大阪府市において「日本版ライドシェアの」24時間運行が不要である「7つの理由」
全自交労連のT書記次長が作られたこの資料がとても素晴らしいので、彼には無断で、このブログで共有しておく。
しかし、もし彼にバレて、「駄目です💢」って怒られたら、即刻、公開停止にする。
さて、いつもで公開できるか…出来れば永久公開できれば良いのだが…😅
そもそも「日本版ライドシェア(自家用車活用事業)とは
2023年~ 維新の会や、自民党の一部議員らが、〝タクシー不足〟を強く主張し、ライドシェア全面解禁・法制化を求める
⇒ 「現状のタクシー事業では不足している移動の足を、タクシー事業者の管理の下で、地域の自家用車や一般ドライバ ーを活用することで補う新たな仕組み」として、2024年3月29日付の国交省の物流・自動車局長通達で日本版ライドシェアが制度化。
通達の根拠…道路運送法第78条
自家用自動車(事業用自動車以外の自動車をいう)は、次に掲げる場合を除き、有償で運送の用に供してはならない。
同条3号 公共の福祉を確保するためやむを得ない場合において、国土交通大臣の許可を受けて地域または期間を限定して運送の用に供するとき。
タクシーが不足する地域、時期及び時間帯並びにそれぞれの不足車両数を、国土交通省が指定
という制度だったが…制度開始後、わずか半年の間に、「旅客課長事務連絡」で 緩和に次ぐ緩和
☆特に指定のない地域はざっくりで。金・土の夜にタクシー台数の5%まで運行OK ←後、さらに10%までOK
☆雨天時や酷暑時は拡大OK
☆地震や台風の発生時や復旧過程なら拡大OK
☆配車アプリを使い事前に確定した運賃の電子決済しか認めていなかったが、電話で口頭でルートと運賃を確認するだけで現金での受け渡しもOK ☆貨物輸送・貨客混載にも使っていい
☆鉄道など公共交通機関に遅延が起きた時は日本版RSの区域外輸送もOK
☆イベント開催時は主催者や自治体からの申し出があれば拡大OK
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大阪府と大阪市は、この事務連絡の規定を根拠に
「万博期間中は、4月から10月まで毎日ずっと24時間、大阪府全域で日本版ライドシェアの運行が必要」
「11月からやってるイルミネーションのイベント(大阪光の饗宴)でも、12月20日から1月末まで、毎日ずっと24時間、大阪府全域で日本版ライドシェアの運行が必要」
と要請し、国交省(近畿運輸局)が認める。
その1 タクシーは足りている or 余っている
大阪市域のタクシーの配車アプリのマッチング率 90%以上が緑 80%以上が黄色 80%未満が赤
⇒ もともと足りていた上に、さらに充足している、ず~~~っと足りている
大阪市域のタクシーは足りないどころか、むしろ余り気味。
その証拠に、タクシー1台当たりの売上は前年同月を下回る状況になっている。
近畿運輸局自動車交通部長の発言
「大阪はタクシーの運転者数が平均すれば月に100人程度増えている。日本版ライドシェアに頼らなくても足りている方向にはあるのだろうと思うが、『100%そうだ』という材料もないので、断言できるものはない」「しばらく状況を注視していく必要がある」 ※2024年11月21日の記者会見にて 「陸運新報」2175号より
その2 「需要が増える」根拠なし
万博を理由とした日本版RS 大阪府市の主張 大阪・関西万博の来場者数の政府目標「2,820万人」などを基に
①「ピークで1日22.7万人が万博に来て、うち7800人がタクシー使うから、150台足りない」
②「府外のお客さんがピークで1日17.4万人来て、万博以外でもタクシー使うから1450台足りない」
③「インバウンド客が1日10,500人、大阪に来るから、タクシー700台足りない」
+
「大阪に来たお客さんは、みんな大阪市以外の場所を車で周遊したいから日本版ライドシェアも府内全域運行が必要」
「関空は深夜着の飛行機もあるし、大阪のキタとミナミには夜中まで開いてる店があるから、日本版ライドシェアは24時間運行をせなあかん(しかも府内全域で)」
ほんまでっか!? どこから突っ込んだらええんか…
ツッコミ① 誰もが知る万博の不人気
・前売り券販売目標=1400万枚に対し、販売実績744万枚(12月18日時点)。その内、約680万枚は企業のまとめ買いとの報道。
・「万博への関心度」(全国)は2022年10月の31.3%から、24年10月はまさかの24.0%に低下。
「来場の意向」(全国)も同じく、31.0%から24.0%に減少。 ※出典=三菱総研
・▽空飛ぶクルマの商用運行なし▽8カ国が撤退▽パビリオン工事遅れ▽メタンガス爆発 etc
⇒ 2820万人 来ない
ツッコミ② ホンマに万博来場者が使えるのか
人工島の万博会場へのアクセス(万博協会公式ホームぺージより)
自家用車⇒乗り入れ不可(橋の手前に停めてそこからバス)
タクシー⇒不明(いまだに公式ホームページの項目が準備中のまま)
そもそも、タクシーや日本版ライドシェアで万博に行けるのかすら謎、行けたとして橋とトンネルしかないので渋滞は必至、万博協会は電車やバスの利用を推奨。
ツッコミ③ 府内全域?
