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【こうなってるの知らなかった】夫婦共同扶養の場合における被扶養者の認定について

2024-05-24 | 書記長社労士 法改正 社会保険

 「夫婦共同扶養の場合における被扶養者の認定について (令和3年4月30日/保保発0430第2号/保国発0430第1号/)」、この通達を知らなかった。
共働きの場合の被扶養者の認定について、以前は男性(夫)の年収が女性(妻)の年収よりも多い世帯が大半だったが、共働き世帯の増加に伴い、両者の年収が同程度または逆転している世帯も増えている。これにより、2021年8月に、夫婦共に健康保険の被保険者であり、2人で子ども等を扶養する場合(共同扶養)の被扶養者の認定基準が見直され、具体化かつ明確化されていた。

①被保険者の年間収入(過去の収入、現時点の収入、将来の収入等から今後1年間の収入を見込んだもの)が多い方の被扶養者とする。
②夫婦の年間収入の差が年収の多い方の10%以内である場合は、「主として生計を維持する者」の被扶養者とする。

 昭和60年の通達((昭和60年6月13日付け保険発第66号)では、

①被扶養者とすべき者の員数にかかわらず、年間収入の多い方の被扶養者とすることを原則とすること。
②夫婦双方の年間収入が同程度である場合は、被扶養者の地位の安定を図るため、届出により、主として生計を維持する者の被扶養者とすること。

 ということで、「同程度」があいまいであって、「主として生計を維持する者の被扶養者とすること」てことでかなり緩い感じで、ただ、共済と国保との関係においては踏み込んでいた程度だった。
たしかに、協会けんぽ、健保組合、国保など各保険者にとっては、被扶養者を抱えるとその医療費などの費用に対する保険者負担が増えるわけで、ましてや夫婦間で収入が低い方(標準報酬が低いわけで保険料が安い)の被扶養者をなんでこっちで抱えなあかんねんってなるのはわかるが。
ただ、夫婦間で、収入の低い方の勤務先の方が、家族手当などの支給対象や福利厚生の対象の条件が健保の扶養家族に限定されていた場合などもあって、昔は、その辺、厳密に運営されていなかったことをいいことに、夫婦で選ぶ余地があったと思うねんけど。
今はあかんのか😅

 そういえば、自分の出身の会社では、自分が執行委員(組織部長)の時に、労使で運営している共済会の慶弔規定のうち、出産手当・小学校・中学校の入学祝い金などの対象が「健保の扶養家族」ってなってたのを廃止して、住民票上の家族関係に変えてもらったことを思い出した。

○夫婦共同扶養の場合における被扶養者の認定について
(令和3年4月30日)
(/保保発0430第2号/保国発0430第1号/)
(都道府県民生主管部(局)国民健康保険主管課(部)・全国健康保険協会・健康保険組合・健康保険組合連合会
・地方厚生(支)局あて厚生労働省保険局保険課長・厚生労働省保険局国民健康保険課長通知)
(公印省略)
 夫婦共同扶養の場合における被扶養者の認定については、「夫婦共同扶養の場合における被扶養者の認定について」(昭和60年6月13日付け保険発第66号・庁保険発第22号通知。以下「昭和60年通知」という。)により対応いただいているところであるが、令和元年に成立した医療保険制度の適正かつ効率的な運営を図るための健康保険法等の一部を改正する法律(令和元年法律第9号)に対する附帯決議として、「年収がほぼ同じ夫婦の子について、保険者間でいずれの被扶養者とするかを調整する間、その子が無保険状態となって償還払いを強いられることのないよう、被扶養認定の具体的かつ明確な基準を策定すること」が付されたところである。
 これを踏まえ、夫婦共同扶養の場合における被扶養者の認定について、今般、別紙のとおり行うこととしたので、円滑に運営いただくとともに、都道府県におかれては貴管内市町村(特別区を含む。)及び国民健康保険組合に周知いただくようお願いする。
 なお、本通知をもって昭和60年通知は廃止する。
[別紙]
夫婦共同扶養の場合における被扶養者の認定について

1 夫婦とも被用者保険の被保険者の場合には、以下の取扱いとする。
(1) 被扶養者とすべき者の員数にかかわらず、被保険者の年間収入(過去の収入、現時点の収入、将来の収入等から今後1年間の収入を見込んだものとする。以下同じ。)が多い方の被扶養者とする。
(2) 夫婦双方の年間収入の差額が年間収入の多い方の1割以内である場合は、被扶養者の地位の安定を図るため、届出により、主として生計を維持する者の被扶養者とする。
(3) 夫婦の双方又はいずれか一方が共済組合の組合員であって、その者に被扶養者とすべき者に係る扶養手当又はこれに相当する手当(以下「扶養手当等」という。)の支給が認定されている場合には、その認定を受けている者の被扶養者として差し支えない。
 なお、扶養手当等の支給が認定されていないことのみを理由に被扶養者として認定しないことはできない。
(4) 被扶養者として認定しない保険者等は、当該決定に係る通知を発出する。
 当該通知には、認定しなかった理由(年間収入の見込み額等)、加入者の標準報酬月額、届出日及び決定日を記載することが望ましい。
 被保険者は当該通知を届出に添えて次に届出を行う保険者等に提出する。
(5) (4)により他保険者等が発出した不認定に係る通知とともに届出を受けた保険者等は、当該通知に基づいて届出を審査することとし、他保険者等の決定につき疑義がある場合には、届出を受理した日より5日以内(書類不備の是正を求める期間及び土日祝日を除く。)に、不認定に係る通知を発出した他保険者等と、いずれの者の被扶養者とすべきか年間収入の算出根拠を明らかにした上で協議する。
 この協議が整わない場合には、初めに届出を受理した保険者等に届出が提出された日の属する月の標準報酬月額が高い方の被扶養者とする。
 標準報酬月額が同額の場合は、被保険者の届出により、主として生計を維持する者の被扶養者とする。なお、標準報酬月額に遡及訂正があった結果、上記決定が覆る場合は、遡及が判明した時点から将来に向かって決定を改める。
(6) 夫婦の年間収入比較に係る添付書類は、保険者判断として差し支えない。

2 夫婦の一方が国民健康保険の被保険者の場合には、以下の取扱いとする。
(1) 被用者保険の被保険者については年間収入を、国民健康保険の被保険者については直近の年間所得で見込んだ年間収入を比較し、いずれか多い方を主として生計を維持する者とする。
(2) 被扶養者として認定しない保険者等は、当該決定に係る通知を発出する。当該通知には、認定しなかった理由(年間収入の見込み額等)、届出日及び決定日を記載することが望ましい。
 被保険者は当該通知を届出に添えて国民健康保険の保険者に提出する。
(3) 被扶養者として認定されないことにつき国民健康保険の保険者に疑義がある場合には、届出を受理した日より5日以内(書類不備の是正を求める期間及び土日祝日を除く。)に、不認定に係る通知を発出した被用者保険の保険者等と協議する。
 この協議が整わない場合には、直近の課税(非課税)証明書の所得金額が多い方を主として生計を維持する者とする。

3 主として生計を維持する者が健康保険法(大正11年法律第70号)第43条の2に定める育児休業等を取得した場合、当該休業期間中は、被扶養者の地位安定の観点から特例的に被扶養者を異動しないこととする。
 ただし、新たに誕生した子については、改めて上記1又は2の認定手続きを行うこととする。

4 年間収入の逆転に伴い被扶養者認定を削除する場合は、年間収入が多くなった被保険者の方の保険者等が認定することを確認してから削除することとする。

5 被扶養者の認定後、その結果に異議がある場合には、被保険者又は関係保険者の申立てにより、被保険者の勤務する事業所の所在地の地方厚生(支)局保険主管課長(以下「保険課長」という。)が関係保険者の意見を聞き、斡旋を行うものとする。
 各被保険者の勤務する事業所の所在地が異なる場合には、申立てを受けた保険課長が上記斡旋を行い、その後、相手方の保険課長に連絡するものとする。

6 前記1から5までの取扱基準は、令和3年8月1日から適用する。



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令和6年4月からの年金額の改定 新規裁定者(67歳以下の人)、既裁定者(68歳以上の人)ともに、前年度から2.7%の引き上げとなる。

2024-03-18 | 書記長社労士 法改正 社会保険
 令和6年度の年金額は、法律の規定により、新規裁定者(67歳以下の人)、既裁定者(68歳以上の人)ともに、前年度から2.7%の引き上げとなる。


 年金額は、毎年度改定されるが、昨年度は、初めて新規裁定者と既裁定者が別々の改定率で改定された。
これまでは常に物価変動率が名目手取り賃金変動率を上回っていたため新規裁定者も既裁定者も同じ改定率(名目手取り賃金変動率を基準)で改定されてきたが、昨年度は名目手取り賃金変動率が物価変動率を上回ったため、年金額は、新規裁定者は名目手取り賃金変動率を、既裁定者は物価変動率を用いて改定されることになった。
そして、令和6年度は従来通り物価変動率が名目手取り賃金変動率を上回ったため、新規裁定者も既裁定者も同じ改定率で改定される。


①年金額改定のルールによる令和6年度の年金額
 年金額は、物価変動率や名目手取り賃金変動率に応じて、毎年度改定を行う仕組みになっていて、物価変動率が名目手取り賃金変動率を上回る場合は、支え手である現役世代の負担能力に応じた給付とする観点から、名目手取り賃金変動率を用いて改定される。
令和6年度は、物価変動率(3.2%)が名目手取り賃金変動率(3.1%)を上回ったため、新規裁定者・既裁定者共、名目手取り賃金変動率(3.1%)を用いて改定される。
さらにマクロ経済スライドによる調整が行われるので、令和6年度の調整率(▲0.4%)を用いる。
その結果、令和6年度の年金額については、名目手取り賃金変動率(3.1%)から▲0.4%のマクロ経済スライドによる調整が行われ、令和6年度の年金額の改定率は2.7%となる。

令和6年度のマクロ経済スライドによるスライド調整率(▲0.4%)=公的年金被保険者数の変動率(▲0.1%)+平均余命の伸び率(▲0.3%)

②新規裁定者と既裁定者
 老齢基礎年金・老齢厚生年金の支給開始年齢は、法律上の原則は65歳とされている。
また、新規裁定者は名目手取り賃金変動率、既裁定者は物価変動率で改定されるときは、64歳に到達する年度に行われる年金額改定までは名目手取り賃金変動率で改定し、65歳に到達する年度以降の年金額改定は物価変動率で行うことになっている。
 なお、名目手取り賃金変動率については、賃金の伸びの実績を3年平均して取り、賃金の実績値は2年度前のものしか取れないことから、年金制度においては、67歳までの人たちが新規裁定者、68歳以上の人たちが既裁定者となる。

