは、ウーバーが、2015年2月に福岡で実証実験と称してライドシェアを展開しようとして以来、一貫してライドシェア阻止の運動を展開しています。
世界的に見ても利便性・安全性の高いタクシー、公共交通を持つ日本に、ライドシェアは不要です。
4月から、自家用車活用事業、日本型ライドシェアが始まっていますが、ライドシェア全面解禁やタクシーが足りないという現状の中での対案ということでは、しかたがないかと感じている部分もあります。
しかし、この制度は「二種免許」やプロドライバーとしての矜持という点で納得はできず、そもそも運転者不足は賃金や労働条件の改善で確保すべきであることは言うまでもありません、ということは主張します。
そして、タクシー運転者資格、二種免許のない、一種免許の運転者が、事業用自動車、緑ナンバーで、有償運送を行うことも許されており、これは、利用者に対する欺瞞であり、緑ナンバーに対する利用者からの信頼を崩壊させる行為であるということ
ドライバーの選任については、運輸規則第36 条を適用し、雇用契約によるものとすること、「公共の福祉を確保するためやむを得ない」事由が消滅した際には、速やかに供給を停止すること、などの問題についても、引き続き主張していきます。
さて、規制緩和など、過去からのタクシー事業の流れです。
タクシーの事業者団体が提供してくれた資料(TAXI TODAY in Japan 2023)の、17ページを見ながらお聞きください。
私は1988年、23歳の時にタクシードライバーになりました。当時、大阪では一番若いタクシードライバーでした。
まだバブルの頃というのもあって、売上は上がりましたし、20代であっても年収は500万円と稼げていました。
休んでも同僚に迷惑がかかる仕事ではないですから有給休暇はしっかり取ることが出来、そして自動車運転者は、労務改善基準告示で労働時間規制が厳しいこともあって、月間の労働時間は多くて200時間程度、と、前職のサラリーマン時代と比較すると、賃金が増え、家族や趣味の時間が増えるなど、なんていい仕事なんだ、と思っていました。
そのうちバブルがはじけて、景気が悪くなって、状況は悪くはなりましたが、それでもがんばれが何とか稼げていました。
状況が大きく変わったのは、2002年の規制緩和です。
3ページとか、7ページのあたりを見ながらお聞きください。
道路運送法が改正され、需給調整規制が廃止、新規参入や増車、増車とは保有車両数を増やすことですが、自由化され、運賃や料金の規制も大幅に緩和されました。
全国で、雨後のタケノコかのように、新規参入に増車で、町中にはタクシー車両があふれかえりました。
ワンコインタクシーや、深夜割増運賃を取らない会社、大阪では5000円以上を半額にするという遠距離割引運賃がスタンダード化する等、ただでさえ景気の落ち込みでタクシー需要が落ちているのに、熾烈な運賃ダンピング競争が勃発しました。
稼ぐためには少しでも長い時間走りたいと、入庫せずに家にタクシーを持ち帰ったり、大阪空港などでは長距離客を狙うためにタクシーに生活道具を積み込んで、乗り場で寝泊まりする運転者、長時間労働で疲れたのか、ちょっと裏通りに入ると、仮眠をとるタクシーが、死んでるんじゃないかと思うほどにいました。
また、「企業内個人タクシー」と称して、運転者との雇用契約をあいまいにし、所得税や消費税の納税、社会保険料の事業主負担をおこなわず、点呼などもせずに、タクシーの車両表示を外して、自家用車として通勤などに利用させる事業者などが登場しました。
私の出身は京阪神で営業している阪急タクシーですが、うちはかなり労働時間管理にはうるさい会社なのです。
もちろんいいことなんですが、それじゃあ稼げないと、運行管理が緩い、いや、事実上ないタクシー会社に移っていく仲間、もはやタクシーには見切りをつけて、他の業種に転職していく仲間が多数発生しました。
残っているのは、労働市場厳しい折ですし、いい転職が見込めない中高齢の先輩方か、年金もらいながらなのであくせく働かなくてもよい高齢者が残り、うちの阪急タクシーの場合、規制緩和までは運転者の平均年齢が40歳代前半だったのが、一気に50歳代後半まで上がってしまいました。
昭和30年代の神風タクシーとまでは言いませんが、こんな過当競争ですから、無謀運転や過労運転による事故は増加しました。
さらには客待ちタクシーによる渋滞で都市交通の麻痺や渋滞を各地で発生させました。
大阪の梅田新道というところでは、国道2号線で、客待ちタクシーが全車線をふさぎ、救急車や消防車さえ、立ち往生するほどで、社会問題になるほどでした。