大阪府内には、個別輸送の公共交通機関である1万4000台以上のタクシーに加え、
大量輸送の公共機関としてJR、京阪、阪急、阪神、近鉄、南海など13の鉄道会社が50以上の路線を運行。また大阪シティバス、阪急バス、京阪バス、近鉄バス、南海バスなど多くの路線バスが走る
⇒ 安全で安心な公共交通を利用しましょう。
ツッコミ④ 24時間運行?
意味わからん
深夜・早朝は万博会場も観光地もクローズ。
キタやミナミで深夜まで遊び続ける人がどれだけいるのか。
そもそも繁華街にも空港にも、きちっとタクシーがいます。
大阪 光の饗宴2024 を理由とした日本版RS
イベントの概要
期間:2024年11月3日~2025年1月31日
主な内容:中の島のプロジェクションマッピングや御堂筋のライトアップ
大阪府が近畿運輸局に行った要請の内容
このイベントにより、需要が増加し、タクシーの供給が不足するから日本版ライドシェアの運行を拡大しなくてはならない。
・大阪市域では12月20日~1月31日まで、毎日24時間、最大210台の稼働が必要だ
・それ以外の府内各交通圏でも12月20日~1月31日まで、毎日24時間、各営業区域のタクシー車両数の約5%の稼働が必要だ
エビデンス すでにイベントが実施されてきた11月4日~12月1日までのタクシー配車アプリのマッチング率 ⇒ めっちゃタクシー足りてますけど…
大阪府の目的は、
12月19日にライドシェアドライバー500人を募集する1億円キャンペーンを始めたスタートアップ企業「newmo」との連携
その3 タクシー業界は需要増の対策ずみ
もし、たくさんのお客さんが大阪に来たとしても ⇒ 大阪タクシー協会のプレスリリース(2024年10月24日)「府内のタクシー利用者が万博開催中、1 日あたり 15 万人増加したとしても、タクシーの実車率は54%にも満たないとの分析結果が出ており、タクシーで十分対応できる」※バブル期の1990年 東京のタクシーの実車率は59%
それでも足りないならば 「なにわモデル」発動
なにわモデルとは「大阪府内にはタクシーの営業区域(交通圏)が7つあり、普段は区域外営業は禁止されているが、万博開催によって、どこかの営業区域でタクシーが不足した場合には、別の営業区域のタクシーを助っ人として配車する制度。12月20日に実施合意。」※アプリ配車による事前確定運賃
その4 府市と特定企業の出来レース?
