考える葦のブログ

さわやかに さりげなく

過労の責任

2010-05-29 21:39:49 | 人事の仕事

過労死を巡る訴訟・・・
今週、人事担当としては見逃せない判決が出ていますね。

過労死訴訟:「日本海庄や」社長らに7860万円賠償命令
http://mainichi.jp/select/jiken/news/20100525k0000e040048000c.html

07年8月に突然死した大手飲食店チェーンの従業員(当時24歳)の両親が、過重な時間外労働が原因だとして、会社と役員4人に約1億円の損害賠償を求めた訴訟の京都地裁での判決。
裁判長は同社の安全配慮義務違反を認め、連帯して約7860万円を支払うよう命じたというもの。

基本的には、過労死=労働災害という前提で、会社の責任は労災保険で補償するというのが通例だと思うのですが、会社の責任、さらには経営者の責任として、労災保険の補償に更に上乗せして損害賠償することを求められたということ。
それは、まさに法人としての会社の責任、
のみならず(こういう大企業ではおそらくその被害者?の働きぶりまでは知らなかったであろう)経営者の責任までも問われるという点では、人事担当者としては非常に気になる判決でした。

朝日新聞のサイト(asahi.com)には、その内容が詳しく載っていました。
http://www.asahi.com/kansai/news/OSK201005250047.html

判決は、

  1. 亡くなるまで4カ月間の時間外労働が月平均100時間を超え、厚生労働省の過労死ライン(2カ月以上にわたって月平均80時間以上)を上回っていた
  2. 時間外労働が月80時間に満たない場合は給与を減額するという長時間残業を前提にした給与体系のもとで過労死した

――と認定した。

1.については、不幸にも労災が発生した場合には目にするような内容なんですが、
2.については、確かに酷いですね。
厚生労働省の過労死ライン(2カ月以上にわたって月平均80時間以上)」以下の労働時間だと、給与が減額されるという給与計算の仕組みですから。

人事担当としては、この会社は36協定をどのくらいの時間数で締結していたのかも気になるところです。36協定は法定の労働時間を超えて労働させる場合に定めて労働基準監督署に届け出るものなんですが、給与そのものが月80時間の時間外労働を前提としているので、やっぱり月80時間以上の時間数で定めていたんでしょうね。
だとしたら、受理する労働基準監督署もどうかという気もしますが、どうなんでしょう。

一時、「偽装管理職」「名ばかり管理職」が問題となっていましたが、
その問題の本質は残業代を支払わない(時間単位の給与体系ではない)という給与の支払い方じゃないと思うんですよね。
(ボクは給与の支払い方は、原則、自由契約であるべきという考えを持っています。あくまで理想ですが・・・苦笑)

問題は・・・
「法定」の労働時間があるにもかかわらず、無視する企業・団体(ボクら従業員も含めですが)と、
守られていない実態を知りつつ、見てみぬ振りをしているお役所、
完全に有名無実です。
そもそも「法廷労働時間」は週40時間などと、あまり現実的ではないという点もあり、
そろそろ現実を見つめなおす時期じゃないでしょうか。
個人的には、労災保険の仕組みの見直し(労働災害は会社の責任であることを、特に大企業では後々の補償も含め、明確にすること)も必要ではないかと。

現代では、労働災害も、いわゆる肉体労働での外傷というものから、デスクワーク的な仕事での病気にシフトしてきているんじゃないでしょうか。
過労死とまではいかなくても、過重労働で体を壊す人という意味で。
それは働く本人の自己責任の要素もなくはないので、非常に悩ましい話ではありますが・・・
注視していきたい内容です。


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2 コメント

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困難な (Kazushi Fujimoto)
2010-05-30 10:50:10
はじめまして!
拝読致しました。
私も労働集約型の企業で人事などをしているので、時間外は悩ましく難しい問題だと思います。。
とはいえ、この企業の場合は論外に思いますが。
36は45hが限度でしょうからそのように申請してると思います。80hの残業込みが正当に機能するとしたら20hでも80hでも給料が変わらないから、効率よく働けば得、でなければいけないのに、この場合はだから80h働け、はナンセンスですね。コストを考えても流動型にしたほうが得なのに、と思ってしまいます。
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re:困難な (hoddy)
2010-05-30 21:59:13
Kazushi Fujimotoさん、はじめまして。
コメントありがとうございます。
ホント、時間外は悩ましいですよね。
長年の経験?(単なる好み?)から「長時間労働=がんばっている」的な考えを払拭できない人は沢山いますし・・・

一方で、効率性とは別で、今回のケースのような飲食店のように一定の人員を配置しておかない場合は、ちょっと大変ですよね。
本来ならば、法定外労働を強いられることはなく、会社の責任で法定内労働で収まるように人を採用しないといけないんでしょう。
当然、採用(育成)コストがかさむわけですが、、、
今後は、結果としての過重労働も勿論ですが、適正に人員確保を図っていたのかも、会社の責任として問われていくような流れになってくる感じでしょうか?

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