③令和6年度の年金額
 以上のような年金額改定ルールにより、老齢基礎年金・老齢厚生年金の年金額は、昨年度から新規裁定者と既裁定者に分けて改定されることになったため、昨年度の基準年齢である昭和31年4月1日以前生まれの者と昭和31年4月2日以降生まれの者に分けて改定される。

〇国民年金
●老齢基礎年金
(令和5年度額)795,000円 *昭和31年4月1日以前生まれの人は、792,600円
  ⇓
(令和6年度額)816,000円 *昭和31年4月1日以前生まれの人は、813,700円

●障害基礎年金(1級)
​(令和5年度額)993,750円 *昭和31年4月1日以前生まれの人は、990,750円
  ⇓
(令和6年度額)1,020,000円 *昭和31年4月1日以前生まれの人は、1,017,125円

●障害基礎年金(2級)
​(令和5年度額)795,000円 *昭和31年4月1日以前生まれの人は、792,600円
  ⇓
(令和6年度額)816,000円 *昭和31年4月1日以前生まれの人は、813,700円

・子の加算(1人目・2人目)
​(令和5年度額)228,700円 ⇒ (令和6年度額)234,800円

・子の加算(3人目以降)
​(令和5年度額)76,200円 ⇒ (令和6年度額)78,300円

●遺族基礎年金(基本部分)
​(令和5年度額)795,000円 *昭和31年4月以前生まれの人は792,600円
  ⇓
(令和6年度額)816,000円 *昭和31年4月以前生まれの人は813,700円

・子の加算(1人目・2人目)
​(令和5年度額)228,700円 ⇒ (令和6年度額)234,800円

・子の加算(3人目以降)
​(令和5年度額)76,200円 ⇒ (令和6年度額)78,300円

〇厚生年金保険
・加給年金額(配偶者、1人目・2人目の子)
​(令和5年度額)228,700円 ⇒ (令和6年度額)234,800円

・加給年金額(3人目以降の子)
​(令和5年度額)76,200円 ⇒ (令和6年度額)78,300円

・老齢厚生年金に加算される配偶者加給年金額(老齢厚生年金受給権者が昭和18年4月2日以後生まれの場合)
​(令和5年度額)397,500円(228,700円+特別加算額168,800円)
  ⇓
(令和6年度額)408,100円(234,800円+特別加算額173,300円)

・老齢厚生年金(経過的加算部分)の計算式
​(令和5年度額)
1,657円×厚生年金保険加入期間の月数(上限480月)-老齢基礎年金の満額795,000円×(昭和36年4月1日以降の)20歳以上60歳未満の厚生年金保険の加入期間の月数÷480月
*昭和31年4月1日以前生まれの人
1,652円×厚生年金保険加入期間の月数(上限480月)-老齢基礎年金の満額792,600円×(昭和36年4月1日以降の)20歳以上60歳未満の厚生年金保険の加入期間の月数÷480月
  ⇓
(令和6年度額)
1,701円×厚生年金保険加入期間の月数(上限480月)-老齢基礎年金の満額816,000円×(昭和36年4月1日以降の)20歳以上60歳未満の厚生年金保険の加入期間の月数÷480月
*昭和31年4月1日以前生まれの人
1,696円×厚生年金保険加入期間の月数(上限480月)-老齢基礎年金の満額813,700円×(昭和36年4月1日以降の)20歳以上60歳未満の厚生年金保険の加入期間の月数÷480月

●障害厚生年金(3級・最低保障額)
​(令和5年度額)596,300円 *昭和31年4月1日以前生まれの人は594,500円
  ⇓
(令和6年度額)612,000円 *昭和31年4月1日以前生まれの人は610,300円

●障害手当金(最低保障額)
​(令和5年度額)1,192,600円 *昭和31年4月1日以前生まれの人は1,189,000円
  ⇓
(令和6年度額)1,224,000円 *昭和31年4月1日以前生まれの人は1,220,600円

●遺族厚生年金の中高齢寡婦加算
(令和5年度額)596,300円 ⇒ (令和6年度額)612,000円

●在職老齢年金支給停止額計算における基準額
​(令和5年度額)48万円 ⇒ (令和6年度額)50万円

〇その他
●老齢年金生活者支援給付金
​(令和5年度額)月額5,140円 ⇒ (令和6年度額)月額5,310円

●障害年金生活者支援給付金(1級)
​(令和5年度額)月額6,425円 ⇒ (令和6年度額)月額6,638円

●障害年金生活者支援給付金(2級)
​(令和5年度額)月額5,140円 ⇒ (令和6年度額)月額5,310円

●遺族年金生活者支援給付金
​(令和5年度額)月額5,140円 ⇒ (令和6年度額)月額5,310円

●国民年金保険料
(令和5年度額)月額16,520円 ⇒ (令和6年度額)月額16,980円 ⇒ (令和7年度額)月額17,510円


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【メモ】年収の壁・支援強化パッケージ

2023-10-02 | 書記長社労士 法改正 社会保険

 9月27日、全世代型社会保障構築本部が持ち回り開催され、同日付けで、「年収の壁・支援強化パッケージ」が決定され、その内容が公表された。
従来から存在する「キャリアアップ助成金」に新たなコースを設けることにより実施するものでありその申請が必要であったり、そのためには所定労働時間を長くする取組み、時給を引き上げる取組みをすること、社会保険加入促進手当等の新たな手当を支給する必要があったり、もちろん事務負担の増加も伴うので注意が必要。
また、社会保険加入促進手当等の新たな手当を支給した場合、3年目に算定対象となったからといって簡単に廃止できない点にも注意。
もちろんいずれにしても、事業主の保険料負担は増える。
あまりにもややこしいだけの場当たり的な制度であって「厚生労働省もよくもまあ」という感じだし、しかも周知や報道の仕方がミスリードで、「社会保険に入っても自分の分の保険料は会社が負担してくれる」とか「助成金は自分に払われる」との勘違いの声がパートなどで働いている人から聞こえてきていて、ちょっと「まずいな」とも自分は感じているが…。
「年収の壁」への当面の対応策
いわゆる「年収の壁」への対応HP

「年収の壁」への当面の対応策( 「年収の壁・支援強化パッケージ」) 概要
 人手不足への対応が急務となる中で、短時間労働者が「年収の壁」を意識せず働くことができる環境づくりを支援するため、当面の対応として下記施策(支援強化パッケージ)に取り組むこととし、早急に開始する。さらに、制度の見直しに取り組む。

〇106万円の壁への対応
◆キャリアアップ助成金 ※省令の改正が必要
 キャリアアップ助成金のコースを新設し、短時間労働者が被用者保険(厚生年金保険・健康保険)の適用による手取り収入の減少を意識せず働くことができるよう、労働者の収入を増加させる取組を行った事業主に対して、労働者1人当たり最大50万円の支援を行う。なお、実施に当たり、支給申請の事務を簡素化。
 労働者の収入を増加させる取組については、賃上げや所定労働時間の延⾧のほか、被用者保険適用に伴う保険料負担軽減のための手当(社会保険適用促進手当)として、支給する場合も対象とする。
◆社会保険適用促進手当
 事業主が支給した社会保険適用促進手当については、適用に当たっての労使双方の保険料負担を軽減するため、新たに発生した本人負担分の保険料相当額を上限として被保険者の標準報酬の算定において考慮しない。

〇130万円の壁への対応
◆事業主の証明による被扶養者認定の円滑化被扶養者認定基準(年収130万円)について、労働時間延⾧等に伴う一時的な収入変動による被扶養者認定の判断に際し、事業主の証明の添付による迅速な判断を可能とする。

〇配偶者手当への対応
◆企業の配偶者手当の見直しの促進
 特に中小企業においても、配偶者手当の見直しが進むよう、
(1) 見直しの手順をフローチャートで示す等わかりやすい資料を作成・公表するとともに、
(2) 中小企業団体等を通じて周知する。



キャリアアップ助成金: 社会保険適用時処遇改善コース
 短時間労働者が新たに被用者保険の適用となる際に、労働者の収入を増加させる取組を行った事業主に対して、一定期間助成を行う
ことにより、壁を意識せず働くことのできる環境づくりを後押しするため、コースを新設し、複数のメニューを設ける。

社会保険適用時処遇改善コース
 新たに被用者保険を適用するとともに、労働者の収入を増加させる取組を行う事業主に対して助成。
 一事業所当たりの申請人数の上限を撤廃。
 令和7年度末までに労働者に被用者保険の適用を行った事業主が対象。
 支給申請に当たり、提出書類の簡素化など事務負担を軽減。



助成金活用イメージ< 手当等により収入を増加させる場合( 手当等支給メニュー) >
 被用者保険適用後、社会保険料相当額の一時的な手当支給を行った事業主に助成(最大2年間)。3年目以降、継続的な収入の増加に取り組むことが必要。

(注)・助成額は中小企業の場合。大企業の場合は3/4の額。
・①、②の賃金は標準報酬月額及び標準賞与額、③の賃金は基本給。
・1、2年目は取組から6ヶ月ごとに支給申請(1回あたり10万円支給)。
3年目は6ヶ月後に支給申請。
※1 一時的な手当(標準報酬月額の算定に考慮されない「社会保険適用促進手当」)による支給も可。
※2 基本給のほか、被用者保険適用時に設けた一時的な手当を恒常的なものとする場合、当該手当を含む。労働時間の延⾧との組み合わせによる増額も可。
また、2年目に前倒して③の取組(賃金の増額の場合のみ)を実施する場合、3回目の支給申請でまとめて助成(30万円)。

(2)労働時間延⾧メニュー(労働時間延⾧を組み合わせる場合)
<現行の短時間労働者労働時間延⾧コースの拡充>



助成金活用イメージ< 手当等と労働時間延⾧を組み合わせる場合( 併用メニュー) >
 被用者保険適用後、1年間は一時的な手当支給を行い、2年目以降、継続的な収入の増加に取り組む場合。
(3)併用メニュー
1年目に(1)の取組による助成(20万円)を受けた後、
2年目に(2)の取組による助成(30万円)を受けることが可能。