「newmo」株式会社 ⇒ ライドシェアサービスの運営を目的とし、2024年1月に設立されたスタートアップ。
大阪府の報道発表の前に、newmoがキャンペーン開始
国交省と大阪府市が日本版ライドシェアの拡大について協議したのは、12月19日12時15分からの会議で、その合意内容を大阪府は同日15時に発表。
しかし、newmoは全ての内容を承知していたようで、同日14時1分にプレスリリースを行っている。
〇株式会社newmo(ニューモ)とは
ライドシェアサービスの運営を目的とし、2024年1月に設立されたスタートアップ。
代表の青柳直樹氏の前職は「メルカリ」日本事業の統括者で、newmo自体がメルカリからの出資を受けている。
2024年7月に大阪のタクシー会社「未来都」(タクシー606台)の全株式を取得するなど、豊富な資金力でタクシー会社を傘下に収め、「タクシー会社による管理」が前提条件となる日本版ライドシェア事業に参入。
2024年12月19日にライドシェアドライバー大募集キャンペーンを開始し、同12月24日に自社オリジナルのタクシー・日本版ライドシェアの配車用プラットフォームとして配車アプリ「newmo」の配信をスタート。
〇newmoの1億円キャンペーンの内容
「万博を動かすライドシェアドライバー大募集 合計1億円あげちゃうキャンペーン」
・ライドシェアドライバー500人を募集
・初乗務で10万円プレゼントに加え、乗車数に応じ最大50万円のボーナス
・自家用車を持っていない人には車を貸し出し
・友達紹介でさらに10万円プレゼント
1億円をかけて500人もドライバーを集めておいて、万博が閉会したら「はい終了」とできますか? 万博を突破口にして恒常的に24時間運行を続ける意図があると思わざるをえない。
大阪府と連動したnewmoの動き
・2024年12月19日 午後0時15分~
大阪府・大阪市・国交省による「第2回万博開催期間中における日本版ライドシェア勉強会」開催。
・ 2024年12月19日 午後2時1分
newmoがプレスリリースを発表。毎日24時間のライドシェア解禁記念と銘打ち、「万博を動かすライドシェアドライバー大募集 合計1億円あげちゃうキャンペーン」を開始。初乗務で10万円ボーナス、最大で50万円ボーナスなどのうたい文句でドライバー500人の募集を開始。
⇧
事前に大阪府市と情報共有し準備していないと不可能な動き
・ 2024年12月19日 午後3時00分
大阪府がホームぺージに「報道発表資料 万博期間中の移動需要の増加に向けた対応について」を掲載。
第2回勉強会の結果、国交省・大阪府・大阪市の間で万博期間中(4月~10月)の府内全域・24時間運行で合意した旨を公表し、12月中に試行実施をはじめるとした。
・2024年12月20日
近畿運輸局は、大阪府から「大阪光の饗宴2024」の実施に伴う日本版ライドシェアの24時間・府内全域運行の要請があったことをホームページ上に掲載。大阪市域で210台、その他の6営業区域で計118台の運行枠をもうけ、実施事業者の募集を開始。
⇧
イベントは11月3日から始まっている。このタイミングで12月20日からの運行を求めたのは、newmoのキャンペーンに歩調を合わせ、万博運行までのつなぎとして、ライドシェアドライバー500人の働き口を確保するためでは。
・2024年12月24日
newmoは、独自の配車アプリ「newmo」の提供開始を発表。
その5 維新の為のライドシェア
大阪府市がライドシェア緩和にこだわるのは府民・市民のためではない。ライドシェアが維新の会の看板政策の一つだから。まさにライドシェアのためのライドシェア
その6 もしライドシェア完全解禁につながれば利用者が困る
全日本交通運輸産業労働組合協議会(交運労協)による「タクシーとライドシェアに関する1000名意識調査」より
①タクシー日常利用者の半数以上は配車アプリを活用
②以前タクシーを捕まえにくかった状況も、配車アプリ利用を通じて8割が改善を実感
③公共交通である現状のタクシーサービスに87.8%が満足
④タクシー事業の運転手の増加や若返り、出庫時間調整などの改善活動に対する認知は低い
⑤「日本版ライドシェア」の名称は認知はされているが、「ドライバーが自家用車を持ち込む」以外の「タクシー事業者による運行管理・保険・車両点検」などの特徴理解が依然として低い
⑥法整備を検討中のライドシェア(ライドシェア全面解禁)に対しては「利用者として守られていないと感じる」「みんなが安心して利用できると思わない」人が6割以上、データの海外送信への不安は8割以上
⑦法整備議論に対して、「政治主導の迅速な導入」に比べ、「安全性・公平性の観点から慎重な議論」を望む声が4倍となった
その7 もしライドシェア完全解禁につながればタクシードライバーはこんなに困る
