12月10日、交運労協は、田町交通ビル5階会議室においてこの度実施した「タクシーとライドシェアに関する1000名意識調査」について、記者発表会を開催した。
⇒交運労協タクシーとライドシェアに関する1000名意識調査報告書 https://www.itf-jc.jp/action/5221/
池之谷議長
「日本のタクシー事業は、単なる移動手段としてだけではなく、利用者の利便性と命を守るための様々な取り組みにより、安心と信頼を築き上げ、安全性やサービスにおいて、海外からも高い評価を得ている。
しかし、コロナ禍により乗務員が大幅に減少し、結果的に、タクシーの稼働車両が減少したことで、一部の地域や時間帯において、供給力不足が発生し、その解決策としてライドシェア導入論が急展開した。
ライドシェアの全面解禁に極めて慎重な態度を示していた国土交通省は、苦肉の策として、タクシー事業者の運行管理による自家用車活用事業を開始し、併せて、運賃改定による賃金改善により、都市部を中心にタクシー乗務員も着実に増加している。
プラットフォーマーの自由な参入を認めるライドシェア新法制定は絶対反対である。
しかし、ライドシェア推進派は、でたらめなデータを持ち出し、タクシーは供給不足だと嘘吹き、ライドシェアを強硬に推し進めようとしている。
我々はそれらを鵜吞みにしている利用者がどれだけいるのか、ライドシェアの危険性をどれだけ認知しているのか、懸念を持ち、推進派が論拠とする事象を客観的に否定、あるいは、疑問視することができるデータや、利用者の声を集めることで、広く世論に注意喚起ができるとの観点から、調査を実施したところだ」
と挨拶を行った。
慶島事務局長
「推進派が統計学を無視したアンケート調査結果を政府の規制改革推進会議に提出している。
我々としても看過できず、対世論戦としてタクシーのヘビーユーザーを対象とした調査に取り組むこととした。
タクシーの日常的な利用者の半数は配車アプリを活用しており、捕まえにくい状況が改善していると実感している。
また日本のタクシーサービスには9割近くの利用者が満足している。
一方で日本版ライドシェアについては十分に制度が理解されておらず、法整備を検討中のいわゆる海外型ライドシェアに対し6割の方が不安を感じている。
あわせて法整備議論に対し、『政治主導の迅速な導入』に比べ『安全・公平性の観点から慎重な議論』を望む声が4倍となった」
全自交労連 溝上委員長
「日本のタクシーサービスの安全・安心はタクシー乗務員が雇用契約されていること、事業主体が法人であることが大きい。
日本版ライドシェアについて我々労働組合は、第1種免許で旅客を運送するということに大きな懸念があった。
しかし、運行管理をしたことがない、さらには責任も取らないといった海外型ライドシェアが導入されるよりはまだマシではないか、ということで導入を受け入れた経緯があり、本当に苦渋の選択であったということをご理解いただきたい。
交通インフラは公共インフラであり、住民の皆さんが今は大丈夫でも、少し歳をとって移動困難になったときには、本当に最後に頼れるのは鉄道、バス、そしてタクシーであり、法整備を検討中の海外型ライドシェアの導入によってこれらが淘汰されてしまえば、結果的に住民が困ってしまうという事態に陥る。
我々タクシー事業者、労働者ともに、今後も進化を止めず、日本の公共交通をしっかり我々の手で守っていく」
私鉄総連 福田委員長
「私鉄総連のライドシェアに対するスタンスは、世界的に見ても利便性・安全性の高い公共交通を持つ日本に、白タク合法化・海外型のライドシェアは不要であるというものだ。
今回のアンケートでも、移動において、利用者が最も重要視するのは『安全・安心』であることが明らかになった。
安全・安心は一朝一夕で積みあがるものではなく、長年培ってきた経験やノウハウ、安全投資、そして技術やシステムの継承があってのものだ。
その点が、公共交通としての責任も持たない、利益のみを追求するであろうプラットフォーム事業者に、公共交通を任せられない大きな理由のひとつである。
