考える葦のブログ

さわやかに さりげなく

一目均衡の世直し

2006-05-09 23:47:36 | 社会的責任

今日(2006/5/9)の日経新聞19面、編集委員の前田昌孝さんが書かれたコラム「一目均衡」。題して、「世直し・名誉欲・金銭欲」。
少し引用します。

「一人ひとりの私利私欲の追及が経済活動を効率化させる」━━市場原理主義者はこう言って村上世彰氏を応援するかも知れない。しかし、その帰結は多くの上場企業が買収防衛策に走ることだ。資本主義が縮小し、「一番損をするのは日本」になるだろう。
(中略)
このまま株主総会を迎えれば阪神の取締役の半数が村上ファンドの役員、社員になる。公共性の強い企業の役員構成としてふさわしいとは思えない。取締役を送りたいのならば、もっと世間が納得しそうな人に依頼すべきだろう。強行すれば、世直しの願望も名誉欲も金銭欲も満たされまい。

まず論点は何なのか?
村上ファンドの村上氏の批判であることは明らかですよね。
では、何を責めているのか?
世直しよりも金銭欲や名誉欲を優先しているような村上氏の行動か、
ファンドが阪神株を買い占めたことか、
村上氏が取締役を送り込もうとしていることか・・・

この問題、すべては村上ファンドの株の取得からスタートするんですよね。

でも、どうしても昨年から「何故、法で許される方法で、上場している株を買い占めること」が悪いのか?ボクには理解できないんですよね。
ボクは市場原理主義者ではなくて、市場哀泣者なんですけど。

取引は、売る人がいて、買う人がいる。
売る人がいなければ、買う人もいないわけで、買う人だけが一方的に責められるのはどうなんでしょう?
もし買占めが悪いことなら、一番悪いのは、売った人でしょう。
すなわち、遡れば阪神電鉄自身に「つば」がかかることになってしまいます。
公共の会社を、そんな「危ない株式市場」に上場するという選択自体が、公共性の強い企業の役員の経営判断としてふさわしいとは思えません。

次に役員構成について。
公共性の強い企業の役員の要件は何なんでしょう?
ふさわしくない理由とは?、「世間が納得しそうな人」とは何なんでしょう?
公共性の強い企業の役員は、株主総会と新聞記者と世論によって選任すべきってことでしょうか???

これは、日経だけではなく、国交省も懸念しているようですね。

国交省が安全運行懸念 村上側役員過半数なら
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060509-00000016-mai-soci

阪神電気鉄道の筆頭株主(保有比率約46%)の村上ファンド(村上世彰代表)が阪神に対して過半数の役員選任を求める株主提案を行った問題で、国土交通省は8日、村上氏側の提案通りに新経営陣が決まった場合、阪神に対し、鉄道の安全管理体制などについて事情を聴く方針を固めた。村上ファンドの提案が通れば、鉄道会社経営の経験がないとみられる取締役が半数を占める。国交省は、安全運行に支障が生じないかどうか懸念し、管理体制を再点検する必要があると判断した模様だ。(毎日新聞)

経営者によって安全運行が脅かされるのは、JR西日本の例で明らかですよね。
でも、安全運行を守るという経営、その資質は「鉄道会社の経営の経験」なんでしょうか?(だとしたら、ほとんどの鉄道会社の事故は0となるはずだし、JR西日本の事故はありえなかったはず。)
国の認識が本当にそうだとしたら、安全は心配ですね。
百歩譲ってそうだとしたら、株主に取締役の選任が託される株式会社、しかもその株主が権利日まで特定できない上場会社を許していること自体が国の管理体制の甘さを露呈しているような気がします。

・・・

「世直し」をしたいのなら、村上氏の批判だけでは、次の村上氏を呼ぶだけです。
「株の上場」という資本主義の根本が嫌いだと、そろそろ素直に新聞各社も論じたほうが分かりやすくて良いのではないでしょうか。新聞各社だけではなく、実際に日本の会社の多くは株式市場が本質的には嫌いなんだと思います。
そもそも日経は非上場ですし、読売、朝日、毎日・・・上場しない選択肢もOKなんですから。

やっぱり、ボクには嘆くしか、「世直し」で出来ることはありません。
ボクらと違ってペンの力を持つ日経新聞の記者さんには、本当にがんばって欲しいと思います。
世の中は法律だけでも、科学だけでもなく、論理で説明できないことがあります。
結局、好き嫌いだとか、良悪を感じる直感だとか・・・
「世直し」は、そんなヒトの気持ちが大切だと思います。

季節が回って、また「会社とは何か?」を考える時期が来たようです。
今日二度目。ホディでした。


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