社会保険適用促進手当について
〇概要
○ 短時間労働者への被用者保険の適用を促進するため、非適用の労働者が新たに適用となった場合に、事業主は、当該労働者の保険料負担を軽減するため、「社会保険適用促進手当」を支給することができることとする。
※ 当該手当などにより標準報酬月額・標準賞与額の15%以上分を追加支給した場合、キャリアアップ助成金の対象となりうる。
○ 「社会保険適用促進手当」は、給与・賞与とは別に支給するものとし、新たに発生した本人負担分の保険料相当額を上限として、保険料算定の基礎となる標準報酬月額・標準賞与額の算定に考慮しないこととする。
※ 同一事業所内で同じ条件で働く他の労働者にも同水準の手当を特例的に支給する場合には、社会保険適用促進手当に準じるものとして、同様の取り扱いとする。
〇要件等
①対象者
標準報酬月額が10.4万円以下の者
②報酬から除外する手当の上限額
被用者保険適用に伴い新たに発生した本人負担分の保険料相当額とする。
※令和5年度の厚生年金保険料率18.3%、健康保険料率(協会けんぽの全国平均)10.0%、介護保険料率1.82%の場合の本人負担分保険料相当額
③期間の上限
最大2年間の措置とする。



事業主の証明による被扶養者認定の円滑化
〇概要
○ 被扶養者認定においては、過去の課税証明書、給与明細書、雇用契約書等を確認しているところ、短時間労働者である被扶養者(第3号被保険者等)について、一時的に年収が130万円以上となる場合には、これらに加えて、人手不足による労働時間延⾧等に伴う一時的な収入変動である旨の事業主の証明を添付することで、迅速な被扶養者認定を可能とする。
※ あくまでも「一時的な事情」として認定を行うことから、同一の者について原則として連続2回までを上限とする。


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【5月12日成立】全世代対応型の持続可能な社会保障制度を構築するための 健康保険法等の一部を改正する法律

2023-05-25 | 書記長社労士 法改正 社会保険

【改正の概要】
1.こども・子育て支援の拡充【健康保険法、船員保険法、国民健康保険法、高齢者の医療の確保に関する法律等】
① 出産育児一時金の支給額を引き上げる(※)とともに、支給費用の一部を現役世代だけでなく後期高齢者医療制度も支援する仕組みとする。
(※)42万円→50万円に令和5年4月から引き上げ(政令)、出産費用の見える化を行う。
② 産前産後期間における国民健康保険料(税)を免除し、その免除相当額を国・都道府県・市町村で負担することとする。

2.高齢者医療を全世代で公平に支え合うための高齢者医療制度の見直し【健保法、高確法】
① 後期高齢者の医療給付費を後期高齢者と現役世代で公平に支え合うため、後期高齢者負担率の設定方法について、「後期高齢者一人当たりの保険料」と「現役世代一人当たりの後期高齢者支援金」の伸び率が同じとなるよう見直す。
② 前期高齢者の医療給付費を保険者間で調整する仕組みにおいて、被用者保険者においては報酬水準に応じて調整する仕組みの導入等を行う。
健保連が行う財政が厳しい健保組合への交付金事業に対する財政支援の導入、被用者保険者の後期高齢者支援金等の負担が大きくなる場合の財政支援の拡充を行う。

3.医療保険制度の基盤強化等【健保法、船保法、国保法、高確法等】
① 都道府県医療費適正化計画について、計画に記載すべき事項を充実させるとともに、都道府県ごとに保険者協議会を必置として計画の策定・評価に関与する仕組みを導入する。また、医療費適正化に向けた都道府県の役割及び責務の明確化等を行う。計画の目標設定に際しては、医療・介護サービスを効果的・効率的に組み合わせた提供や、かかりつけ医機能の確保の重要性に留意することとする。
② 都道府県が策定する国民健康保険運営方針の運営期間を法定化(6年)し、医療費適正化や国保事務の標準化・広域化の推進に関する事項等を必須記載とする。
③ 経過措置として存続する退職被保険者の医療給付費等を被用者保険者間で調整する仕組みについて、対象者の減少や保険者等の負担を踏まえて廃止する。

4.医療・介護の連携機能及び提供体制等の基盤強化【地域における医療及び介護の総合的な確保の促進に関する法律、医療法、介護保険法、高確法等】
① かかりつけ医機能について、国民への情報提供の強化や、かかりつけ医機能の報告に基づく地域での協議の仕組みを構築し、協議を踏まえて医療・介護の各種計画に反映する。
② 医療・介護サービスの質の向上を図るため、医療保険者と介護保険者が被保険者等に係る医療・介護情報の収集・提供等を行う事業を一体的に実施することとし、
介護保険者が行う当該事業を地域支援事業として位置付ける。
③ 医療法人や介護サービス事業者に経営情報の報告義務を課した上で当該情報に係るデータベースを整備する。
④ 地域医療連携推進法人制度について一定の要件のもと個人立の病院等や介護事業所等が参加できる仕組みを導入する。
⑤ 出資持分の定めのある医療法人が出資持分の定めのない医療法人に移行する際の計画の認定制度について、期限の延長(令和5年9月末→令和8年12月末)等を行う。 等

【施行期日】
令和6年4月1日(ただし、3①の一部及び4⑤は公布日、4③の一部は令和5年8月1日、1②は令和6年1月1日、3①の一部及び4①は令和7年4月1日、4③の一部は公布後3年以内に政令で定める日、4②は公布後4年以内に政令で定める日)


【次期医療保険制度改革の主要事項】
Ⅰ.出産育児一時金の引き上げ
○ 出産育児一時金について、費用の見える化を行いつつ、大幅に増額(42万円→50万円/令和5年4月)
○ 後期高齢者医療制度が出産育児一時金に係る費用の一部を支援する仕組みを導入し、子育てを全世代で支援※高齢者医療制度創設前は、全ての世代で出産育児一時金を含め子ども関連の医療費を負担
Ⅱ.高齢者医療を全ての世代で公平に支え合う仕組み
○ 現役世代の負担上昇を抑制するため、後期高齢者医療における高齢者の保険料負担割合を見直し
⇒制度創設時と比べ、現役世代の支援金は1.7倍、高齢者の保険料は1.2倍の伸びとなっており、高齢者の保険料と現役世代の支援金の伸びが同じになるよう見直し。
⇒高齢者世代の保険料について、低所得層の負担増に配慮し、賦課限度額や所得に係る保険料率を引き上げる形で負担能力に応じた負担としつつ、激変緩和措置を講ずる。
Ⅲ.被用者保険における負担能力に応じた格差是正の強化
○ 前期高齢者の給付費の調整において、現行の「加入者数に応じた調整」に加え、「報酬水準に応じた調整」を導入
※被用者保険者間の保険料率の格差が拡大。協会けんぽ(10%)以上の保険者が2割超。
○ あわせて、現役世代の負担をできるかぎり抑制し、企業の賃上げ努力を促進する形で、既存の支援を見直すとともに国費による更なる支援を実施


Ⅳ 地域完結型の医療・介護提供体制の構築
 在宅を中心に入退院を繰り返し、最後は看取りを要する高齢者を支えるため、かかりつけ医機能が発揮される制度整備・各種計画との連携・情報基盤の整備により、かかりつけ医機能を有する医療機関を中心とした患者に身近な地域における医療・介護の水平的連携を進め、「地域完結型」の医療・介護提供体制を構築する。そのために、関係法律を一体的に改正する。

◆出産育児一時金の引上げ額について( 政令事項)
○ 出産育児一時金の額については、前回の引き上げ時は、「公的病院」の平均出産費用を勘案し、設定。
○ 出産費用は年々上昇する中で、平均的な標準費用を全て賄えるようにする観点から、
・「全施設」の平均出産費用を勘案するとともに、
・近年の伸びを勘案し、直近の出産費用も賄える額に設定する。
○ 以上より、48.0万円(令和4年度の全施設平均出産費用の推計額(※))+1.2万円(産科医療補償制度の掛金)=49.2万円
となるため、出産育児一時金の額は、令和5年4月から、全国一律で、50万円とする。
※「全施設」の平均出産費用は、ここ10年、毎年平均で1.4%上昇しており、令和4年度の平均出産費用を48.0万円と推計。

◆出産育児一時金を全世代で支え合う仕組みの導入
• 今後、生産年齢人口は急激に減少していく中で、特に少子化については、これまで様々な対策を講じてきたが、未だに少子化の流れを変えるには至っていない状況。少子化を克服し、子育てを全世代で支援する観点から、後期高齢者医療制度が出産育児一時金に係る費用の一部を支援する仕組みを導入。
• 後期高齢者医療制度が出産育児一時金に係る費用の一部を支援する仕組みを導入するに当たり、現行の現役世代・後期高齢者の保険料負担に応じ、後期高齢者医療制度の支援割合を対象額の7%と設定。
※次期の後期高齢者医療の保険料率改定(2年毎)のタイミングである令和6年4月から導入(出産育児一時金の引き上げは令和5年4月~)。
※高齢者負担の激変緩和の観点から、令和6・7年度の負担額は1/2とする。

◆高齢者負担率の見直し
• 現行の高齢者負担率(高齢者が保険料で賄う割合)の設定方法は、現役世代の減少のみに着目しており、制度導入以降、現役世代の負担(後期高齢者医療支援金)が大きく増加し(制度創設時と比べ、現役は1.7倍、高齢者は1.2倍の水準)、2025年までに団塊の世代が後期高齢者になる中で、当面その傾向が続く。一方、長期的には、高齢者人口の減少局面においても、高齢者負担率が上昇し続けてしまう構造。
• 高齢者世代・現役世代それぞれの人口動態に対処できる持続可能な仕組みとするとともに、当面の現役世代の負担上昇を抑制するため、介護保険を参考に、後期高齢者1人当たり保険料と現役世代1人当たり後期高齢者支援金の伸び率が同じになるよう、高齢者負担率の設定方法を見直し。


◆負担能力に応じた後期高齢者の保険料負担の見直し
○ 後期高齢者医療における保険料は、高齢化等による医療費の増加を反映して、2年に1度、引き上げ。
○ 今回の制度改正による、令和6年度からの新たな負担に関しては、
• 約6割の方(年金収入153万円相当以下の方)については、制度改正に伴う負担の増加が生じないようにするとともに、
• さらに約12%の方(年金収入211万円相当以下の方)についても、令和6年度は制度改正に伴う負担の増加が生じないよう対応。


◆前期財政調整における報酬調整の導入
• 前期高齢者の給付費の調整は、現在、「加入者数に応じた調整」を実施。
• 負担能力に応じた負担の観点から、被用者保険間では、現行の「加入者数に応じた調整」に加え、部分的(導入の範囲は1/3)に
「報酬水準に応じた調整」(報酬調整)を導入。
• あわせて、現役世代の負担をできるかぎり抑制し、企業の賃上げ努力を促進する形で、既存の支援を見直すとともに更なる支援を行う。