さらに持続可能性の観点からも問題である。
公共交通は、特に地方部においては、経営が厳しいという現実があるが、利用者の移動の権利を守るべく、地域住民や自治体、または国などと知恵を絞りながら、我々は運行を継続しており、安易に撤退は出来ないという責任を持っている。
儲からない、効率が悪いなど、利益のみを優先して、簡単に撤退されるようなものであってはならない。
地域における交通サービスについては持続可能性を重要視して、様々な知恵を出し合って課題を解決していく必要があるが、その解決策が海外型ライドシェアではない。
また、ライドシェア解禁派はドライバーとの『業務委託』による柔軟な働き方を銘打っているが、労働時間規制や最低賃金、労災補償など労働者としての保護が対象外となり、劣悪な労働環境になることが想像でき、不安定雇用にも繋がる。
諸外国ではライドシェアドライバーの労働者性について認める判例や法令の制定などが相次いでおり、私たち私鉄総連は雇用破壊につながる制度については、強く反対する」
交通労連の織田委員長からスピーチを受けた後、記者からの質疑に応じ、閉会後も各組織の代表者は記者からの追加質疑に対応した。
なお、発表会の模様は当日夜のテレビ東京のニュース番組「ワールドビジネスサテライト」でも報じられたところである。
交運労協は、引き続き、ライドシェア新法制定絶対反対の立場で運動を展開していく。
陸・海・空における人や物の移動に関わる、交通・運輸・観光などの産業で働く約60万人が加盟する労働組合である全日本交通運輸産業労働組合協議会(以下、交運労協)は、2024年11月に首都圏在住のタクシー利用者を対象に実施した、「タクシーとライドシェアに関する1000名意識調査」の報告書をまとめましたのでお知らせ致します。
2024年4月から日本版ライドシェアが解禁されましたが、一方で、「移動の足不足の解消」を理由に、タクシー事業者以外に対しても参入を認める海外型ライドシェア全面解禁に向けた議論が行われています。そこで本調査では、20代~60代の首都圏に在住の月1回以上タクシーを利用する1,053名のユーザーから、タクシー不足を感じる状況、タクシー配車アプリの活用状況、日本版ライドシェアに対する理解度、現在政府で導入を検討中のタクシー事業者以外が運営するライドシェアに対する意見を聞きました。また、参考として月1回未満のユーザーからの声も集めました。
新法制定議論は、昨年から「タクシーが不足しており呼びにくい状況の改善」を目的として行われてきました。しかし、2024年の今現在で日常的にタクシーを利用している利用者からは、配車アプリの活用により呼びにくさは着実に改善していることが回答から分かりました。一方で、状況改善に向けた現行法の「日本版ライドシェア」の制度や特徴の本質的な理解度は低く、タクシー事業者による改善への取組みの認知も低いことが分かりました。法整備を検討中のライドシェア(ライドシェア全面解禁)に対しては6割が不安を感じており、法整備の議論については安全性や公平性の観点から慎重な議論を求めています。
①タクシー日常利用者の半数以上は配車アプリを活用
②以前タクシーを捕まえにくかった状況も、配車アプリ利用を通じて8割が改善を実感
③公共交通である現状のタクシーサービスに87.8%が満足
④タクシー事業の運転手の増加や若返り、出庫時間調整などの改善活動に対する認知は低い
⑤「日本版ライドシェア」の名称は認知はされているが、「ドライバーが自家用車を持ち込む」以外の「タクシー事業者による運行管理・保険・車両点検」などの特徴理解が依然として低い
⑥法整備を検討中のライドシェア(ライドシェア全面解禁)に対しては「利用者として守られていないと感じる」「みんなが安心して利用できると思わない」人が6割以上、データの海外送信への不安は8割以上
⑦法整備議論に対して、「政治主導の迅速な導入」に比べ、「安全性・公平性の観点から慎重な議論」を望む声が4倍となった