放射性炭素による年代測定法の向上と資料の前処理の検討によって、化石や遺跡の年代が大幅に
修正されるようになり、人類史を始め、恐竜の生態、さらには生命の誕生にも今までとは異なる
解釈が加わり、アップデートが繰り返されることで、私たちは学び直す必要を知り、新たな興味
深い本を手にほくそえんでしまう。
本書では、欧米において当然のこととされてきた強いモノ、頭のいいモノが自然を支配し、今に
至るという人類史とは真逆で、食うに困らない森林生活をしていた人類の祖先が、乾燥化が進み、
森林が減ったために力が弱く、木登りが下手だっために追い出され、その中で何でも食べること
が出来、どこでも生きていける弱い祖先が生き残ったという説で一貫している。
直立二足歩行と二足歩行は違う、ヒトの頭蓋骨の下側に大きな穴が開いており、これが脊髄とい
う神経が通る穴だ。ヒトは四つん這いになると顔が下を向いてしまう、四足歩行をする動物は穴
が頭蓋骨の後ろ側についている。チンパンジーもゴリラも頭蓋骨の後ろについており、ヒトとの
違いが明白だ。
何故、力が弱く、逃げ足も遅い二足歩行で生き残ったのか?それは手が自由に使えるようになり、
食物を運ぶために有利で、集団生活を営み、多数で敵と戦い、食物を得、多人数で生活すること
で意志の伝達方法を学び、脳が発達し、様々な道具を作り、武器を工夫するようになったという。
本書では絶滅した原人と今に至る人類との違いも詳細に書かれている。これからも、新たな発見
と検証が進むことだろう。そして新たな事実を知ることが出来るのは嬉しいかぎりだ。
絶滅の人類史 更科功 NHK出版新書