◆前期財政調整における複数年平均給付費の使用
• 前期財政調整では、納付金の計算において前期高齢者1人当たり給付費を使用しており、給付費水準が高いほど納付金額が増加。
• 小規模な保険者においては、高額な医療費を必要とする前期高齢者がいるかいないかによって毎年度の給付費水準が大きくばらつき、
それによって前期高齢者納付金の変動が大きくなるという課題が存在。
• こうした課題に対応するため、前期高齢者納付金の計算において複数年(3年)平均給付費を用いることとする。
※ 給付費が平準化されるだけであり、複数年でみれば基本的には財政中立的。


◆健保組合に対する更なる支援について
• 負担能力に応じた負担の観点から、前期財政調整について、被用者保険者間では、部分的(導入の範囲は1/3)に報酬調整を導入。また、後期高齢者の保険料と現役世代の支援金の一人当たりの伸び率が均衡するよう、高齢者負担率の設定方法を見直す。
• こうした医療保険制度改革に際し、他の制度における企業負担を勘案して、令和6年度から特例的に、健保組合への国費による支援を430億円追加。企業の賃上げ努力を促進する形で、既存の支援を見直すとともに更なる支援を行う。



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老齢年金における「特例的な繰下げみなし増額制度」(2023年4月から)

2023-02-01 | 書記長社労士 法改正 社会保険

 令和4年4月1日に、老齢年金の繰下げ可能年齢の上限がこれまでの70歳から75歳に引き上げられ、繰下げ増額率の算出に用いる待機月数の上限が5年(60ヵ月)から10年(120ヵ月)に引き上げられた。
この改正に伴い、令和5年4月1日から本来請求選択時の「特例的な繰下げみなし増額制度」が導入される。
この制度により、70歳到達後に繰下げ申出をせずにさかのぼって年金を受け取ることを選択した場合でも、請求の5年前の日に繰下げ申出したものとみなし、増額された年金の5年間分を一括して受け取ることができるようになる。
令和5年4月から70歳以降も安心して繰下げ待機を選択することができるようにするための制度改正である。

 特例的な繰下げみなし増額制度の対象となる方は次のいずれかに該当する方。
1⃣ 昭和27年4月2日以降生まれの方(令和5年3月31日時点で71歳未満の方)
2⃣ 老齢基礎・老齢厚生年金の受給権を取得した日が平成29年4月1日以降の方(令和5年3月31日時点で老齢基礎・老齢厚生年金の受給権を取得した日から起算して6年を経過していない方)

※80歳以降に請求する場合や、請求の5年前の日以前から障害年金や遺族年金を受け取る権利がある場合は、特例的な繰下げみなし増額制度は適用されない。
※また、過去分の年金を一括して受給することにより、過去にさかのぼって医療保険・介護保険の自己負担や保険料、税金等に影響のある場合がありますので、注意が必要。
※施行日前の令和4年度中に、本来請求を選択した場合には、「特例的な繰下げみなし増額」は施行日前のため適用されず、時効消滅により受け取れない年金が生じることになる。
※繰下げ待機中に死亡し、遺族が未支給年金として請求する場合は、「特例的な繰下げみなし増額」は適用されない。

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令和5年度の年金額改定・国民年金保険料・在職老齢年金

2023-01-23 | 書記長社労士 法改正 社会保険

令和5年度の新規裁定者(67 歳以下の方)の老齢基礎年金(満額) 月額 66,250 円(令和4年度64,816 円 +1,434 円)
令和5年度の既裁定者(68 歳以上の方)の老齢基礎年金(満額) 月額 66,050 円(令和4年度64,816 円 +1,234 円)

【年金額の改定ルール】
 年金額の改定は、名目手取り賃金変動率が物価変動率を上回る場合、新規裁定者(67 歳以下の方)の年金額は名目手取り賃金変動率を、既裁定者(68 歳以上の方)の年金額は物価変動率を用いて改定することが法律で定められています。
このため、令和5年度の年金額は、新規裁定者は名目手取り賃金変動率(2.8%)を、既裁定者は物価変動率(2.5%)を用いて改定します。
また、令和5年度のマクロ経済スライドによる調整(▲0.3%)と、令和3年度・令和4年度のマクロ経済スライドの未調整分による調整(▲0.3%)が行われます。
よって、令和5年度の年金額の改定率は、新規裁定者は2.2%、既裁定者は1.9%となります。



 令和5年度改定のポイント
◆3年ぶりの増額改定
 物価上昇率を反映してプラスとなり、年金額が3年ぶりに前年よりも増額される。
◆3年ぶりの目減りで、繰り越した調整率も一気に解消
 名目の年金額は増えるものの、物価や賃金の伸びには追いついていないため、実質的な価値が3年ぶりに目減りする。
◆2000年改正の仕組みがようやく発動され、67歳まで/68歳からで異なる改定率に
 賃金上昇率が物価上昇率を上回る状況は2005年度の改定の際にも見られたが、当時は2004年改正前の経過措置(特例水準)で年金額が計算されていたため、実際に支給される年金額の計算過程で68歳前後の本来の改定率が異なるのは、この仕組みが導入されてから初めてとなる。


参考:令和5年度の参考指標
・ 物価変動率 :2.5%
・ 名目手取り賃金変動率 ※1 :2.8%
・ マクロ経済スライドによるスライド調整率 ※2 :▲0.3%
・ 前年度までのマクロ経済スライドの未調整分 ※3 :▲0.3%
※1 「名目手取り賃金変動率」とは、2年度前から4年度前までの3年度平均の実質賃金変動率に前年の物価変動率と3年度前の可処分所得割合変化率(0.0%)を乗じたものです。

◆名目手取り賃金変動率(2.8%)
= 実質賃金変動率(0.3%)(令和元~3年度の平均) + 物価変動率(2.5%)(令和4年の値)+ 可処分所得割合変化率(0.0%)(令和2年度の値)

※2 「マクロ経済スライド」とは、公的年金被保険者の変動と平均余命の伸びに基づいて、スライド調整率を設定し、その分を賃金と物価の変動がプラスとなる場合に改定率から控除するもので、この仕組みは、平成16年の年金制度改正により導入されました。
マクロ経済スライドによる調整を計画的に実施することは、将来世代の年金の給付水準を確保することにつながります。

◆マクロ経済スライドによるスライド調整率(▲0.3%)
= 公的年金被保険者総数の変動率(0.0%)(令和元~3年度の平均) + 平均余命の伸び率(▲0.3%) (定率)

※3 「マクロ経済スライドの未調整分」とは、マクロ経済スライドによって前年度よりも年金の名目額を下げないという措置は維持した上で、調整しきれずに翌年度以降に繰り越された未調整分を指します。
未調整分を翌年度以降に繰り越して調整する仕組みは、平成28年の年金制度改正により導入されたもので、現在の高齢世代に配慮しつつ、マクロ経済スライドによる調整を将来世代に先送りせず、できる限り早期に調整することにより、将来世代の年金の給付水準を確保することにつながります。

◆前年度までのマクロ経済スライドの未調整分(▲0.3%)= ▲0.1%(令和3年度のマクロ経済スライドによるスライド調整率の繰り越し分)+▲0.2%(令和4年度のマクロ経済スライドによるスライド調整率の繰り越し分)

【国民年金保険料について】
 国民年金の保険料は、平成16 年の年金制度改正により、毎年段階的に引き上げられてきましたが、平成29 年度に上限(平成16 年度水準で16,900 円)に達し、引き上げが完了しました。その上で、平成31 年4月から、次世代育成支援のため、国民年金第1号被保険者(自営業の方など)に対して、産前産後期間の保険料免除制度が施行されたことに伴い、令和元年度分より、平成16 年度水準で、保険料が月額100 円引き上がり17,000 円となりました。
実際の保険料額は、平成16 年度水準を維持するため、国民年金法第87 条第3項の規定により、名目賃金の変動に応じて毎年度改定され、令和5年度の保険料額16,520 円(▲70 円)、令和6年度の保険料額は 16,980 円(+460 円)となります。

【在職老齢年金について】
 在職老齢年金は、賃金(賞与込み月収)と年金の合計額が、支給停止調整額を上回る場合には、賃金の増加2に対し年金額を1支給停止する仕組みです。
支給停止調整額は、厚生年金保険法第46 条第3項の規定により、名目賃金の変動に応じて改定され、令和5年度の支給停止調整額は令和5年度 48 万円(令和4年度 47 万円)となります。



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【令和4年度額】国民年金・厚生年金保険の各年金額のメモ

2022-03-27 | 書記長社労士 法改正 社会保険

 22春闘の対応で絶賛休日出勤中、今夜は徹夜かな。


品川の桜はほぼ満開だ!
平塚はまだまだやのに、平塚の方が暖かいイメージながら。


〇「物価変動率」▲0.2%
〇「名目手取り賃金変動率」▲0.4%
〇「マクロ経済スライドによるスライド調整率」▲0.3%

*年金額の改定については、名目手取り賃金変動率がマイナスで、名目手取り賃金変動率が物価変動率を下回る場合には、年金を受給し始める際の年金額(新規裁定年金)、受給中の年金額(既裁定年金)ともに名目手取り賃金変動率を用いることとなっています。

令和4年度の年金額の改定は、名目手取り賃金変動率がマイナス(▲0.4%)で、名目手取り賃金変動率(▲0.4%)が物価変動率(▲0.2%)を下回るため、新規裁定年金・既裁定年金ともに名目手取り賃金変動率(▲0.4%)が用いられます。

マクロ経済スライドによる「スライド調整率」▲0.3%
「マクロ経済スライド」とは、賃金や物価の上昇ほどは年金額を上昇させないように、改定率を調整し年金の給付水準を調整する仕組みです。
これにより、将来世代の年金の給付水準を確保することにつながります。
公的年金被保険者数の変動と平均余命の伸びに基づいて、スライド調整率が設定され、その分を賃金と物価の変動がプラスとなる場合に改定率から控除されるというものです。

・マクロ経済スライドによる「スライド調整率」▲0.3%=▲0.1%(令和3年度のマクロ経済スライドによるスライド調整率の繰り越し分)+▲0.2%(令和4年度のマクロ経済スライドによるスライド調整率)*

公的年金被保険者数の変動率(平成30~令和2年度の平均)0.1%+平均余命の伸び率(定率)▲0.3%
ただし、賃金や物価による改定率がマイナスの場合には、マクロ経済スライドによる調整は行われないこととされているため、令和4年度の年金額改定では、マクロ経済スライドによる調整は行われず、マクロ経済スライドの未調整分(▲0.3%)は、翌年度以降に繰り越されることとなります。

令和4年度(2022年度)の年金額は令和3年度(2021年度)に比べて0.4%引き下げとなる。
なお、令和4年度の満額の老齢基礎年金(月額)は、64,816円となる。(令和3年度は65,075円だったので、259円マイナス。)


