「夫婦共同扶養の場合における被扶養者の認定について (令和3年4月30日/保保発0430第2号/保国発0430第1号/)」、この通達を知らなかった。
共働きの場合の被扶養者の認定について、以前は男性(夫)の年収が女性(妻)の年収よりも多い世帯が大半だったが、共働き世帯の増加に伴い、両者の年収が同程度または逆転している世帯も増えている。これにより、2021年8月に、夫婦共に健康保険の被保険者であり、2人で子ども等を扶養する場合(共同扶養)の被扶養者の認定基準が見直され、具体化かつ明確化されていた。
①被保険者の年間収入(過去の収入、現時点の収入、将来の収入等から今後1年間の収入を見込んだもの)が多い方の被扶養者とする。
②夫婦の年間収入の差が年収の多い方の10%以内である場合は、「主として生計を維持する者」の被扶養者とする。
昭和60年の通達((昭和60年6月13日付け保険発第66号)では、
①被扶養者とすべき者の員数にかかわらず、年間収入の多い方の被扶養者とすることを原則とすること。
②夫婦双方の年間収入が同程度である場合は、被扶養者の地位の安定を図るため、届出により、主として生計を維持する者の被扶養者とすること。
ということで、「同程度」があいまいであって、「主として生計を維持する者の被扶養者とすること」てことでかなり緩い感じで、ただ、共済と国保との関係においては踏み込んでいた程度だった。
たしかに、協会けんぽ、健保組合、国保など各保険者にとっては、被扶養者を抱えるとその医療費などの費用に対する保険者負担が増えるわけで、ましてや夫婦間で収入が低い方(標準報酬が低いわけで保険料が安い)の被扶養者をなんでこっちで抱えなあかんねんってなるのはわかるが。
ただ、夫婦間で、収入の低い方の勤務先の方が、家族手当などの支給対象や福利厚生の対象の条件が健保の扶養家族に限定されていた場合などもあって、昔は、その辺、厳密に運営されていなかったことをいいことに、夫婦で選ぶ余地があったと思うねんけど。
今はあかんのか😅
そういえば、自分の出身の会社では、自分が執行委員(組織部長)の時に、労使で運営している共済会の慶弔規定のうち、出産手当・小学校・中学校の入学祝い金などの対象が「健保の扶養家族」ってなってたのを廃止して、住民票上の家族関係に変えてもらったことを思い出した。
○夫婦共同扶養の場合における被扶養者の認定について
(/保保発0430第2号/保国発0430第1号/)
(都道府県民生主管部(局)国民健康保険主管課(部)・全国健康保険協会・健康保険組合・健康保険組合連合会
・地方厚生(支)局あて厚生労働省保険局保険課長・厚生労働省保険局国民健康保険課長通知)
夫婦共同扶養の場合における被扶養者の認定については、「夫婦共同扶養の場合における被扶養者の認定について」(昭和60年6月13日付け保険発第66号・庁保険発第22号通知。以下「昭和60年通知」という。)により対応いただいているところであるが、令和元年に成立した医療保険制度の適正かつ効率的な運営を図るための健康保険法等の一部を改正する法律(令和元年法律第9号)に対する附帯決議として、「年収がほぼ同じ夫婦の子について、保険者間でいずれの被扶養者とするかを調整する間、その子が無保険状態となって償還払いを強いられることのないよう、被扶養認定の具体的かつ明確な基準を策定すること」が付されたところである。
これを踏まえ、夫婦共同扶養の場合における被扶養者の認定について、今般、別紙のとおり行うこととしたので、円滑に運営いただくとともに、都道府県におかれては貴管内市町村(特別区を含む。)及び国民健康保険組合に周知いただくようお願いする。
なお、本通知をもって昭和60年通知は廃止する。
[別紙]
1 夫婦とも被用者保険の被保険者の場合には、以下の取扱いとする。
(1) 被扶養者とすべき者の員数にかかわらず、被保険者の年間収入(過去の収入、現時点の収入、将来の収入等から今後1年間の収入を見込んだものとする。以下同じ。)が多い方の被扶養者とする。
