伊藤忠商事に入社し、海外の主たる経済研究所を訪れ、内外情勢を研究し、丹羽会長が第一次
安倍政権の経済諮問会議の民間議員として就任した際に補佐することになった著者は当然政府
寄りだ。本書に登場する海外の金融機関などの知り合いも欧米系が多く、いわゆるBRICS(ブ
リックス=ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ、イラン、エジプト、アラブ首長国
連邦、エチオピアの9か国から成る国際会議)側からの見方とは一線を画す可能性がある。
今世界では米中の冷戦が注目されている。バイデン大統領は就任以来、中国とロシアを念頭に
「世界は民主主義と専制主義の戦いに直面している」と繰り返し述べ、政権は対中安全保障戦
略として①米国のパワーと影響力の源泉である国内資源や技術への投資を増大させる、②グロ
ーバル戦略を構築し、できる限り強固な国の連携を構築する、③戦略的競争の時代に備えて米
軍の近代化と増強を実施する、と表明している。習近平は「中華民族の偉大な復興」を掲げて
いるので(台湾問題を含め)簡単には引けないだろう。
新冷戦時代において、賃金が上昇し低賃金の労働力という魅力は半減し、先端技術・製品の対
中輸出制限が広がり、共同富裕で若手起業家の活躍できる場がなく、中国の内憂外患は深まる。
これに対し日本では台湾TSMC(台湾積体電路製造)が進出し熊本は活気が溢れているという。
2023年4月には著名な米投資家ウォーレン・バフェット氏が来日し、大手商社トップと会談し
て、日本株購入拡大を検討すると発言した。著者は日本経済大復活の条件が整ってきたと書い
ているが、それは日本政府が足を引っ張らなければという条件付きだ。
新冷戦の勝者になるのは日本 中島精也 講談社α新書
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