コロナでめっちゃ大変で… ようやく給料上がってきたのに…
24時間の日本版RSにお客さまを取られたら…
ハイタクフォーラム
タクシードライバーの労働組合による政策団体である「ハイタクフォーラム」(全自交労連・交通労連ハイタク部会・私鉄総連ハイタク協議会)は、一種免許ドライバーと白ナンバー車両による旅客輸送の拡大に大きな懸念を持っていたが、「全く無秩序なライドシェアの解禁を許すよりは利用者・労働者に与える被害は少ない」と判断。国土交通省による説明を信じ、苦渋の決断として日本版ライドシェアの運行に理解を示してきた。
しかし「今回の24時間・府内全域運行はどう考えてもおかしい。認めることはできない」
2024年12月27日、国土交通省に対し「大阪における日本版ライドシェアの24時間運行の見直しを」 と緊急要請書を提出。
国土交通大臣
中野 洋昌 殿
緊急要請
「大阪における日本版ライドシェアの24時間運行の見直しを」
大阪府は、「万博開催期間を含む2025年4月~10月において府全域で24時間の日本版ライドシェア(自家用車活用事業)の運行を可能とすることで、国土交通省・大阪府市が合意した」との報道発表を行った。さらに大阪府は「大阪光の饗宴2024」の開催にかこつけて、12月20日~1月31日まで24時間の日本版ライドシェア運行も要請し、近畿運輸局は大阪市域で210台等の運行を認めている。
我々ハイタク労働者は、「タクシーの補完」「移動困難の解消」という貴省の説明を信じ、本来は認めがたい第一種免許保有者による日本版ライドシェアの運行を容認し、全国の仲間を説得してきた。であるにも関わらず、貴省が大阪府内全域・全ての曜日での24時間運行を認めたのであれば、我々は大きな失望とともに、日本版ライドシェアそのものに対する姿勢を見直さざるを得ない。
24時間運行は、第一に、道路運送法78条3号「公共の福祉を確保するためやむを得ない場合において」の規定を大きく逸脱する運用である。第二に、貴省が令和6年10月25日付で発した物流・自動車局旅客課長名の事務連絡『イベント開催時における輸送力向上方策について』には「複数日に渡り開催されるイベントについては、原則として当該イベント開催期間内において一時的な需要の増加が見込まれる時間帯に限り使用可能とする」との但し書きが存在するが、大阪府市の主張通りに24時間運行を認める対応は当該規定に明らかに相違するものである。第三に、そもそも万博期間中に府内全域で、24時間、全ての曜日でタクシーが不足することに何ら実証的根拠はなく、自治体の要請通りに運行を認める制度自体に重大な欠陥が存在していると言わざるを得ない。
大阪市域は現状、全くタクシー不足の状況ではなく、万博期間中の輸送需要増加に対しても、府内全域でタクシーの区域外営業を認める対策(なにわモデル)によって十分対応可能である。また「大阪光の饗宴2024」はすでに11月3日より実施されており、この間にタクシー不足が生じていない以上、日本版ライドシェアを新たに運行拡大する合理性はまったく存在しない。それでも、大阪府市が強引に24時間運行を求め続けたことは、「ライドシェア解禁」を掲げる維新の会の都合に過ぎず、「newmo」等、一部の特定企業への利益供与を目的とした対応であると断じざるを得ない。
貴省においては、今後の試行を踏まえ、4月以降の運行可能台数を決定する意向であると推察するが、「newmo」はすでに、大阪府の報道発表に先んじてプレスリリースを行うなど、大阪府市と歩調を合わせ500人のドライバー募集を開始し、1億円以上の資本投下を行っており、万博終了後も継続して運行を行おうとしていることは明白である。すなわち24時間運行を認める行為は、無制限な白ナンバーによる旅客輸送の解禁「ライドシェア全面解禁」に道を開くものであり、決して看過できない。この緩和が、利用者の安全を脅かし、ようやく回復の途上についたハイヤー・タクシー労働者の待遇を再びドン底に転落させる結果を招くことは火を見るより明らかである。
我々ハイタク労働者は大阪での日本ライドシェア運用緩和に対し断固として反対の意思を表明し、貴省に対し以下、要請する。
記
・大阪府内全域では既に夜間は供給過剰の状態であり、日本版ライドシェアの24時間運行を見直し、タクシーの補完として需要状況等を随時確認しながら許認可を決定すること
・日本版ライドシェアの運用を、事務連絡等で無制限に拡大している方針について、厳格な取り扱いに軌道修正すること
・日本版ライドシェアの終了基準を直ちに定めること
2024年12月27日
ハイタクフォーラム
(全自交労連・交通労連ハイタク部会・私鉄総連ハイタク協議会)
代表幹事 溝上 泰央
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