1.国民年金
・老齢基礎年金(満額)
(令和3年度額)780,900円 ➡ (令和4年度額)777,800円

・障害基礎年金(1級)
(令和3年度額)976,125円 ➡ (令和4年度額)972,250円
・障害基礎年金(2級)
(令和3年度額)780,900円 ➡ (令和4年度額)777,800円

・遺族基礎年金(基本部分)
(令和3年度額)780,900円 ➡ (令和4年度額)777,800円

・子の加算
(令和3年度額)224,700円 ➡ (令和4年度額)223,800円
・子の加算(3人目以降)
(令和3年度額)74,900円 ➡ (令和4年度額)74,600円

・遺族基礎年金(配偶者+子一人)
(令和3年度額)1,005,600円 ➡ (令和4年度額)1,001,600円

・国民年金保険料
(令和3年度額)月額16,610円 ➡ (令和4年度額)月額16,590円 ➡ (令和5年度額)月額16,520円

2.厚生年金保険
・加給年金額(配偶者、子)
(令和3年度額)224,700円 ➡ (令和4年度額)223,800円
・加給年金額(子・2人目以降)
(令和3年度額)74,900円 ➡ (令和4年度額)74,600円

・老齢厚生年金に加算される配偶者加給年金額(老齢厚生年金受給権者が昭和18年4月2日以後生まれの場合)
(令和3年度額)390,500円 ➡ (令和4年度額)388,900円

・老齢厚生年金(経過的加算部分)の計算式
(令和3年度)
1,628円×厚生年金保険加入期間の月数(上限480月)-老齢基礎年金の満額780,900円×(昭和36年4月2日以降の)20歳以上60歳未満の厚生年金保険の加入期間の月数÷480月
 ⬇ 
(令和4年度)
1,621円×厚生年金保険加入期間の月数(上限480月)-老齢基礎年金の満額777,800円×(昭和36年4月2日以降の)20歳以上60歳未満の厚生年金保険の加入期間の月数÷480月

・障害厚生年金(3級・最低保障額)
(令和3年度額)585,700円 ➡ (令和4年度額)583,400円

・障害手当金(最低保障額)
(令和3年度額)1,171,400円 ➡ (令和4年度額)1,166,800円

・在職老齢年金支給停止額計算における基準額(65歳到達月分まで)
(令和3年度額)28万円 ➡ (令和4年度額)47万円

・在職老齢年金支給停止額計算における基準額(65歳到達月の翌月分から)
(令和3年度額)47万円 ➡ (令和4年度額)47万円(変更なし)

・老齢年金生活者支援給付金
(令和3年度額)月額5,030円 ➡ (令和4年度額)月額5,020円

・障害年金生活者支援給付金(1級)
(令和3年度額)月額6,288円 ➡ (令和4年度額)月額6,275円
・障害年金生活者支援給付金(2級)
(令和3年度額)月額5,030円 ➡ (令和4年度額)月額5,020円

・遺族年金生活者支援給付金
(令和3年度額)月額5,030円 ➡ (令和4年度額)月額5,020円


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【自分用のメモ】第172回、第173回の労働政策審議会職業安定分科会について

2022-02-09 | 書記長社労士 法改正 社会保険
第172回(2022)年1月22日
 労働政策審議会職業安定分科会雇用保険部会で、令和3年9月8日から令和4年1月7日まで、 雇用保険制度の見直しについて検討を行ってきその結果が取りまとめられたので報告を受けた。
1月7日、労働政策審議会職業安定分科会雇用保険部会は、「雇用保険部会報告」を大筋で取りまとめた。失業等給付にかかる国庫負担割合については、雇用情勢および雇用保険の財政状況が悪化している場合にのみ本則と同じ1/4とし、それ以外の場合には1/40とする 見直しが示された。

 「報告」の主な内容は、( 1 )基本手当の暫定措置と教育訓練支援給付金の3年間継続、(2)求職者支援制度にかかる特例措置の次年度継続、(3)休業支援金の次年度継続、(4)国庫負担割合の見直し、(5)求職者支援制度にかかる国庫負担割合の時限的引き下げの終了など。


 労働側委員からの発言
<審議会運営、国庫負担割合>
【冨髙委員】
〇雇用保険部会において、財政運営に関するきわめて重要な議論が時間的余裕のない中で拙速に進められたことや、雇用保険料率と国庫負担割合について合意する前に2022年度当初予算の閣議決定がなされたことは遺憾である。
〇国庫負担割合については、「本則の1/4に戻すべきである」という労使の意見や、「1/40とすることの根拠が示されていない」という労働者側・公益側の指摘が繰り返されてきた。このような経緯がある中で報告書が決定されることは大変遺憾であり、雇用政策の担い手としての政府の責任を果たす内容とは言えないことについて、労働者側委員として改めて言及したい。
〇雇用保険の財源などに関する議論はこれで終わりではなく、雇用・経済情勢、感染拡大状況などを踏まえた議論が継続されることから、今後は、より丁寧な部会運営と当分科会との連携に努めていただきたい。
【久松委員】
<雇用調整助成金の特例措置、休業支援金>
〇前回の分科会で1~3 月の措置内容を審議した際には、「原則的な措置の取り扱いについても、今後、雇用情勢が悪化した場合には、それに応じて措置内容を機動的に変更できるようにすることが大前提である」と労働者側より申し上げていた。
〇感染拡大の第六波が全国的に広がる懸念が強まっていることから、足元の雇用情勢の状況や兆候を見極めながら、給付水準も含めて、今後の措置について迅速に審議できるようにしておく必要がある。

議事次第
【資料1】雇用保険部会報告書
【参考資料1-1】給付関係
【参考資料1ー2】財政運営関係

第173 回(2022)年1月14日
 前回報告を受けた「雇用保険部会報告」について 、
○一般会計から労働保険特別会計雇用勘定に対して2.16兆円の繰入額を令和3年度中の支出に充てた後に残る令和3年度末の積立金は約1.3兆円となる見込みであるが、令和4年度においても多額の雇用調整助成金の支出が想定される等、雇用保険財政は引き続き厳しい状況にあり、 雇用保険料率及び国庫負担の暫定的な引下げ措置並びに雇用保険臨時特例法により設けられた財政運営上の特例措置が令和3年度末で終了することも踏まえ、国による雇用政策への責任がしっ かりと果たされる形で、 令和4年度以降の安定的な財政運営に向けた施策を検討する必要がある。
○また、雇止めによる離職者及び雇用情勢の厳しい地域の求職者に対する延長給付並びに教育訓練支援給付金といった給付面の暫定措置についても令和3年度末で期限を迎えることとなっており、これらの措置の取扱いについても検討する必要がある。
とされたことから、「雇用保険法等の一部を改正する法律案要綱について(諮問)」を審議した。

①雇用保険法の一部改正
❶受講指示の対象となる職業訓練の追加 、❷事業を開始した受給資格者等に係る受給期間の特例、❸能力開発事業の改正、❹国庫負担の改正、❺基本手当の支給に関する暫定措置の改正、❻地域延長給付の改正、❼教育訓練支援給付金の改正、❽返還命令等の対象追加
②職業安定法の一部改正
❶募集情報等提供の定義の拡大 など
③職業能力開発促進法の一部改正
❶キャリアコンサルティングの機会の確保 など
④労働保険の保険料の徴収等に関する法律の一部改正
雇用保険率の改正
現行 9 /1000(使用者6/1000、労働者3/1000)
令和4年(2022年)4月1日~9月30日 9.5 /1000(使用者6.5/1000、労働者3/1000)
令和4年(2022年)10月1日~令和5年(2023年)3月31日 13.5/1000(使用者8.5/1000、労働者5/1000)
⑤特別会計に関する法律の一部改正
❶一般会計から雇用勘定への繰り入れの特例、❷雇用勘定の積立金の特例等
⑥新型コロナウイルス感染症等の影響に対応するための雇用保険法の臨時特例等に関する法律の一部改正
❶給付基礎日数の延長に関する特例の改正 など

 労働側委員の発言
【冨髙委員】
<雇用保険法>
〇昨日の雇用保険部会において、資料1-2のとおり、今後の丁寧な部会審議についての公労使意見が付されたことは異例の対応である。このような対応とならざるを得ない状況であったことを重く受けとめ、育児休業給付を雇用保険会計以外で実施することも含め、山積している課題に対する検討を早期かつ確実に開始するよう求める。
〇失業等給付に係る国庫負担割合については、改正法等において、雇用保険部会報告において「現行制度の原則的な負担割合である1/4に戻すべきである」という労使意見が付されたことを十分に尊重した規定をすべきである。

議事次第
【資料1-1】雇用保険法等の一部を改正する法律案要綱
【資料1-2】第167回 雇用保険部会報告文
【参考資料1-1】雇用保険部会報告
【参考資料1-2】雇用仲介事業に関する制度の改正ついて(建議)


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健康保険の「傷病手当金」支給期間が通算化される!これはほんとうにいい改正やねん!!(2022年1月から)

2021-11-26 | 書記長社労士 法改正 社会保険

 治療と仕事の両立の観点から、より柔軟な所得保障ができるよう、「全世代対応型の社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律(令和3年法律第66号)」により健康保険法等が改正されました。
この改正により令和4年1月1日から、傷病手当金の支給期間が通算化されます。


 健康保険の「傷病手当金」とは、病気やケガで休業中であっても給料の(正確には「標準報酬日額」の)3分の2が支給される制度。
療養のために働けなかった日の4日目から支給されることになり、1日単位で計算、支給される。

【要件】
〇業務外の事由による病気やケガの療養のための休業であること
〇労務不能(仕事に就くことが出来ない)であること
〇継続する3日間の待期期間を満たしていること
〇給与の支払いがないこと

【待期期間】
起算日は、原則労務不能となった日
年次有給休暇で処理する事も可能
待機期間は同一の傷病等について1回のみ
公休日などで元々勤務日でなくても待期期間に含む


【改正のポイント】
〇傷病手当金の支給期間が、支給開始日から「通算して1年6か月」になります。
・同一のケガや病気に関する傷病手当金の支給期間が、支給開始日から通算して1年6か月に達する日まで対象となります。
・支給期間中に途中で就労するなど、傷病手当金が支給されない期間がある場合には、支給開始日から起算して1年6か月を超えても、繰り越して支給可能になります。
〇この改正は、令和4年1月1日から施行されます。
・令和3年12月31日時点で、支給開始日から起算して1年6か月を経過していない傷病手当金(令和2年7月2日以降に支給が開始された傷病手当金)が対象です。


 現在、傷病手当の支給期間は、同一の傷病等に関し、支給開始日から起算して1年6ヶ月を限度とされている。(暦で数えた日数)
この支給期間は実際に傷病手当金が支給されていたかどうかは関係なく、 職場復帰して支給されない期間があったとしても、1年6ヶ月経過すればその後は支給されなくなる。(職場復帰した後に「再発」や「増悪」した場合など)
今回の法改正(2022年1月)から、「歴の通算」から「実際に傷病手当金が支給されていた期間の通算が最長で1年6か月」となる。
以前より補償が手厚くなることになるが、会社は対象社員(2020年7月2日以降に支給が開始された傷病手当金)の通算日数などを正確に把握する事が重要となるんやけど…。
しかし、今まで、現場でほんまに気の毒で辛い思いをしてきたから、そんなのは苦にならないって、みんなで思いを確認したい!