(2) 夫婦双方の年間収入の差額が年間収入の多い方の1割以内である場合は、被扶養者の地位の安定を図るため、届出により、主として生計を維持する者の被扶養者とする。
(3) 夫婦の双方又はいずれか一方が共済組合の組合員であって、その者に被扶養者とすべき者に係る扶養手当又はこれに相当する手当(以下「扶養手当等」という。)の支給が認定されている場合には、その認定を受けている者の被扶養者として差し支えない。
なお、扶養手当等の支給が認定されていないことのみを理由に被扶養者として認定しないことはできない。
(4) 被扶養者として認定しない保険者等は、当該決定に係る通知を発出する。
当該通知には、認定しなかった理由(年間収入の見込み額等)、加入者の標準報酬月額、届出日及び決定日を記載することが望ましい。
被保険者は当該通知を届出に添えて次に届出を行う保険者等に提出する。
(5) (4)により他保険者等が発出した不認定に係る通知とともに届出を受けた保険者等は、当該通知に基づいて届出を審査することとし、他保険者等の決定につき疑義がある場合には、届出を受理した日より5日以内(書類不備の是正を求める期間及び土日祝日を除く。)に、不認定に係る通知を発出した他保険者等と、いずれの者の被扶養者とすべきか年間収入の算出根拠を明らかにした上で協議する。
この協議が整わない場合には、初めに届出を受理した保険者等に届出が提出された日の属する月の標準報酬月額が高い方の被扶養者とする。
標準報酬月額が同額の場合は、被保険者の届出により、主として生計を維持する者の被扶養者とする。なお、標準報酬月額に遡及訂正があった結果、上記決定が覆る場合は、遡及が判明した時点から将来に向かって決定を改める。
(6) 夫婦の年間収入比較に係る添付書類は、保険者判断として差し支えない。
2 夫婦の一方が国民健康保険の被保険者の場合には、以下の取扱いとする。
(1) 被用者保険の被保険者については年間収入を、国民健康保険の被保険者については直近の年間所得で見込んだ年間収入を比較し、いずれか多い方を主として生計を維持する者とする。
(2) 被扶養者として認定しない保険者等は、当該決定に係る通知を発出する。当該通知には、認定しなかった理由(年間収入の見込み額等)、届出日及び決定日を記載することが望ましい。
被保険者は当該通知を届出に添えて国民健康保険の保険者に提出する。
(3) 被扶養者として認定されないことにつき国民健康保険の保険者に疑義がある場合には、届出を受理した日より5日以内(書類不備の是正を求める期間及び土日祝日を除く。)に、不認定に係る通知を発出した被用者保険の保険者等と協議する。
この協議が整わない場合には、直近の課税(非課税)証明書の所得金額が多い方を主として生計を維持する者とする。
3 主として生計を維持する者が健康保険法(大正11年法律第70号)第43条の2に定める育児休業等を取得した場合、当該休業期間中は、被扶養者の地位安定の観点から特例的に被扶養者を異動しないこととする。
ただし、新たに誕生した子については、改めて上記1又は2の認定手続きを行うこととする。
4 年間収入の逆転に伴い被扶養者認定を削除する場合は、年間収入が多くなった被保険者の方の保険者等が認定することを確認してから削除することとする。
5 被扶養者の認定後、その結果に異議がある場合には、被保険者又は関係保険者の申立てにより、被保険者の勤務する事業所の所在地の地方厚生(支)局保険主管課長(以下「保険課長」という。)が関係保険者の意見を聞き、斡旋を行うものとする。
各被保険者の勤務する事業所の所在地が異なる場合には、申立てを受けた保険課長が上記斡旋を行い、その後、相手方の保険課長に連絡するものとする。
6 前記1から5までの取扱基準は、令和3年8月1日から適用する。