タクシー労働者の賃金の低下もすさまじく、タクシーはワーキングプアの代表格とまで言われる状態となりました。
2006年1月14日、NHKスペシャルでは「タクシードライバーは眠れない~規制緩和・過酷な競争~」という特番が放映され、タクシー業界の厳しさが広く知られるようになりました。
そうなってくると、タクシーは稼げない、と、運転者の減少がさらに進んでいきます。
誰もやってくれませんよ。
当時、政府の規制改革を推進する会議で長らく議長を務めたのが、オリックスの宮内さんですが、新規参入や増車する会社は、タクシー車両を調達するのにオリックスでリースし、オリックスで自動車保険に加入し、ってことで一番儲けたのは彼だけではなかったのでしょうか。
「企業内個人タクシー」については、お配りしていますが、2008年に国土交通省は「タクシー事業における名義貸し行為の判断基準」という通達を発出。
雇用関係については、運転者との雇用契約が締結されていない、社会保険料や源泉徴収が行われていない、
経理処理関係では、運賃・料金収入の全額が、事業者収入に計上されていない、事業運営に要する経費を許可事業者が負担していない、
運行管理関係では、点呼が適切に実施されていない、指導及び監督が適切に行われていない、
車両管理関係では、事業用自動車等の管理を事業者が行っていない、車両購入契約を許可事業者が行っていない、
事故処理関係では、事故発生後の交渉や損害賠償を事業者が行っていない、など、判断基準が示されており、個々の行為について道路運送法等に違反する事実が認められる場合は、当然、必要な行政処分等を行い、その是正を図る、また、運転者に対する労働基準法等に基づく適正な労働者保護がなされていないなど、所管法令以外の法令違反の疑いがある場合においては、関係機関と連携の上、その是正を図るとしました。
この労働者性の問題は、ニューヨークなどライドシェアが世界で巻き起こしてきた問題、日本でのフードデリバリーなどギグワーカーで発生している問題が、タクシーの規制緩和で、すでに日本で起こっていたともいえます。
その後、政府は「タクシーに市場原理は働かなかった」として規制緩和の失敗を認め、2009年に「特定地域におけるタクシーの適正化・活性化特別措置法」により、供給過剰になって問題が発生している地域について、新規参入と増車の禁止、運賃について上限下限運賃の設定を定めました。
2014年にこの特措法を改正し、タクシーの総量の削減と運賃についてさらに規制を強化するに至りました。
この法律によって、タクシー産業の危機を脱した、問題が解決したかというとそうとは言えないのが残念ですが、少なくとも最悪になるという状況は脱っしれかたと思います。
この特措法の効果で、供給過剰の状態は徐々に改善されていき、それに伴い、総運送収入や乗車人員の減少に歯止めは掛からないものの、1日1両当たりの売上は徐々に増加したことによって、運転者の賃金は、2010年を底に、微妙にですが回復していく傾向となりました。
しかし、再び状況が大きく変わったのは、2020年からのコロナ禍です。
外出の制限により、タクシーを利用する人が皆無となり、タクシーを走らせても、いつまで経っても乗ってくださる人を見つけられないという状況となりました。
運転者にとっては、走っても走っても、法定の地域別最低賃金しか稼げず、それなら休ませてもらって、雇用調整助成金を活用した休業補償をしてもらっている方がよっぽどいいし、タクシー事業者も車を止めている方が燃料代もかからないんで、いいんですが、しかし公共交通として、全休させるわけにもいかず…。
コロナ禍であっても、持病で通院しなくてはならない方もありますし、医療機関や保健施設、公共交通機関など、社会インフラなどで働くエッセンシャルワーカーをお送りしなくてはなりません。またコロナの検査施設から医療機関への輸送の要請もあります。
けっきょくタクシードライバーもエッセンシャルワーカーであり、公共交通としての責任もありますから、一定数の稼働は必要ですので、全国で、仲間は、そして事業者は頑張りました。
当初は、無線で呼ばれてお迎えに言ったら、宇宙服みたいな恰好をした人が、「この人、感染疑いだから病院までお願いね」と、まったく無防備な状態な運転者が、怖い思いをしたという報告が全国から上がっていましたが。
その後は、創意工夫しながら感染対策を施し、自治体によっては地方創生臨時交付金を活用し、運転席と後部座席との減圧など、高度な対策も取ってもらいました。
