AIによって仕事が奪われるかもしれない、あるいは加速する超高齢化社会、世界規模で起き
ている環境破壊の影響等々、明るい未来を想像しにくい現代。そんな状況でもオードリー・タ
ン氏は、未来は希望の方が多いと感じているという、なぜなら、我々自身が未来を創っていけ
るからだ。台湾では「ソーシャル・イノベーション」が活発になっているそうだ。立場や今い
る場所にかかわらず、さまざまな考えを持った人がともに目的を達成していく。すべての人が
孤独に闘うのではなく、助け合いながら社会を変えていく。
同氏はITとデジタルはまったく別で、ITは機械と機械をつなぐものであり、デジタルは人
と人をつなぐものとしている。「シンギュラリティ(自律的な人工知能が自己を改良し続け、
人間を上回る知性が誕生するという仮説)」も言われているが、デジタル単独で進むのではな
く、その向こうに私たち人間がいると考えている。
台湾政府で行われている〈総統杯ハッカソン〉は台湾各地が抱えている課題を市民が提議し、
政府が公開するオープンデータを活用しながら、解決案を模索するというもので2018年から毎
年開催されている。これまでに受賞したプランは[離島エリアの緊急医療を改善][農地工場
からの汚染をなくす][台湾のお茶文化と環境保護を融合させる]などで、賞金は出ませんが、
さまざまな立場の人が提案を寄せているそうです。
日本ではSNSを中心により感情的な意見のぶつかり合いが多く、冷静で論理的な議論を語る場
がほとんど見られない現状です。私たちは現実を冷徹に認識し、身近な問題から話し合う必要
性を感じています。少なくとも先の選挙で与党が少数派になり、勝手に閣議で決定することが
出来なくなったことは歓迎すべきです。未来に向けて政策を語り、実行できる議員を増やす努
力を続けていくことが肝要だと思います。
まだ誰も見たことのない「未来」の話をしよう オードリー・タン[語り]
近藤弥生子[執筆] SB新書