【周知用リーフレット】
 この度の制度改正について、以下のとおりリーフレットを作成いたしました。関係各位におかれましては適宜ご活用いただき、ご周知を図られますようよろしくお願いいたします。
 『令和4年1月1日から健康保険の傷病手当金の支給期間が通算化されます』


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「DV被害者に係る遺族年金等の生計同一認定要件の判断について」が改正

2021-10-05 | 書記長社労士 法改正 社会保険
 請求人が厚生労働大臣に遺族厚生年金の請求をしたところ、死亡した配偶者と住民票上の住所が異なっており、その住民票上の住所が異なっていることについては、亡夫のDVが原因で請求人が家を出たとされており、亡夫から請求人に対する経済的援助、及び、音信・訪問はなかったということで、生計維持関係が認められないとして遺族厚生年金を不支給とする処分がなされたことの不服申し立てが多い。

 夫と妻が別居しており、住民票上の住所が別の事例について、生計維持関係が認められるには、次の(ア)、(イ)のいずれかに該当する必要があるとされている。
(ア) 現に起居を共にし、かつ、消費生活上の家計を一つにしていると認められるとき
(イ) 単身赴任、就学又は病気療養等の止むを得ない事情により住所が住民票上異なっているが、次のような事実が認められ、その事情が消滅したときは、起居を共にし、消費生活上の家計を一つにすると認められるとき
 (a) 生活費、療養費等の経済的な援助が行われていること
 (b) 定期的に音信、訪問が行われていること

 DVからの保護を受けるために、婦人保護施設、母子生活支援施設等に入所していて、その間、当然、音信や訪問はないわけで、そうすると、「生計維持関係が認められない」ということになってしまう。

 しかし、「配偶者が死亡した時点という一点を捉えて、その時点において他方配偶者の生計が支えられていないとして生計維持関係を認めないとすることが著しく合理性を欠く場合、たとえば、一方配偶者の死亡時点において、別居のため一体の生計が営まれておらず、また、仕送り等経済上の援助がない場合であっても、それが配偶者の一方又は双方の疾病、老齢、老人保健施設入所その他やむを得ない事情によるものであって、双方に婚姻関係解消の意思が認められず、いわば常態から逸脱した状況が長期間続いているわけでなく、上記やむを得ない事情が解消すれば速やかに夫婦の共同生活が再開されることが期待されるような場合には、生計維持関係が失われたか否かの判断は、その間の事情を、実態に即して総合的に考慮してなされるべきものであり、認定基準においても、前述のとおり、『これにより生計維持関係の認定を行うことが実態と著しく懸け離れたものとなり、かつ、社会通念上妥当性を欠くこととなる場合には、この限りでない。』としているところである。」とされており、そういった観点から、DV被害が原因での別居については、生計維持関係を否定することは、実態と著しく懸け離れたものとなり、かつ、社会通念上妥当性を欠くといわなければならないと判断され、請求が認められるケースがある。
しかし、それは審査請求、再審査請求を行ってからの判断となり、そこに至らずに、年金事務所による不支給決定で諦めてしまっている人も多数いるはずで、なんとかなんないか、ってずっと思ってきた。
しかし、今回、DV被害者に係る遺族年金等の生計同一認定要件の判断について生計同一に関する認定要件が、以下のように改正されたことによって、最初の受付段階で、請求者に寄り添った判断がされることになる❗
ひじょうにいいことだ❗❗
ただ、家庭内暴力から逃れるために別居していても、①公的機関などの支援を受けないと、DV被害者であることの証明ができないという点、また、②配偶者が死亡した場合にも、自動的に通知が届くわけではないから、定期的に確認する必要があるという点には留意が必要だ。
この2点について、より使いやすい制度となるよう、運動していきたい❗❗❗

DV被害者に係る遺族年金等の生計同一認定要件の判断について
年管管発0901第1号 令和3年9月1日

 DV被害者に係る遺族年金等の生計同一認定要件の判断について生計同一に関する認定要件(以下「生計同一認定要件」という。)については、「生計維持関係等の認定基準及び認定の取扱いについて」(平成 23 年3月 23 日年発 0323第1号。以下「平成 23 年通知」という。)により取り扱われている。
 また、配偶者からの暴力(以下「DV」という。)の被害者の場合、DVを避けるために一時的な別居が必要になる場合があることから、裁判例を踏まえつつ、DV被害者に係る遺族年金等の生計同一認定要件の判断に当たっての留意事項について、「DV被害者に係る遺族年金等の生計同一認定要件の判断について」( 令和元年 10 月3日厚生労働省年金局事業管理課長事務連絡。以下「令和元年 10 月事務連絡」という。)のとおり、示したところである。
 今般、令和元年10 月事務連絡の内容に基づくとともに、令和元年 10 月事務連絡後の裁判例及び認定事例を踏まえつつ、平成 23 年通知1⑴ただし書及び3⑴①ウ(イ)に則り、下記のとおり、DV被害者に係る遺族年金等の生計同一認定要件の判断に当たっての留意事項を定め、令和3年 10 月1日から適用することとしたので通知する。なお、本通知の適用に伴い、令和元年10 月事務連絡は、令和3年9月 30 日をも って廃止する。


1 被保険者等の死亡時において以下の①から⑤までのいずれかに該当 するために被保険者等と住民票上の住所を異にしている者については、DV被害者であるという事情を勘案して、被保険者等の死亡時という一時点の事情のみならず、別居期間の長短、別居の原因やその解消の可能性、経済的な援助の有無や定期的な音信・訪問の有無等を総合的に考慮して、平成 23 年通知3⑴①ウ(イ)に該当するかどうかを判断する。
① 配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律(平成 13 年法律第31 号。以下「DV防止法」という。)に基づき裁判所が行う保護命令に係るDV被害者であること。
② 婦人相談所、民間シェルター、母子生活支援施設等において一時保護されているDV被害者であること。
③ DVからの保護を受けるために、婦人保護施設、母子生活支援施設等に入所しているDV被害者であること。
④ DVを契機として、秘密保持のために基礎年金番号が変更されているDV被害者であること。
⑤ 公的機関その他これに準ずる支援機関が発行する証明書等を通じて、①から④までの者に準ずると認められるDV被害者であること。

2 1の①、②、③及び⑤に該当するかどうかについては、裁判所が発行する保護命令に係る証明書、配偶者からの暴力の被害者の保護に関する証明書(「配偶者からの暴力を受けた者に係る国民年金、厚生年金保険及び船員保険における秘密の保持の配慮について」(平成19 年2月21 日庁保険発第0221001 号)の別紙1をいう。)、住民基本台帳事務における支援措置申出書(相談機関等の意見等によってDV被害者であることが証明されているものに限る。)の写し又は公的機関その他これに準ずる支援機関が発行する証明書を通じて、確認を行う。なお、1の④に該当する場合は、証明書を通じた確認は不要とする。

3 DV被害に関わり得る場合であっても、一時的な別居状態を超えて、消費生活上の家計を異にする状態(経済的な援助も、音信も訪問もない状態)が長期間(おおむね5年を超える期間)継続し固定化しているような場合については、原則として、平成23 年通知3⑴①ウ(イ)に該当していないものとして取り扱う。ただし、長期間(おおむね5年を超える期間)となった別居期間において、経済的な援助又は音信や訪問が行われている状態に準ずる状態であると認められる場合には、この限りではない。

4 1から3までの規定により生計同一認定要件の判断を行うことが実態と著しく懸け離れたものとなり、かつ、社会通念上妥当性を欠くこととなる場合にあっては、1から3までの規定にかかわらず、当該個別事案における個別の事情を総合的に考慮して、被保険者等の死亡の当時その者と生計を同じくしていたかどうかを個別に判断する。


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健康保険法等の一部を改正する法律案②(任意継続被保険者制度、育休中の社会保険料免除、その他)

2021-04-05 | 書記長社労士 法改正 社会保険
今国会に政府が提出した「全世代対応型の社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律案」。
「健康保険法等の一部を改正する法律案①(後期高齢者窓口負担、傷病手当金)」からの続き】

(3)任意継続被保険者制度の見直し 【健康保険法、船員保険法】
任意継続被保険者の保険料の算定基礎の見直しや、被保険者からの申請による資格喪失を可能とする。



 現行、保険料について、①従前の標準報酬月額、又は②当該保険者の全被保険者の平均の標準報酬月額のうち、いずれか低い額に保険料率を乗じた額を負担とされている。
退職前に高額の給与が支払われていた者について、「退職前と同等の応能負担を課すことが適当な場合もあると考えられることから、健康保険組合の実状に応じて柔軟な制度設計が可能となるよう⾒直しを⾏う」として、保険料の算定基礎を「①当該退職者の従前の標準報酬月額又は②当該保険者の全被保険者の平均の標準報酬月額のうち、いずれか低い額」から「健保組合の規約により、従前の標準報酬月額」とすることも可能とするというもの。
また、任意継続被保険者となった日から起算して2年が被保険者期間となっているが、被保険者の生活実態に応じた加入期間の短縮化を支援する観点から、被保険者の任意脱退を認めるというもの。
退職する場合、健康保険については、この①従前の健康保険制度の任意継続被保険者制度に加入、②国民健康保険に加入、③家族の健康保険制度の扶養家族になる、の3つの選択肢がある。
退職前の報酬が高額であっても、任意継続被保険者の標準報酬月額は30万円が上限とされていることから(令和2年度の場合)、退職前の報酬が高額であった人が国民健康保険に加入するよりも保険料が安くなるので、任意継続を選択する人が多い。
しかし、今回の改正で健保組合によっては、国保の方が保険料が安くなるケースも出てくるから、よく考えて(資格喪失日から20日以内に)どちらを選ぶか決定しないといけなくなる。
一方、退職してから1年以上後、退職後の収入が低かった場合、国保の方が保険料が安くなっているかも知れないけど、任意継続被保険者は2年間脱退が出来ないので、国保に切り替えることは出来ない。(裏技はあるが…もちろん合法的な)
改正後は、2年以内であっても、保険制度の選択がやりやすくなるという点で、助かる人も増えてくるかも。
施⾏時期は令和4年1⽉。

