考える葦のブログ

さわやかに さりげなく

巨人の契約金問題の本質

2012-03-17 01:04:00 | プロ野球

ダルビッシュなどの大物の移籍で、今年はアメリカの大リーグに話題を独占されるのではないかと心配していたが・・・

開幕前ながら、プロ野球、巨人の話題が目立つ。

巨人なので、やっぱり良い話題ではないというのが最近の傾向。今回もやっぱりそうだ。このブログでは何度も書いている通り、私はジャイアンツファンなので、誤解を招く気もしなくはないが、今日はあえて今回の問題の本質を書き残しておこうと思う。

 

○朝日新聞の指摘

読売巨人軍が1993年から2004年にかけて、当時のプロ野球界での申し合わせに反して、一部の選手に巨額の契約金を支払っていたという。当時は逆指名ありのドラフト制度で、お金で選手を買ったのではないかと。数年前には「栄養費問題」などという形で、巨人以外の別の球団も含め、同様の金銭問題があったことも覚えている人も多いのではないかと思う。

こうした球界のお金の話が再浮上。それが、今シーズン、久々の大補強を行った巨人ということで、さもありなん、札束で球界を汚す、汚いやり方だ、ときっと多くの声もあるのではないか。

たしかに「同条件での競争」という観点では悪だと思う。(個人的には、そんな同条件を是とする前提、大リーグも競争に参入してきている中でのドラフト制度なる前時代的な方法を当然とする論調には賛成できないことは、今日は棚に上げておきます。)

 

○日本球界の特徴

アマチュア球界の注目度やレベルの高さ、アマチュアとプロの垣根の高さは日本球界の特徴である。甲子園のスターは毎年のように現れるが、学生がJリーグに出場するサッカーのように、学生がプロ野球の世界に踏み込むことはできない。卒業を待ち、プロに入るのを待つしかないのだ。しかも、社会人になっても数年はプロに入れない制約まである。

そんな環境の中で、アマチュア選手は成熟し、プロに入る。社会人や大学生からのプロ入りだけではなく、時には高校生からプロに入ってもすぐに活躍できる選手も少なくない。

そういう点では、プロでの活躍がなくとも、十分に契約金を支払う価値がある、契約金が無駄にならない可能性が高いと考えられるだろう。だからこそ、球団は入団してもらうために金銭競争を厭わない。

 

○誰が得をして、誰が損をしているのか?

もうひとつ、とても重要な特徴は野球協約だ。プロ野球選手になっても、契約は自由ではない、一旦、ある球団に入団したら、フリーエージェントの権利を得るまでの期間、その球団がトレードや自由契約としない限り、他の球団とは契約できない。

つまり球団側からすれば、入団させることができれば、10年近くもその選手の保有権を有することになる。契約金をその期間の前払いと考えれば、決して安くはないだろう。この点では、アマチュア時代から有名で、実力のある選手であれば、多めの契約金を手にすることができるため、球団側が契約の鍵を握るこうした制度の弊害も少なかったと思う。

一方で、普通の選手、プロに入団後、頭角を現す選手はどうなのか?

契約金はそれなりで、フリーエージェントまでの期間は契約先が1球団に限定され続ける。これが、どんな傾向になるのかは想像に難くないと思う。

そして、この野球協約に制約されないのが外国人だ。いわゆる助っ人は入団時にもドラフトに縛られず、しかも契約期間が終了すれば、その後の契約先は自由に選べる。これが、どんな傾向になるのかも想像に難くないと思う。

語弊を恐れずにはっきり言えば、日本のプロ野球は日本人から搾取し、外国人を富ませている。

 

○今回の問題の本質を間違えてはいけない

巨人の契約金の「申し合わせ」違反は、ジャイアンツファンから見ても、あまり望ましくはないと思う。ただし、自由経済、自由競争を是とする日本社会で、契約金が自由なのは当然だ。逆に契約金が制限されることのほうが問題だと思う。契約の不透明さも、朝日新聞の記者の年収が公開されないように、プロ野球選手も公開しなければいけないものでもないのではないか。

