本作を未読の方、面白いですよ!「ゴースト・スナイパー(2015年)」でバハマに飛んだリンカー
ン・ライムが犯人を追って、いよいよイタリアへ赴き、観光名所としても名高いナポリを舞台に活
躍します。同行するのは勿論元モデルの美貌のアメリア・サックス、お洒落な介護士トム・レスト
ン(シリーズの初期にはトムとしか表記されていなかった)、そしてイタリア側には長身でちょっ
とおしゃべりが過ぎて、少しだけ気弱な森林警備隊巡査エルコレ・ベネッリ(勿論大活躍)、イタ
リア国家警察ロッシ警部、部下のダニエラ(エルコレが一目ぼれ)、鋭敏な科学捜査官ベアトリー
チェ、そして有能で高圧的で辛辣な上席検事ダンテ・スピロ。と魅力的。
今作のキーは音楽(もしくは音)。いつものように最初から犯人が登場します。奇妙な犯人の行動
は謎、さらに謎。捜査班を混乱に陥れますが、私たちの想像を超える展開は本当にスリリング。作
者に翻弄されるでしょう。しかも物語に筋が通っていて、破綻がない。
ジェフリー・ディーヴァーの見事な描写でイタリア・ナポリを実際に観光したような気分にさせら
れます。さらにディーヴァーは難民問題もテーマに掲げ、問題点を鋭く指摘しています。
私が大好きなシーンは、ライムとサックスの圧力を持った視線にエルコレが耐え切れなくなるとこ
ろ。「おっしゃるようなことは無理なんですってば、わかります?無理なんですよ」ライムとサッ
クスの圧力を持った視線に耐えられる人物はそういないでしょう。
ブラック・スクリーム ジェフリー・ディーヴァー 文藝春秋