2.子ども・子育て支援の拡充
(1)育児休業中の保険料の免除要件の見直し 【健康保険法、船員保険法、厚生年金保険法 等】
短期の育児休業の取得に対応して、月内に2週間以上の育児休業を取得した場合には当該月の保険料を免除するとともに、賞与に係る保険料については1月を超える育児休業を取得している場合に限り、免除の対象とすることとする。



 「育休中の社会保険料免除については、月末時点で育休を取得している場合に、当⽉の保険料が免除される仕組み。
したがって、短期間の育休について、月末をまたぐか否かで保険料が免除されるか否かが決まるという不公平が発⽣する。
よって、育休開始日の属する月については、その月の末日が育休期間中である場合に加えて、その月中に2週間以上育休を取得した場
合にも保険料を免除するということ。
そして、賞与月の月末時点で育休を取得していると、賞与の支払を受けている場合であっても、賞与保険料が免除されるため、賞与月
に育休の取得が多いとの指摘があるので、短期間の育休取得であるほど、賞与保険料の免除を目的として育休月を選択する誘因が働きやすいため、1ヶ月超の育休取得者に限り、賞与保険料の免除対象とするというもの。
このほか、男性の育休取得促進のため、出産直後の時期について、現⾏育休よりも柔軟に取得可能な『新たな枠組み』が導⼊⾒込みであり、現⾏の育休と同様に社会保険料免除の対象とする予定。」
施⾏時期は令和4年10⽉。

(2)子どもに係る国民健康保険料等の均等割額の減額措置の導入 【国民健康保険法、地方税法】
 国民健康保険の保険料(税)について、子ども(未就学児)に係る被保険者均等割額を減額し、その減額相当額を公費で支援する制度を創設する。
3.生涯現役で活躍できる社会づくりの推進(予防・健康づくりの強化)
○保健事業における健診情報等の活用促進 【健康保険法、船員保険法、国民健康保険法、高齢者の医療の確保に関する法律 等】
① 労働安全衛生法等による健診の情報を保険者が保健事業で活用できるよう、事業者に対し被保険者等の健診情報を求めることを可能とする。
② 健康保険組合等が保存する特定健診等の情報を後期高齢者医療広域連合へ引き継ぐこと等を可能とする。
4.その他
(1)国民健康保険の財政安定化基金を、都道府県が国民健康保険事業費納付金の著しい上昇抑制等のために充てることを可能とする。【国民健康保険法】
(2)都道府県国民健康保険運営方針について、保険料の水準の平準化や財政の均衡に関して記載事項に位置付ける。【国民健康保険法】
(3)医療扶助においてオンライン資格確認を導入する。 【生活保護法、社会保険診療報酬支払基金法、地域における医療及び介護の総合的な確保の促進に関する法律】 等


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健康保険法等の一部を改正する法律案①(後期高齢者窓口負担、傷病手当金)

2021-04-01 | 書記長社労士 法改正 社会保険

 今国会に政府が提出した「全世代対応型の社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律案」。

1.全ての世代の安心を構築するための給付と負担の見直し
(1)後期高齢者医療における窓口負担割合の見直し 【高齢者の医療の確保に関する法律】
 後期高齢者医療の被保険者のうち、現役並み所得者以外の被保険者であって、一定所得以上(※)であるものについて、窓口負担割合を2割とする。
※課税所得が28万円以上かつ年収200万円以上(単身世帯の場合。複数世帯の場合は後期高齢者の年収合計が320万円以上)。政令で規定。
※長期頻回受診患者等への配慮措置として、外来受診において、施行後3年間、1ヶ月の負担増を最大でも3,000円とする措置については、政令で規定。


 「令和4年度(2022年度)以降、団塊の世代が後期⾼齢者となり始めることで、後期⾼齢者⽀援⾦の急増が⾒込まれる中で、若い世代は貯蓄も少なく住居費・教育費等の他の⽀出の負担も⼤きいという事情に鑑みると、負担能⼒のある⽅に可能な範囲でご負担いただくことにより、後期⾼齢者⽀援⾦の負担を軽減し、若い世代の保険料負担の上昇を少しでも減らしていくことが、今、最も重
要な課題である。その場合でも、何よりも優先すべきは、有病率の⾼い⾼齢者に必要な医療が確保されることであり、他の世代と⽐べて、⾼い医療費、低い収入といった後期高齢者の生活実態を踏まえつつ、窓⼝負担割合の⾒直しにより必要な受診が抑制されるといった事態が⽣じないようにすることが不可⽋である。」というのが、今回、改正理由と背景としている。
収入の低い高齢者と、例えばデビー夫人が、同じでいいのか、払える裕福な人には応分に払って貰う方が、いいのではないか、そうすることによって、現役世代の保険料負担の増加を少しでも軽減出来るではないか、と思う観点もあるのでこれは仕方が無いか。
施⾏⽇は、「施⾏に要する準備期間等も考慮し、令和4年度後半(令和4年10月から令和5年3月までの各月の初日を想定)で、政令で定める。」とのこと。

(2)傷病手当金の支給期間の通算化 【健康保険法、船員保険法】
 傷病手当金について、出勤に伴い不支給となった期間がある場合、その分の期間を延長して支給を受けられるよう、支給期間の通算化を行う。



 現行、⽀給期間は、⽀給開始⽇から起算して1年6ヶ⽉を超えない期間とされている。(その間、⼀時的に就労した場合であっても、その就労した期間が1年6ヶ⽉の計算に含まれる。)
⾒直しの⽅向性として、「がん治療のために⼊退院を繰り返すなど、⻑期間に渡って療養のため休暇を取りながら働くケースが存在し、治療と仕事の両⽴の観点から、より柔軟な所得保障を⾏うことが可能となるよう、支給期間を通算化する。」としている。
実際に、長期治療が必要な疾病であっても復職した期間を含めて、再発を含めて再度の休業を伴う治療が必要となっても、容赦なく1年6か月で休業手当が打ち切られているケースを多く見ていたので、これはいい!
ただし「休職制度」の改定の議論が労使で必要となってくるのではないだろうか。
施⾏時期は令和4年1月。

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被用者保険の短時間労働者適用拡大についてのメモ

2020-06-08 | 書記長社労士 法改正 社会保険
【🏃Run2-44 5.20km 33:03 淀川新橋】 年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律案の成立によって、「短時間労働者を被用者保険の適用対象とすべき事業所の企業規模要件について、段階的に引き下げる(現行500人超⇒100人超⇒50人超)」となった。
この法案が国会に提出された頃、連合が主催する「2020 年公的年金・企業年金等制度改革に向けた勉強会」で、伊澤 知法厚生労働省年金局年金課長から「次期年金制度改正の方向性」を受けたが、その中で「被用者保険の適用拡大」の部分について抜粋してメモしておく。


(1)現行の501人以上を、令和4(2022)年10月1日から101人以上に、令和6(2024)年10月1日から51人以上にする。
 101人以上にすると45万人、51人以上にするとさらに20万人が新たに被保険者になると予測される。
ちなみに、事業主負担(厚生年金保険料・健康保険料・介護保険料の負担)は1,590億円増えると予測されている。
当該事業所に継続して1年以上使用されることが見込まれないこととする要件は撤廃し、フルタイムの被保険者と同様の2か月超の要件を適用するが、労働時間要件(週20時間)・賃金要件(月8.8万円)などは現行のまま。
【補足①】企業規模要件の「従業員数」は、週労働時間が通常の労働者の3/4以上の者を指し、それ未満のパート労働者を含まない
【補足②】月ごとに従業員数をカウントし、直近12か月のうち6か月で基準を上回ったら適用対象となる
【補足③】従業員数のカウントは、法人なら同一の法人番号を有する全事業所単位、個人事業主なら個々の事業所単位で行う



(2) 労働時間要件(週20時間) ⇒ まずは週20時間以上労働者への適用を優先するため、現状維持とする
【補足】週20時間の判定は、基本的に契約上の所定労働時間によって行うため、臨時に生じた残業等を含まない
(3) 賃金要件(月8.8万円) ⇒ 最低賃金の水準との関係も踏まえて、現状維持とする
【補足】月8.8万円の判定は、基本給及び諸手当によって行う。ただし、残業代・賞与・臨時的な賃金等を含まない
(4) 勤務期間要件(1年以上) ⇒ 実務上の取扱いの現状も踏まえて撤廃し、フルタイムの被保険者と同様の2か月超の要件を適用する
【補足】現行制度の運用上、実際の勤務期間にかかわらず、基本的に下記のいずれかに当てはまれば1年以上見込みと扱う
⇒ 適用除外となるのは、契約期間が1年未満で、書面上更新可能性を示す記載がなく、更新の前例もない場合に限られている
(5) 学生除外要件⇒ 本格的就労の準備期間としての学生の位置づけ等も考慮し、現状維持とする

短時間被保険者の性別・年齢階級別分布
 これまでの適用拡大によって厚生年金加入となった者の多くは女性または高齢者であり、適用拡大はこうした者を厚生年金の支え手に加える効果をもたらしている。

短時間被保険者の適用拡大以前の公的年金の加入状況
• 2017年末時点の短時間被保険者を対象に、適用拡大施行前の2015年末時点の公的年金の加入状況等について、日本年金機構が保有する被保険者データを特別に集計した。
• この結果によると、適用拡大によって厚生年金加入となった者のうち約4割が国民年金第1号被保険者で、その約半数が保険料を免除または未納の状態であった。

週20時間以上・月収8.8万円以上の短時間労働者の公的年金の加入状況
• 週労働時間20時間以上・月額賃金が8.8万円(現行の賃金要件)以上で、被用者保険に加入していない短時間労働者の中で、半数近くは国民年金第1号被保険者であり、第3号被保険者(被扶養者)の割合は約4分の1。


個人の働き方と社会保険の適用区分
• 短時間労働者の社会保険制度上の適用区分は、各自の働き方(労働時間及び収入)や扶養者の有無によって異なっており、どの区分に属するかによって給付・負担の内容に差異が生まれることになる。
(注)被用者保険の適用基準としての賃金要件については、所定内給与から通勤手当等を除いた月額賃金で判断されるのに対して、被扶養者認定基準については年間の総収入金額で判断されることに留意が必要。