大阪の維新首長は一切、やってくれませんでしたが。
ただ、この間、感染症発生当初は、高齢の運転者、基礎疾患のある運転者は、自らの感染を恐れるあまり、または家族に懇願されて、多くの仲間がタクシー業界から去ってしまいました。
そして感染症が長引くにつれ、若い運転者が、いつになったら稼げるんだ、と、将来不安からこの業界を去っていきました。
全国の法人タクシーの運転者数は、コロナ禍の4年間で、6万人減少してしまいました。
このことで、5類移行後、人流がようやく回復したときに「タクシーが足りない」という声となり、ライドシェア解禁論者の都合のいい口実とされてしまいました。
現在のタクシーの状況です。
タクシーの運賃は、地域ごとに定められるものとされており、全国には101の運賃ブロックがあります。
規制緩和で価格競争が激しかったころは、なかなか運賃値上げが出来なかったのですが、車両購入費や維持費が上がっていますし、安全やサービスに対する費用も増加しています。
なにより運転者の賃金や労働条件も改善していかなければならない、ということで2020年より全国的に運賃改定が取り組まれており、今現在、全国すべて、101の運賃ブロックで運賃改定をさせていただいています。
これにより、運転者の売上げも上がっていまして、歩合給中心の賃金体系でありますから、増収すなわち、賃金アップとなります。
配布しています、2023年の、厚生労働省の賃金構造基本統計調査によりますと、タクシー運転者の推定年収は全国平均で419万円、前年より58万円アップしています。
タクシー運転者の過去のピークが、1991年の430万2800円、それに迫る数字になっています。
運転者数の多い東京・神奈川・大阪が平均を大きく上げているようでありまして、一方で17府県が昨年より減となっているので、地域によって差がある点は注視が必要だと思っていますが、順次、運賃改定が実施されていますので、今後も賃金改善のトレンドは続くと思われます。
タクシーは稼げる。
そうなると、他業種からタクシーに転職される方が多くあり、また、一度、この業界から去った仲間も戻ってきてくれています。
タクシーが足りないと言われますが、今現在、確実に、運転者は都市部から増加に転じています。
この賃金改善と運転者の増加を、ライドシェア解禁の動向が水を差すことを懸念しています。
ドアツードアの公共交通、個別輸送機関としての公共交通であるタクシー。
それを、整備が充分であるかどうかわからない自家用車や、酒気帯びかどうかさえわからない、教育も管理もろくにされていない素人運転手をあてにするのではなく、プロドライバーである私たちに任せてくれませんか。
ついでながら言っておきますと、二種免許って、試験自体が難しいだけでなく、視力検査は、一種より厳しい、片眼で0.5以上両眼で0.8以上の視力が必要です。
さらに、深視力という立体視における遠近感や立体感を測る検査において合格する必要があります。
これは一種免許ではありません。
免許の更新の際、私も先月、免許の更新でしたが、この深視力の検査、緊張します。
これに通らないと、二種免許がはく奪されてしまいますから。
自分はコンタクトですが、いつも眼鏡を二種類持っていきますが、今回はちゃんと1回で合格しました。
お酒に関して、道路交通法では、呼気1リットル中アルコールが、0.15mg以上だと酒気帯び運転とされますが、事業用自動車の運行管理規則によって、プロドライバーは0.01㎎であっても、アルコールが検出されると酒気帯びとなり乗務させられません。
プロドライバーは、勤務前日のお酒の飲み方にも細心の注意を払っています。
人命を預かるプロドライバーがプロであるのには、理由があると思っています。
医者が足りないからといって、医大生や看護師に医療をさせようとはならないと思います。
弁護士が足りないからといって、法律に詳しい人に弁護をさせてもいいとはならないと思います。
タクシーだと、なぜライドシェアなのでしょうか?
保育士が足りない、看護師が足りない、介護士が足りない、それなら処遇改善加算で、税金で賃金の改善をしてあげよう、となるのに、
どうしてタクシードライバーが足りないと、ライドシェアなのでしょうか。
私たちは、徹底して、ライドシェア新法阻止、ライドシェア解禁阻止のために運動を展開していきます。
ご清聴ありがとうございました。
【12🏃Run5-30 5.10km 34:13 枚方河川敷公園】
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