2000年の日本のGDPはG7の中でトップの位置にいた、しかし2023年には最下位になっている。
1人当たりGDPの値は、日本以外の国がほぼ2倍になっているのに対し、日本だけが低下してい
た。韓国と比較すると2000年において日本の1人当たりGDPは、韓国の約4倍だったが、2022
年にはほぼ同じ、台湾もほぼ同じ推移をたどっている。成長著しいアジア太平洋地域で日本より下
位の国はインド、フィリピン、モンゴルのみだ。この日本の競争力の低下の原因は円安だと著者は
断じている。
日本の国際競争力の低下が少子高齢化にあることは、しばしば上げられているが、金融緩和と円安
政策進めたことが、日本企業の技術革新力を喪失させた根本的原因だという。そして長期的な見通
しがないままのバラマキ政策も痛烈に批判している。さらには社会保障の長期計画もない、と。
それでも日本人の基礎学力は相変わらず世界のトップクラスで、2018年調査では、数学的リテラシ
ーは世界第6位、科学的リテラシーは第5位、読解力はOECD平均得点を大きく上回っている。
日本人は残念ながら高い潜在的能力を発揮できない経済・社会環境に置かれている。
著者はデジタル化投資を目指すべきとし、組織の問題(これが核心)に着手し、生成AIへの対応
を早めに進めるべきと提言している。マイナンバーカードに対する政府の迷走にも言及し、健康保
険証を廃止することは意味がないとする。既得権益を保護したい自公政権では難しい話だ。本書は
日本経済復活に向けて教科書のような内容だ。たくさんの人に読んでほしい。
どうすれば日本経済は復活できるのか 野口悠紀雄 SB新書
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