適用拡大の労働者への影響について
• 前回の適用拡大の際には、就業調整した人より労働時間を延ばした人の方が多い。
• 実際に適用を受けた短時間労働者の収入は増加傾向。
• 社会保険加入のメリットや働き方の変化について企業が従業員に丁寧に説明することが、就業調整の回避に有効。

被扶養者にとっての被扶養認定基準(130万円)と被用者保険適用基準(106万円)
• 被扶養認定基準(130万円)と異なり、被用者保険適用基準(106万円)は、超えると給付増を伴い、保険料負担も労使折半。
• また、契約時点で適用・不適用が定まり、「130万円の壁」のように、年末に年収を抑える調整が行われる問題が生じない。

個々の企業における追加的な保険料負担のイメージ
 短時間被保険者に係る平均的な標準報酬額172.8万円/年
 厚生年金保険料率18.3% ⇒ 事業主負担分9.15%
 健康保険料率10%(協会けんぽの平均料率) ⇒ 事業主負担分5%(40~65歳の被保険者については、介護保険料率1.73%(協会けんぽの料率)⇒ 事業主負担分0.865%)
⇒短時間被保険者1人当たり約24.5万円/年(40~65歳の者の場合、+約1.5万円)

適用拡大に伴う企業の雇用管理の見直し状況
• 適用拡大に伴い雇用管理上の見直しを行った事業所の中では、「所定労働時間の延長」等の適用拡大策と、「所定労働時間の短縮」等の適用回避策の両方を実施した事業所が多い。
• 見直しの理由としては、適用拡大策だけでなく、適用回避策についても短時間労働者の希望を踏まえたとの回答が多くを占め、コスト回避を企図した見直しは限定的であった。

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3月3日に国会に提出された「年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律(案)」について

2020-03-16 | 書記長社労士 法改正 社会保険

 今国会(第201回国会(令和2年常会))に提出された、年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律案(令和2年3月3日提出)の概要について。⇒https://www.mhlw.go.jp/content/000601826.pdf

年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律案の概要
 改正の趣旨 より多くの人がより長く多様な形で働く社会へと変化する中で、長期化する高齢期の経済基盤の充実を図るため、短時間労働者に対する被用者保険の適用拡大、在職中の年金受給の在り方の見直し、受給開始時期の選択肢の拡大、確定拠出年金の加入可能要件の見直し等の措置を講ずる。

改正の概要
1 被用者保険の適用拡大 【厚生年金保険法、健康保険法、公的年金制度の財政基盤及び最低保障機能の強化等のための国民年金法等の一部を改正する法律平成24年改正法、国家公務員共済組合法、地方公務員等共済組合法 】
①短時間労働者を被用者保険の適用対象とすべき事業所の企業規模要件について、段階的に引き下げる(現行500人超⇒100人超⇒50人超)。

 現行の501人以上を、令和4(2022)年10月1日から101人以上に、令和6(2024)年10月1日から51人以上にする。
101人以上にすると45万人、51人以上にするとさらに20万人が新たに被保険者になると予測される。
ちなみに、事業主負担(厚生年金保険料・健康保険料・介護保険料の負担)は1,590億円増えると予測されている。
当該事業所に継続して1年以上使用されることが見込まれないこととする要件は撤廃し、フルタイムの被保険者と同様の2か月超の要件を適用するが、労働時間要件(週20時間)・賃金要件(月8.8万円)などは現行のまま。
なお、2024年10月1日より、短時間労働者を適用対象とすべき特定適用事業所の範囲について、一または二以上の適用事業所に使用される特定労働者の総数が常時50人を超える適用事業所とする。

②5人以上の個人事業所に係る適用業種に、弁護士、税理士等の資格を有する者が行う法律又は会計に係る業務を行う事業を追加する 。
 社会保険労務士事務所も含まれる。令和4(2022)年10月1日より。

③厚生年金・健康保険の適用対象である国・自治体等で勤務する短時間労働者に対して、公務員共済の短期給付を適用する 。 令和4(2022)年10月1日より。

2 在職中の年金受給の在り方の見直し 【厚生年金保険法】
①高齢期の就労継続を早期に年金額に反映するため 、 在職中の老齢厚生年金受給者65歳以上の年金額を毎年定時に改定することとする 。

 現行、老齢厚生年金の受給権を取得した後に就労した場合は、資格喪失時(退職時・70歳到達時)に、受給権取得後の被保険者であった期間を加えて、老齢厚生年金の額を改定している(いわゆる退職改定)。
これを、65歳以上の者については、在職中であっても、年金額の改定を定時(毎年1回)に行うことにし、就労を継続したことの効果を退職を待たずに早期に年金額に反映する。
毎年9月1日を基準日とし、基準日の属する月前の被保険者であった期間を基礎として、基準日の属する月の翌月から改定する。
月額10万円で1年間就労した場合+7,000円程度/年(+500円程度/月)、月額20万円で1年間就労した場合+13,000円程度/年(+1,100円程度/月)、月額30万円で1年間就労した場合+20,000円程度/年(+1,600円程度/月)、翌年の年金額が増えると試算される。令和4(2022 )年4月1日より。

②60歳から64歳に支給される特別支給の老齢厚生年金を対象とした在職老齢年金制度について 、 支給停止とならない範囲を拡大する。
支給停止が開始される賃金と年金の合計額の基準を、現行の28万円から47万円(令和元年度額)に引き上げる 。

 65歳未満の老齢厚生年金の支給停止について、65歳以上の仕組みと同じものとし、総報酬月額相当額と老齢厚生年金の額との合計額から名目賃金変動率に応じて自動改定される額を控除して得た額の2分の1相当額とする。
令和4(2022 )年4月1日よりなので、特別支給の老齢厚生年金をもらえる人のうち、1958年(昭和33年)4月2日生まれ~1961年(昭和36年)4月1日までの男性、1959年(昭和34年)4月2日生まれ~1966年(昭和41年)4月1日までの女性は、原則でならこの対象になるのかな。

3 受給開始時期の選択肢の拡大【国民年金法 、厚生年金保険法等】
 現在60歳から70歳の間となっている年金の受給開始時期の選択肢を、60歳から75歳の間に拡大する 。

 令和4(2022 )年4月1日より。よほど長生きする自信のある人、またはよほどの高給取りの人以外にはお勧め出来ない気がする。
「社会保障審議会年金部会における議論の整理」にあった、1月当たりの繰上げ減額率を0.5%から0.4%にするのは、政令の改正によるのかな。

4 確定拠出年金の加入可能要件の見直し等【確定拠出年金法、確定給付企業年金法、独立行政法人農業者年金基金法等】
①確定拠出年金の加入可能年齢を引き上げるとともに、受給開始時期等の選択肢を拡大する 。
※企業型DC:厚生年金被保険者のうち65歳未満⇒70歳未満 個人型DC(iDeCo):公的年金の被保険者のうち60歳未満⇒65歳未満
②確定拠出年金における中小企業向け制度の対象範囲の拡大(100人以下⇒300人以下)、企業型DC加入者のiDeCo加入の要件緩和など、制度面・手続面の改善を図る 。

 4①は令和4(2022)年4月1日・同年5月1日等、4②は公布日から6月を超えない範囲で政令で定める日・令和4(2022)年10 月1日等。
企業型DC加入者のiDeCo加入要件について、企業型DC加入者は、企業型年金加入者掛金の拠出または個人型年金の加入を選択できるものとする、終了制度加入者の残余財産を国民年金基金連合会に移換できることとする、企業型DC加入者が退職した場合に、規約により、個人別管理資産を企業年金連合会に移換できるものとする、個人型年金に加入できないこと等のいずれにも該当する者について、脱退一時金の支給を請求できるものとする、などなど。

5 その他【国民年金法、厚生年金保険法、年金生活者支援給付金の支給に関する法律、児童扶養手当法等】
①国民年金手帳から基礎年金番号通知書への切替え
②未婚のひとり親等を寡婦と同様に国民年金保険料の申請全額免除基準等に追加
③短期滞在の外国人に対する脱退一時金の支給上限年数を3年から5年に引上げ(具体の年数は政令で規定)
④年金生活者支援給付金制度における所得・世帯情報の照会の対象者の見直し
⑤児童扶養手当と障害年金の併給調整の見直し 等

 5②・③は令和3(2021)年4月1日、5④は公布日、5⑤は令和(2021)年3月1日、等。
国民年金手帳は廃止される。

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今国会で出されるであろう年金の改正法案のうち、老齢の年金の繰り上げ・繰り下げについて

2020-02-21 | 書記長社労士 法改正 社会保険
 昨年、12月27日に「社会保障審議会年金部会における議論の整理」がまとめられたが、これに基づいて、第210通常国会に、年金に関する法改正案が提出される見通し。
議論の整理を踏まえると、おそらく内容は、

①短時間労働者に対する被用者保険の適用拡大など
〇現行の500 人超という企業規模要件は撤廃し、、2024(令和6)年10 月に50 人超規模の企業まで適用することとし、その施行までの間にも、できるだけ多くの労働者の保障を充実させるため、2022(令和4)年10 月に100 人超規模の企業までは適用する。
〇5人以上の個人事業所のうち、弁護士・税理士・社会保険労務士等の法律・会計事務を取り扱う士業について、適用業種に追加する。

②高齢期の就労と年金受給の在り方
〇60 歳台前半の老齢厚生年金に適用される在職老齢年金制度のうち、低在老を現行の28万円から高在老と同じ47 万円の基準に合わせる。
〇年金の受給開始時期については、現行よりもさらに柔軟に選択できるよう、その選択肢を増やす観点から、現行の60~70 歳から60~75 歳へと拡大する。
〇繰上げ・繰下げの増減率は、1月当たりの繰上げ減額率を0.4%に、繰下げ増額率は0.7%とする。



 現行の繰り上げの減額率は、0.5%。
この表は、加給年金や在職老齢年金、特別支給の老齢厚生年金の場合など、他の要素を考慮せずに、単に、老齢年金を繰り上げ・繰り下げしたときの損益分岐点を表したもの。


 繰り上げの減額率が0.4%となるなら、繰り上げを選択するメリットがとても大きくなるようだ。
一方、繰り下げはそもそもデメリットの方が大きくて選択するとしたら、よほど賃金の高い人とか、配偶者がいないか同い年か年上の場合だとか、よほど長生きする自信があるか、などの非常に限られた場合だと思っているので、75歳まで伸びたからといって選択する人は今同様少ないだろうな。(そんな議論は無かったが高在老を現行の低在老並みに引き下げたら別だろうけど)
先日、ご主人が66歳になる際に繰り下げ支給を選択して、それが受理された直後に亡くなったせいで、けっきょく老齢の年金を一切受け取れなくなったというケースを見た…気の毒だ…。
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