今回の問題は、契約金の額の問題ではない。グラウンドにお金が落ちているというプロ野球の世界で、グラウンドに入る前になぜかロッカールームにお金が用意されているというような、契約金が高騰してしまう仕組みこそが問題だ。その仕組みは結果的に、日本人選手の丁稚奉公的な働き方、実力があるにも関わらず増えにくい報酬体系につながり、自由な契約が許される外国人選手の年俸の高騰につながっている。

プロもアマも問わず、球界全体での野球協約やドラフト制度など、この際、球界の常識を前提としない、本気の議論を望みたい。

 

そして、マスコミもマスコミだ。巨人の選手が巷で言われる報酬以上にお金をもらっていることは、多くの新聞記者が知っていた(聞いたことがあった)だろう。悪いけど、知らなかった記者は記者の素質が無いとも言っても良いと思う。

それが、今回の朝日新聞の記事をきっかけに、今更、嘘の驚きを交えて記事を書いている姿は情けない。こういうナイーブさ、横並びの弱さは日本のジャーナリズムの欠点だ。

朝日新聞も狭い世界のプロ野球での「申し合わせ違反」を非難するくらいなら、就職協定時代の自分たちの採用方法も含めた日本企業全体の「申し合わせ違反」を反省する方が、どんなに発展性があることか。

 

アメリカの大リーグに比べ、日本のプロ野球の価値がますます低くなっていっていることは、野球ファンとしてとても寂しく思います。そんな中で、プロ野球を考え直させるような話は逆に悪くないとも思うんですよ。

後日、振り返ると、日本の野球界全体への貴重なきっかけだったと思えるような展開を期待します。

 

 


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3 コメント

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同調ではないかもしれませんが (way)
2012-03-17 01:45:05
まず。今回の朝日の報道は、「巨人だから」ですよね。笑

報道されている情報をみると、ジャイアンツが「ルール違反」をしたわけではないのは明白なようです。

ドラフト制度には、様々な批判や意見が、常につきまとっています。
ただ、別に日本のプロ野球に限らず、メジャーでも、米プロバスケでも、アメフトでも・・・

一応「チーム間の公平」を保つため、を謳って、おのおのドラフト制度が定められているんですよね。それらは、本当に公平に運用されているのでしょうか?

選手の自由を奪う、などと批判を受けるドラフト制度ですが、では、いわゆる普通の学生の就職は?
同じではないでしょうか。結局、買い手市場なんだと思います。
であれば、「買う方が、評価して金を出す」のは、当然の帰結。
出せない企業は、競争原理上、負けるしかないのでは、と思います。

まとまらず、失礼しました(>_<)
言いたかったのは、Giantsが悪いのではない、という意見です。

さて。4月15日に、今年も全早慶明チャリティマッチが行われるそうですね♪
今から、楽しみです!
チャンスがあれば。。。握手のひとつもしていただければ嬉しいです☆
返信する
すみません! (way)
2012-03-17 01:52:13
文字数の制限があるのでしょうか(^^;)笑
肝心なところが、反映されてなかった!

今年も、4/15に、全早慶明チャリティマッチがあるようですね!
チャンスがあれば、握手したいですね☆
返信する
re:同調ではないかもしれませんが (hoddy)
2012-03-17 11:48:25
wayさん、コメントありがとうございます。

まず肝心なところ・・・
ちょうどその週末に東北のボランティアに行く予定にしていまして・・・すみません。チャリティということもあり、行きたかったのですが。
ぜひ、別の機会に。


朝日の報道はおっしゃるように巨人だからですよね。
ジャイアンツファンだからよく分かるのですが、当時のドラフトは今回の巨人よりも逆指名を上手に得てきた球団もあったわけで。その球団が額はともかく、少なからず、金銭競争もがんばってきたことは自明だと思います。
あの広島ですら申し合わせを超える金額提示を認めるようなコメントが見ましたから、全球団が同様の状況だったことは想定内だと思います。

単純に「巨人の契約」を叩くだけでは不十分ですよね。散々、朝青龍を叩いて、八百長などのもっと大きな問題を抱える相撲界全体を見ない振りをしていた数年前と同じ過ちをマスコミは繰り返しています。
ほんと、ドラフトなども含め、「巨人をはじめとした日本野球界」がどうしたら良いのか、真面目に報道してほしいと思います。

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