本書冒頭、日本経済はバブル崩壊以降30年、殆ど成長していない。日本はずっとデフレのなかに
あり「低成長・低金利・低成長」が「ふつう」になってしまった、とある。これを著者は「日本
病」と名付けた。例えば賃金が上昇していない国は日本とイタリアだけ、日本は0.4%、イタリア
はマイナス3.6%で、2000年からの20年間、実質的に「昇給ゼロ」状態(最近日本は賃金が上昇
しているが、物価の高騰が相殺している)だった。対してアメリカは25.3%、カナダは25.5%、
イギリスは17.3%、韓国は43.5%だ。
日本病の本質はデフレにあり、日本以外の先進国では、日本のように長期間デフレに陥っていない。
海外は日本の失敗から学んでいるのだ。リーマン・ショック当時、FRB議長だったバーナンキ氏
はバブル崩壊後の日本の長期不況を研究していたそうだ。
経済を安定させるためには「金融政策」と「財政政策」が必要で、量的緩和で、市場にお金を供給
し、財政出動で大規模な公共工事、そして減税や給付金が必要だ。しかし、日本は慎重な姿勢を崩
さなかったために、異常な円高・株安を招いた。それによって多くの生産拠点が海外移転し、地方
経済が破壊された。安倍政権では量的金融緩和をしたが、2度の消費税増税によって、欧米のような
回復に至っていない。
著者は消費税増税が失策だったと指摘する。なぜなら、中低所得者ほど収入に対して消費の割合が大
きくなるため、同じ税率でも相対的に高所得者よりも負担率が高くなるからだ。その上で、改めて日
本が成長するために財政出動をし、労働市場を流動化させることを提言している。さらに第一次産業
にも大きな可能性があると書いている。
日本病 なぜ給料と物価は安いままなのか 永濱利廣 講談社現代新書